ラグビーを見に行く。それにはサッカーの試合を横切らなければならない。ピッチの袖を通るつもりが、勢い余って少しピッチの中まで入ってしまった。ちょうどPKを蹴るところでゴール方向から現れた僕が視界に入ったか、キッカーはPKを外してしまった。
「何してるの?」
キッカーをはじめとして色んな選手やスタッフからも不快感を露わにされた。
「ごめん」
狙ったように変なタイミングで入ってしまった。自分が嫌になった。ラグビーの試合がどうなったかは記憶に残らなかった。
帰り道ではやりきれなくて浮遊に挑戦した。手始めに車の上に浮遊してついて行った。続いて風の力を借りて木の上に浮遊して歩を進めた。ぐんとレベルを上げて花の上にくるとそっと足をつけた。タッチが硬いと花に足を取られて進めない。難しいことに意識が集中している間は嫌なことを忘れた。この足技の先に未来がある。空気の上を歩けるようになれば、完全な浮遊を手に入れたも同然だ。
「運賃を払え」
野球選手が後ろから指をさしながら言った。誰かに見られていたとわかり動揺した。また責められたので不安が戻ってきた。払う義理もないがまともに反論する気にもならなかった。取り乱した末にウケを狙って回転ギャグを放った。
「それはよかった」
あるギャグがヒットして野球選手は素敵な笑顔を見せた。許しを得たようで僕は安心して家に帰った。
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