照る日曇る日 第2134回
全7冊のうち4冊目に当たる本書は第5部「パリ、イタリア、パリ」(1847-1852)を中心に「西欧小論集」や「家庭の悲劇の物語」などのおまけを含んだコンピレーションである。
1848年の6月に蜂起したパリの戦闘的労働者の暴動はカヴェニヤック将軍指揮下の軍隊によりわずか3日で1500名の死者を出して徹底的に弾圧され、イタリアにあって能天気な革命の幻想に酔っていたゲルツェンなどの亡命者や共和的民主主義の支持者たちを絶望の淵に叩き込んだ。
ツァーアリを遥かに凌ぐフランスの支配階級の暴虐の前に、それまでの西欧文化と社会に対する浪漫的な幻想を吹き飛ばされたゲルツェンは、自分の仲間や亡命者たちの見苦しい周章狼狽ぶりに動揺したが、ドイツの詩人ゲオルク・ヘルヴァークと最愛の妻ナターリアの急接近に傷ついた心をさらに痛めた。ナターリアの死は近い。
「黄昏のビギン」の歌声に送られて旅立ちゆきし憲法原理主義者 蝶人