闇にまぎれて tyojin cine-archives vol.1827~1836
1)マイケル・マン監督の「インサイダー」
タバコの有害性を内部告発するラッセル・クロウと彼を支援し守ろうとするジャーナリストのアル・パチーノの男の戦いと友情の物語。実話に基づいているだけに迫力がある。しかし内部告発の犠牲の大きさと重さに心が沈む。
2)ジム・ジャームッシュ監督の「ダウン・バイ・ロー」
ジョン・ルーリー、トム・ウェイツもいいがそこにイタリアの快優ロベルト・ベレーニが加わることによって映画が爆発する。アイスクリーム、ユースクリーム、アイスクリームの合唱は、終盤の女レストラン主ニコレッタ・ブラスキとの出会い、そして別れ道での訣別ともども忘れがたい。
3)ジム・ジャームッシュ「ストレンジャー・ザン・パラダイス」
全編モノクロームで俳諧風のショットを積み重ねていくロード・ムービー。ジョン・ルーリー、エスター・バリント、リチャード・エドソンの配役が見事に演出にはまった。あとの2人はその後どうなったんだろう。
4)リチャード・フライシャー監督「ソイレント・グリーン」
食糧危機の問題がこの映画の製作時点ほど意識されないのは、危機が回避されたからではなく、問題意識が麻痺してだけだと思わせる1973年のアメリカ映画。人間の死体から緑色のハイテク食品がベルトコンベアで流れてくるシーンをみてもそれほどの戦慄を覚えないのは、すでにそういうメカニズムがどこかで実用化されて作動しているからかもしれない。名優エドワード・ロビンソンの遺作。
5)ポール・アンダーソン監督の「三銃士/王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船」
2011年製作の3D映画。ミラ・ヨヴォヴィッチが妖艶でよろしい。
6)ジェリー・ザッカー監督の「殺したい女」
せっかく大嫌いな妻のベッド・ミドラーが誘拐されたのに、なかなか殺してくれないので焦りまくる夫のダニー・デヴィートという構図だがさっぱり面白くないずら。
ジョージ・クルーニー脚本監督主演の「スーパー・チューズデイ正義を売った日」をみて
民主党大統領選挙をめぐる悲喜劇であるがあまり面白くない。ライアン・ゴズリングはミスキャスト。
7)ロバート・ベントン監督の「夕陽の群盗」
南北戦争の徴兵を逃れようとした良家のボンボン、バリー・ブラウンが、虎の子の財産を奪われたのみならず、ジェフ・ブリッジスを頭とする乱暴者の群れに入って、人殺しをしたり、銀行強盗をするようになるまでのヤッサモッサを描く。
8)ドン・シーゲル監督の「テレフォン」
1978年公開のハリウッド・サスペンス。米ソの冷戦は緩和されたのだが、冷戦時代に撒かれた種を消さねばならないスパイをチャールズ・ブロンソンが演じる。しかし電話であるフレーズを通告されると機械的にテロを実行する催眠術なんて存在するのだろうか。
9)チャップリン主演・脚本・監督の「ニューヨークの王様」
1952年に「赤狩り」で米国から追放されたチャップリンが、1957年に英国で製作した最後の監督作品。共産主義者を父に持つ少年(息子のマイケルが演じている)への同情を通じてマッカーシズムへの態度を表明しているが、どこか微温的で屈折したものがある点が気になる。王様の「原子力を使ってユートピアを作る」という目論見は現在もなお挫折したままである。
10)パゾリーニ監督の「アポロンの地獄」
ギリシア悲劇「オイディプス王」を生き生きと劇化した天才の傑作。シルバーナ・マンガーノが圧倒的に美しい。
「ヘリ空母」はいつ空母に化ける変わるのか「いずも」に群がるカメラマンたち 蝶人