あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

トム・フーバー監督の「英国王のスピーチ」をみて

2014-06-21 09:26:23 | Weblog


bowyow cine-archives vol.652


吃音に悩むジョージ6世(コリン・ファース)とその治療に挑んで勲章をもらったオーストラリア人(ジェフリー・ラッシュ)との交情の物語です。

他の医者は吃音を外部から物理的にアプローチして治そうとして失敗するのですが、その濠人は吃音の真因が幼時からの父親との精神的な軋轢にあると見抜き、全人格的な関わりの中で溶解させようと腐心するのです。

なんとかかんとか吃音障がいを克服してヒトラーへの宣戦布告を告げるジョージ6世の演説の背後に鳴っているのは、ベートーヴェンの交響曲第7番の第2楽章で、これはジャック・ドゥミ監督の「ローラ」でもつかわれていましたが、「ローラ」のほうが映像と物語にうまくフィットしていたようです。

本作ではベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番の第2楽章も使われていますが、この曲がもっとも効果的に鳴らされたのはピーター・ウィアー監督の「ピクニック・アット・ハンギングロック」でして、私は彼がてがけた他のどんな有名作品よりも、この拙い処女作を愛しておるのです。


なにゆえに微笑みながら叔母永眠る九十四にして少女の貌で 蝶人

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