照る日曇る日 第1184回
全部で11の怖い短編が並んでいるが、あまり怖くないのもある。名作として名高いフォークナーの「エミリーにバラを一輪」なんかも映像になれば(もうなっているのかも知れないが)怖さが迫って来るのかも知れないが、読んでる限りではそうでもない。
怖いのは本書の表題になっているロアルド・ダールの「南から来た男」だ。ジャマイカの海岸沿いのホテル(おそらくモンテゴベイ)で南米からやってきたかと思われる老人が、ライター(おそらくジッポーの)アメリカの若者をつかまえて、賭けをしないかと提案する。
若者のライターが、10回連続で火がついたら、緑のキャデラックの新車をあげる。が、もし点かなかったら若者の左手の小指をもらう、という賭けだ。
主人公の「わたし」は「馬鹿馬鹿しいからヤメロ」と忠告するんだが、いろいろあって結局若者は賭けに乗り、「わたし」は立会人になる。
肉切り包丁が登場して「7回、8回」とカウントするあたりの恐怖は、読んでいても文字通り手に汗を握る。さて、いったいどういう結末になるのか? そしてその前に、もう一度怖い怖いお話が待っている。
ダールは、「チャーリーとチョコレート工場」の作者として知られるダールは、元イギリス空軍の戦闘機のパイロットで、「007は二度死ぬ」の脚本も書いた才人だった。
犬猫はしばらくすると人になりやがては立派な家族として死ぬ 蝶人