「これでも詩かよ」第27番&ある晴れた日に第158回
夏が逝く。なぜだか青空が日ごとに薄れて、ぐんぐん遠ざかる。
もう無二無三に暑かった西暦2013年の夏が、チャプリンがちょっと帽子に手をやるようにして、急ぎ足で退場していく。
しかしまだカンカン照りの舗装された道路には、ついさっきまで鳴いていたアブラゼミの死体が転がっている。
セミの傍には、一ぴきの巨大なスズメバチ。
やれやれ夏の間中しつこく私をつけ狙っていたこいつも、ついにくたばったか。
私は彼奴等にこれまでに既に2回も刺されており、体内には毒液が蓄積しているので、
「あと1回刺されたら致死量に達するので、生命の保証はできませんな」
と大船のお医者さんから脅かされている。
そこでいつも近所の朝比奈峠に散歩に行くと時には、彼から渡されたエピペンという注射器をつねに携行しているのだが、黄色い獰猛なスズメバチは、そんなあやうい命の綱渡りをしているおいらと知るや知らずや、いつも執拗に襲ってくるのだ。
なんにも悪いことはしていないのに。
いや、ちっとはしているか。
にっくきスズメバチの隣には、キリギリスやカマキリも静かに横たわっている。
こんな虫も、鳥も、犬も、猫も、独りで生まれて独りで黙って死んでいく。
うちの愛犬ムクだけは、死ぬ時にグググと唸ったが、思えばあれは、飼い主の健ちゃんへの最期のあいさつだった。
自分の落とし前を自分でつける彼らは、じつに立派だ。
最後まで人様に迷惑をかけっぱなしで、未練たっぷりに死んでいくのは、われわれ人間だけだね。
妻と手を取りて急ぐや秋祭り 蝶人