眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

風レオンの気まぐれ

2020-07-04 00:49:00 | ポトフのゆ
 アルデンテの風を受けて旋回したドーベルマンはニュートンの法則とカレンダーの上を跳躍するミュータントの安全な波線をたどり、アンデルセンの詩と健全な偶然の上に置かれた付箋の中で頓挫したり献身的に有線を引いたりしながら、風レオンの舌でとろけて消えた。

 職を転々としながらも、風レオンは見知らぬ土地に縁を求めてやってきては、赤い光の警備員となり根気をなくした旅人を勇気づけたり、転機をうかがう労働者たちに楽観的なアドバイスをして導いたりしたが、もっとすべきことは身につけた光の剣を振って、前を通り過ぎる人を単純に安全に健全に悠然と導くことだと完全に自覚はしていたが、自分の中に存在する風の不確かさゆえに、一点に留まり切れない何か、点滅が点滅を困惑させる何かを抑制し切れないことも、十分に理解していた。

「こちらへどうぞ。今の内にどうぞ」
 とはっきりとした声で誘う。
 いざゆけよ、旅人よ。

 風を受けて、あざとい技と重なる朝とを追って、むざむざ、憂さ晴らし、鶏冠をのせた勇ましい時差を越え、今朝がきた、朝露と久しぶりの戯れに、うさぎ、ささやかな、多彩なうそは、むささびのようさ、鈍感な時間の中を、勇敢なレンコンを抜けて、父さんの反感を抜けて、さあ、いざゆけよ、もたもたとは、するな、いざ、還暦の終電に乗って。

「これで空腹を満たしなさい」
 還暦のおしゃれなうさぎのように差し出した、晴れ渡る空の下で折れ煎餅は、慣れ親しんだスレッドのようだぜと風レオンは口ずさむ。枯れ果てた、希にみる、触れ難い折れっぷりだとこれに手を伸ばす。

「これ幸い」
 晴れの日も、風に木々が揺れる日も、触れてごらんよ、折れ煎餅。頼りない群のリーダーに、お日柄の悪い長靴の踵にも、太っ腹で預けられる、もう壊れたって、とても平気。くれぐれも用心なんて誰がするの、誰がするの、それが、折れ煎餅の、希に誇れるところと彼は刻むだろう。去れば去らぬ、更に去らぬか、すれ違いの折れ煎餅、きみが去るなら、俺、しばし留まり、たっぷりとあれを待つ。あれはたれ、たっぷりと浸して浸して、蒸れて蒸れて、逸れては濡れ衣を着た、あれも折れ煎餅。気が知れたのか、されど枯れ草の下に、彼はひれ伏した、フカヒレの切れ端をそれとなく、折れ煎餅に慣れさせて。

 異常気象のように時々おかしくなる。今はネズミの人格が現れて、警備の仕事を怠けた上に、地に這う配線をかじったりして、現場監督をかりかりとさせてしまう。ようこそと思ったのは遠い昔、今日こそおまえに国境を越えた屈強な実行委員会に帰属させて、即興的な鉄橋の上で即効性のある仮装警備員にさせてろうか、と多感な監督の発狂しそうな説教の中で、今度は犬の人格が現れる。

「つなげよ。とっととつなぎやがれ」
 つながれた警備員などあるのかと監督が憤慨するのは、自由あってこそ人を安全に導くこともできるという当然の理屈であったが、当然も通じず、まるで筋が通らず、監督の前に立っているのは犬なのだから、そこら辺の世論に従って、ロープをかけるまでに時間はかからなかったのである。

「何だ? 早くこの縄をときやがれ」


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