bowyow cine-archives vol.650
ジョン・ヒューストンの作品を選んで観たことはないが、あまり駄作のない監督ではないだろうか。「アフリカの女王」「キ・ラーゴ」「荒れ馬と女」「許されざる者」「火山のもとで」「黄金」「勝利への脱出」みな面白かった。
彼の処女作は「マルタの鷹」、最後は1987年の「ザ・デッド」で、どちらも良かったが、ダブリンの雪と冷雨を背景に主人公が「いずれ私もこの世から消えてゆくのだろう」と呟くシーンには心の底まで凍り付いた。
この映画および井伊大老が暗殺される「侍ニッポン」だけは、冬の夜にはみたくない。
本作ではジャック・ニコルソン、キャスリン・ターナーとアンジェリカ・ヒューストンを自由自在に駆使してギャング一家の身過ぎ世過ぎをブラックフーモアにくるんで楽しげに演出している。
3人はそれぞれにお互いを愛し、かつ憎んでいるのだが、その愛を貫く前にマフィアの掟やら誓いやらプライドやら仁義が立ちふさがり、君に忠ならんとすれば孝ならずなどという、いくつもの障害を乗り越えて、不滅の愛を成就するかと思わせておいて、邪魔者はどんどん殺されていくのであったああ。
なにゆえに神社の岩煙草を根こそぎにする公徳心なき我利我利亡者よ 蝶人