照る日曇る日第1214回
村上春樹の翻訳によるジョン・チーヴァーの短編が良かったので、今度は川本三郎訳にて読んでみることにする。全部で15編だが、村上版とのダブリは少ない。
1912年にマサチューセッツ州クインジイに生まれた著者は、1982年に70歳で死んだが、ニューヨークとその近郊の住宅地を舞台にした中流階級のWASPを主人公にした心理小説を、雑誌「ニューヨーカー」などに発表して後年の輝かしい文名を築き上げた。
「サバービア」(郊外人種)を見つめるチーヴァーの視線は、あくまでもクールで、文明社会の矛盾の本質を衝いていると感じられるが、表題作の「橋の上の天使」に象徴されるように、絶望とペシミズムの彼方に、一瞬垣間見られる虹の光彩をみると、読者である我々もほっと救われるのである。
いかに絶望的にみえようとも、人世に希望は、ある。と信じたい。
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今もなお五七五七七が大王の治世を言祝ぎ下支えする 蝶人