西暦2025年睦月蝶人映画劇場 その4
闇にまぎれてtyojin cine-archives vol.3903~7
1)D.W.グリフィス監督の「國民の創生」
南北戦争、リーンカーン大統領の暗殺を経て混乱に突入したアメリカ。白人の人権、選挙権が奪われて今から思うとまるで夢のような黒人独裁帝国が全米を制覇するが、心ある白人が秘密裏に組織した反黒人武装蜂起集団KKKの大活躍で今日の米国発展の基礎が創生されるまでを唯我独尊のドキュメンタリータッチで描いたリリアン・ギッシュ主演1915年の無声映画兼アメリカ初の長編映画。なお本作でリンカーンを暗殺するのは助監督も務めたラオール・ウォルシュである。
2)クリストファー・ノーラン監督の「オッペンハイマー」
マンハッタン計画の科学部門の責任者の半生を描く話題の映画。
若い頃は左翼的で、かなりお調子者の人物に国家的大事業のマンハッタン計画の科学部門の責任者を任せたとは知らなかった。半分はその原爆製造の苦労話だが、後の半分はソ連のスパイ容疑を審議する公聴会での論争で、ノーランはこの2つをいつものように時系列を飛び越してつまみ食い的に描くので、いつものように表現効果が散漫になる。この映画に原爆投下後の広島長崎の惨劇がまったく描かれていないといって文句を言う人がいるが、「オッピー」も現在の大多数のアメリカ人も、真珠湾奇襲に始まった太平洋戦争は(アメリカの陰謀に嵌ったという説もあるが)、元を辿れば日本が始めた戦争である。戦争は始まってしまえば因果応報の地獄道だから、殊更広島長崎の原爆被害だけを取り出して人道の罪で断罪するのはいささか無理があるだろう。
3)ティエリー・フレモー監督の「ルュミエール」
ルュミエール兄弟を初め7人のカメラマンがエジソン発明のキネトスコープを改良したシネマトグラフで10年間に108本撮影した作品を2016年に一括公開した素晴らしい50秒の映像群。
4)パゾリーニ監督の「王女メディア」
ギリシアのエウリピデスの原作をもとにマリア・カラスが主演する1969年の大いなる悲劇。いくら夫に裏切られたというて実の息子まで手にかけるものか。
5)イングマル・ベルイマン監督の「処女の泉」
ちゃんとした躾もされないわがまま放題の娘も娘なら、危険がいっぱいの森の中を碌でもない女中をつけて教会にやり、夜になって娘が帰ってこないのに探しに行こうともしない親も親だと思う。父親が犯行現場に教会を建てると誓った途端に娘の遺体のあった地面から水が流れ出す「奇跡」も頂けない。
狂人を大統領に選んだ人よこれからたんと後悔しなはれ 蝶人