蝶人物見遊山記第291回
わが地元十二所が生んだ偉大なる芸術家は日本画の小泉純作、純文学の岡松和夫、童画の「柿本幸造」ですが、その柿本氏の没後20年を記念する大回顧原画展が開催されている吉祥寺まで足を運びました。
そこには彼の広告デザイナー時代の日産のカレンダーから1967年に始まった「どんくまさん」シリーズ、「ごんぎつね」、「どうぞのいす」、さらには地元十二所のバス停や郵便ポストなど数多くの絵本、童話の原画が展示されていました。
どの作品も朱色を基調とした暖色系の配色が目と心にやさしく沁みわたり、それが画家の世界に対する豊かな包容力を示しているように思われますが、とりわけ胸に響いたのは、小学生の教科書で有名な「くじらぐも」と1998年の死の直前に描かれた未刊の遺作「どんくまさんと手風琴」でした。
これらの作品が遺族亡きあとも、しかるべき場所に安置、公開されますように、と願いながら帰途についたことでした。
なお本展は来る11月11日まで同館にて好評開催中です。
地下駅に轟きわたる騒音を我ら黙してひたすら耐えおり 蝶人