bowyow cine-archives vol.649
1960年製作された白黒の仏蘭西映画であるが、ヒロインの踊子ローラに扮したアヌーク・エーメがとても美しくチャーミングなり。同じ彼女を起用した「男と女」のアホ莫迦監督ルルーシュとの違いが名人ジャック・ドゥミによるこの映画を見ると歴然としてくるだろう。
好きな相手には愛されず、どうでもよい相手には愛される不条理が世の常であるが、この映画も淡々とその不条理を描いてゆく。
登場人物とそれを囲繞する世界がいくぶんアナーキーであることも好ましく、物語が進むうちに少女を含めた一人一人の生きることの悲しみが浮かびあがり、さてこの映画が終わった後で、いったい彼らはどうなるのだろう、という思いが胸に突き上げてくるのである。
撮影監督はゴダールの相棒ラウル・クタールで、その「実存的な」キャメラが全編に亘って冴えまくる。
ミシェル・ルグランが担当する劇伴は、なんとベートーヴェンの交響曲第7番の第2楽章だが、これも不思議なことに映像と違和感が無いのは演出の魔術としか思えない。
なにゆえにこのジャムの蓋は固いのか年寄りばかりの世の中なのに 蝶人