照る日曇る日第734回
英文学者としての著者が全精力を傾けたジェームズ・ジョイス論を中心に、プルースト、エリオット、ヘミングウエイ、ナボコフ、ボルヘスなどの海外文学論がずらずら並んでいる。
みなそれぞれに面白いからお読みくださいな、としかいえないが、いちばんおもしろいのは「小説は女性に限る」と説く著者による女性作家論で、ジョイス嫌いであったはずのヴァージニア・ウルフが、ジョイスの「ユリシーズ」の影響のもとで「オーランドー」を書いたという説は、初耳ながらおおいに説得力がありました。
また著者は、急進的革命家ゴドウインの娘でロマン派の詩人シェリーの妻であったメアリー・シェリーの「フランケンシュタイン」を、「彼女は「神は死んだ」というニーチエの宣告をその64年前に予知して、この世界文学史初のSF小説を書いた」と高く評価しているので、これはいつか読んでみたいナと思った次第です。
蟷螂が発条晒して死んでいる 蝶人