あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

真木和泉著「私の東京教育大学」を読んで

2021-12-20 10:07:34 | Weblog

 

照る日曇る日第1685回

 

政府自民党の筑波大学構想の陰で、なんと廃学の憂き目に遭った作者による、半世紀前の大学闘争の手記的小説である。

 

本書を読んで知ったのは、まず作者は、あの有名な幕末の志士ではなく、篤実な代々木系の一活動家であること、教育大の当時の文学部自治会はゴリゴリの民青だったこと、彼らが時折実力闘争で対決していたのがなんとまあ革マルだったということ!

これでは当時「暴力学生」シンパだった私の出る幕はなんか無い。

 

しかし政治的主張によってのみ人世を語ることは慎まなければならない。寮生活をしていた作者をはじめ、登場人物の大半はみな貧しく、みな真面目であり、青春真っ只中を苦悩しながら生きていた。

 

もちろん私も同様だったが、彼らにはセクト間の対立以上に大学強制移転との闘いがあった。69年1月の東大に続いて2月には教育大に機動隊が入り、警察、国家権力と一体になった大学側のロックアウト体制が敷かれ、同年7月24日には移転強硬派が筑波移転を最終決定し、母校の廃学が現実のものとなった。

 

闘争がより悲惨で熾烈なものになっていくなか、作者は卒業後は、予備校などの講師として生計を立て、一家を養ったらしいが、それは教育大で福原鱗太郎選手から学んだ後、どこか田舎の学校で「坊ちゃん」のように暮らしてみたいと密かに願っていた私のどこか分身のようにも思えるのである。

 

  「いつまでも元気に働くんだよ」と送りだされぬ最近の家電 蝶人

 


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