眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

ラフにコーヒーを

2024-08-02 00:12:00 | コーヒー・タイム
「ごゆっくりどうぞ」

 そんなことが可能だろうか。
 人生は思うより短い気がする。気を抜いたら一瞬で過ぎ去っていくのではないか。1年毎に生きたりしたらすぐにまとめて失われる。1日を大事にすればどうか。1秒を惜しんで生きたとしたら、結果的に長くなって、ゆっくりできるのかもしれない。
 コーヒーを飲んで長居するにはどうすればよいか?
 カップのサイズは、命の大きさだ。あびるように飲んでしまっては、すぐに尽きてしまう。そうではなく舐めるように飲む。ちょびちょびと大事にしていけば、1杯のコーヒーを長く持たせることもできるのではないか。

「そんな飲み方じゃ美味しくない!」
(さっと来てさっと飲んで帰る)
 勿論、そういう選択/飲み方/生き方だってあるだろう。
 それはそれでいいではないか。







 漬け物もいい。
 いいと思うことは口に出して言っておくのがよい。人は愚かだから、そうしないと距離が開いて、何がよいのか忘れてしまう。
(あなたも忘れない内に言っておいた方がいい)
 せっかくいいものを「みつけた」のに、忘れるのはもったいない。漠然と惹かれるものにも、ちゃんと理由があることが多い。いいと思うことを、言葉にして並べてみることで、新しい発見もあるかもしれない。

 漬け物は酸味があっていい。

 漬け物は手軽に食べられるのがいい。

 漬け物はごはんが進む。旨みが凝縮されているので、少量でもごはんをもりもり食べ進むことができるのだ。

 漬け物があれば茶漬けが食べたくなる。漬け物を起点にし新しい登場人物が現れ、世界がつながるということだ。その逆のパターンもある。まず茶漬けがあって、茶漬けがあることで漬け物がほしくなるのだ。相互にそうした強い絆があることは、素晴らしい。

 漬け物は自分で作ってもいい。それには難しい作業や、特別な力は必要ない。主にすることは寝かせることくらいだ。

 漬け物は人に勧めてもいい。手軽だからこそ、交流のきっかけとしても、警戒されにくい。パソコンや車だったらどうなることか。「そんな金ないよ!」と相手をいきなり不機嫌にしてしまうのではないだろうか。

 漬け物は手強い。簡単に駄目にならない。
 忙しい現代人にとって、それはとてもいいことだ。例えば、缶コーヒーのようなものだと、一度開封してしまったらすぐに飲み切らねばならない。なんと忙しないことだろうか。漬け物の周りでは、時がゆっくりと流れるように思える。


 漬け物がいいということは、十分にわかった。
(ドライフルーツもいいのでは?)
 いいものに気づくのがいいのは、他のいいものに気づくチャンスが広がるところにもあるようだ。1つ気づいて、それで終わりではないのだ。

「これは……」

 いつもとは違うコーヒーの美味しさに気づいて、僕はふるえていた。混ぜ損ねたコーヒーが、口をつける度に絶妙の味わいに変わっていく。こんなことが……。徹底して混ぜたところでちょうどいい甘さには落ち着かないというのに、適当に手を抜いたところに求めるものが?
 こういう風にして何かは生まれてくるのかもしれない。






コメント
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