照る日曇る日 第1174回
書肆侃侃房の新鋭短歌シリーズの1冊で、短歌には珍しいスズキユカのイラストの表紙に惹かれて手に取ってみました。
作者は1982年生まれの歌人、精神科医で、郷里の小浜や学生時代を過ごした京都の風物が出てくるのが、なんとなく懐かしい(ちなみにケネデイが暗殺された秋、私は市電の轟音を聴きながら左京区田中西大久保町の下宿で暮らしていた)。
東山三条田中人形本店は斜め向かいでございます。
サークルの立て看板がだんだんと東大路に増えていく春
しょこたんをたまに応援したくなるひとり暮らしのおしろいの花
内容はといえば、若手にありがちな鬼面人を驚かせるような作品はまったくなくて、たとえば、
自転車はさびしい場所に停められるたとえばテトラポッドの陰に
やり方は知らないけれど春先のゲートボールをころがる
のような、ちょっとした気づきを、平明な言葉遣いで淡々と詠んでいるところに好感を覚えます。
乗客は乗り込んだのに雨の日のドアをしばらく開けているバス
発泡スチロールの箱をしずかにかたむけて魚屋が水を捨てるゆうぐれ
なんていうのは、クープランのクラブサン曲をBGMに、フェルメールの絵を眺めているような趣があって、なかなか悪くなかったのです。
チコちゃんよ安倍蚤糞を叱ってやれ「テメエ、ボーと生きてんじゃねーよ!」 蝶人