「これでも詩かよ」第88番「駆込み訴えその2」&ある晴れた日に第243回
鎌倉の鶴岡八幡宮が所有する土地に立つ世界の名建築、神奈川県立美術館鎌倉館が危急存亡の淵にあることは、テレビ、新聞、ネットで報道されているとおりであります。
八幡宮と県との借地契約が2年後に切れる同館を、財政難の神奈川県は閉館、解体し、地主に更地で返還しようとしているのですから、肝心要の鎌倉市がこれに反対せずにいったいどこの誰がするのでしょうか?
私はこの美術館が、ル・コルビュジエに師事した坂倉準三が1951年に建てた「現代建築の源流」であるうえに、建物を含めたこの景観、この環境が、その後背の平家池と見事に調和したこころなごむ静謐な空間であるからこそ、このかけがえのない場が地上から永久に失われることに反対しているのです。
げんざい鎌倉市はユネスコの世界遺産登録をめざして狂奔しているようですが、たとえ成就したとしても受け入れ不可能な観光客の増加につながるそんな愚にもつかない運動よりも、まず「足元にある世にも貴重な世界遺産の喪失」を阻止するべきではないでしょうか?
美術館保全の責務も情熱も投げ捨てて顧みない県当局を説得して、半世紀以上も市民のみならず観光客にも大いなる感動を与え続けてきた、この貴重な歴史的、文化的、精神的遺産の解体を防ぐことこそ、市長と市当局に課せられた最大の責務ではないでしょうか。
さいわいにも本年2月、内外の有識者からの抗議の声に押されて、神奈川県と鶴岡八幡宮は、その保存に向けた調査を(費用を折半しながら)4月から開始しているようですが、市長と市当局は洞ヶ峠を決め込むことなく、積極的に両者のイニシアティブを取って、なんとか同館の地下に眠る中世鎌倉の遺構を破壊せずに、耐震工事が可能な道を見いだして、この名建築の生き残りを図ってもらいたいものであります。
右、強く要望します。
なにゆえに本邦屈指の美術館を取り壊す八幡宮に祟りがあるぞよ 蝶人