あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

ペンキ塗り~「これでも詩かよ」第104番

2014-10-16 11:33:20 | Weblog


ある晴れた日に 第262回

茶色い家にしようと思ったが
待てよそれではありきたり
すっぱりあきらめ青にした

青の家にしようと思ったが
待てよそれでは冬寒い
すっぱりあきらめピンクにした

ピンクの家にしようと思ったが
待てよそれでは色情狂
すっぱりあきらめ緑にした

緑の家にしようと思ったが
待てよそれでは重すぎる
すっぱりあきらめ黄色にした

黄色い家にしようと思ったが
待てよそれではゴッホの家
すっぱりあきらめ白にした

白い家にしようと思ったが
待てよそれではいまとおんなじ
もう面倒臭くなってまた白にした


 可もなくて不可もなきこの世の中を可もなく不可もなき人過ぎる 蝶人
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夢は第2の人生である 第20回 

2014-10-15 11:46:52 | Weblog


西暦2014年文月蝶人酔生夢死幾百夜


J.クルーの来秋冬シーズンのメンズのパンツのシルエットが、みんなサブリナパンツにように絞られいるので、驚いてデザイナーのエミリー・ウッズに修正するように頼むのだが、彼女はどうしても妥協しないのであった。7/31

持っていた自転車の鍵を、東京駅の新幹線乗り場の改札口の機会に挿入したとたん、私は新大阪の駅に到着していた。7/30

水の上を浮遊する廃市を2日間流離っていた私は、なにも口にしていなかったので、そこで出された肉じゃが定食を、世界でいちばん美味しい料理として賛嘆しつつ、頂戴したのであった。7/28

下水配管が集まっている場所に巨大なサッカー練習場があったので、ここでボールを蹴り合っていたら、四方八方から押し寄せる人びとによって、私は王として戴冠された。7/28

素敵な小道をどんどん辿っていたら、愛らしい少女と出会ったので、私は彼女を家に連れ帰って寝た。

某重大事件の犯人を追う私は、2人の詩人の協力を得て知床半島のウトロの番屋までやってきたのだが、なんの手がかりもなかった。

政府の大号令で大舞踏会が開催され、老若男女が踊り狂ったが、それがお終わると「今後はいかなる歌舞音曲も慎むように」という命令が出されたのであった。7/26

最高級ホテルでのショーが真夜中に終わったので、私が北島君に帰ろうかと声をかけたが、「僕はもうちょっとここにいる」というので、会場を眺めると、黒人のプロデューサーが、ショーに使われた衣装や小道具や高級車や時計などの小物を、全部お客に呉れてやっているのだった。7/25

私とある老人が、SNSで好きなことを語り合っていると、今井さんが「そんな無駄話は即刻やめろ」と文句をいうので、「ここは死にゆく者のための空間なんですよ」と反論した。7/24

バラエテイ番組に出ていた女優が、「背中から尻尾が出ている友達をここへ呼んできてもいいかなあ」というので、プロデューサーの私は、「いいとも」と鷹揚に頷いた。7/23

車の運転は運転手にまかせ、後部座席で乳繰り合っていた私だったが、ふと前を見ると誰もいないので青ざめた。7/22

山澤君が操縦する蒸気機関車は、猛烈なスピードで展示会場に突入し、いろいろな障害物をなぎ倒しながら、壁に激突してようやく停止した。7/21

戦争が始まって徴兵されることになったので、まだ童貞で恋人もいなかった私は、風俗へ行ったのだが、もはやその種のセックスショップは閉鎖されており、味気ない思いで営倉の門を潜ったのだった。7/19

古めかしい大劇場で、演劇を観ていた。はじめは全然詰まらなかったのだが、ようやく面白くなりかけてきたところで突然大地震が発生、いまにも天井が崩れ落ちそうになったので、逃げ出そうとするのだが、足がすくんで動けない。7/18

「「時は西方に流れる」という題名の映画の撮影に同行しませんか?」と誘われたので、私は妻と一緒に3ヶ月間全国を流浪する、ロングバケーションに旅立つことになった。7/17

その少女と関係するのかしないのかが、その場に居合わせた人々にとっての最大の関心事になってしまったようなので、私はおおいに戸惑っているのだった。7/16

激しく泣き叫ぶ声が聴こえたので、息せき切って駆けつけると、一頭の小象が、仰向けになってのたうち回っていた。7/15

足元にまとわりつくリトルピープルを蹴飛ばしても、蹴飛ばしても、まだくっついてくるので、私は疲労困憊してしまった。7/14

ぬばたまのお伝は、「お客さん、よってらっしゃい、みてらっしゃい、これはほんとに美味しいお酒ですよ」と巧みに客引きをしながら、じつはこえたごから汲んで来た汚ない水を売りつけているんだった。7/13

せっかく生まれ落ちても、この小さな蓮池では立ち泳ぎしていないとおぼれてしまうので、子供たちは、必死で手足を動かしているのでした。7/12

「空」派が勝つか「海」派が勝つか、という熾烈な社内闘争の結果、アトム衛星がC衛星を撃墜して後者が勝利を収めたので、私は初めて名刺を作ってもらえることができた。7/12

荒涼とした夜の街の広場で、息子はたった一人でなにか訳の分からない言葉を呟きながらうろついていたので、私は全速力で走り寄って、その太った体を両手で抱きしめた。7/10

私が撃った銃弾は6発であったが、あとで回収されたそれらは、条痕がくっきりと刻まれ、午後の陽ざしを浴びて、黄金色に輝いていた。7/10

戦闘中に気がつくと、心臓のすぐ傍を弾丸が貫通しており、夥しい血が流れ出しているので、私はいよいよ自分はこれで死んでしまうのだ、と初めて悟った。7/9

さる戦国大名の依頼を受けた私は、「ともかく兵に戦争を徹底的に楽しませ、てんでカッコよく死なせてやりませうヨ」と言って、濠の前面にお色気たっぷりのおっぱいの絵を描いたり、大砲の色をピンクにしたりしたので、次々に注文が舞い込んだ。7/8

恋人同伴でショウを見物に来たら、日隈君が「課長どういうつもりですか、このショウの準備は全部うちの課の担当なんですよ。それにもう1箇所イベントもあるし、一体どうするんですか」、とパニクッっている。7/7

「米国からばかりじゃなくて、英国からも借金しないと不公平じゃないか」と彼がいうので、私はまた新しい手土産を持って未踏の地雷原に分け入る羽目になった。7/6

私はナボホ族の女が呉れた旨そうな肉を口に含んだが、彼らが昨夜ヒュー族の男たちを虐殺するところを見ていたので、すぐに吐き出した。ところが仲間のペー公は私がいくら止めろといっても聞かずにムシャムシャ食べている。7/4

ナボホ族を征服させた私たちを歓待しようと、美女が美食を持ってきたが、私は前回の経験に懲りて、蒸しパンだけを口に入れたのだが、じつはそこにも殺されたヒュー族の男たちの肉が含まれていると分かったので、私は直ちに一族を皆殺しにした。7/4

「1500億円相当の秘伝の舞の奥儀を、特別に8000万円で教えてつかわす」、というので、私がどうしようかと迷っていると、その名人は、「さあどうする、どうする」と、手に持った浄瑠璃人形を、私の顔にぐいぐい近づけるのだった。7/3

裏口から逃げだした私と彼女は、オートバイに乗った奴らに追いかけられたので、必死で逃げたのだが、とうとう追いつかれた。「ヤバイ、万事休す」と思われた瞬間、彼らは私を追い越して駆け抜けていった。7/1


 あまりにも暑いというより熱いので、生きていることを忘れてしまう 蝶人
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キング・ヴィダー監督の「戦争と平和」をみて

2014-10-14 11:25:43 | Weblog


bowyow cine-archives vol.712

 ハリウッドがトルストイを映画にするとこうなるという見本のような大スター主義の娯楽映画です。
 
 そこでは戦争も平和も歴史も国家も人間の実在の手ごたえもあらかた消しとんで、最後はオードリー・ヘプバーンとヘンリー・フォンダとメル・ファーラーとの恋愛沙汰だけが残る。

 その証拠にヘプバーンとファーラーはこの映画が縁で結婚したのではなかったか。

 監督が凡庸なせいか、3人ともあまり心に残る演技はできていない。

 記憶に残るのはこの映画の4年後にフェリーニの「甘い生活」で妖艶な肉体美を見せたアニタ・エクバーグ。されどその27年後に「インテルビスタ」に登場した彼女はまるでトドのような浅ましい姿と変わり果てていた。

 んな訳ですから、私は醜いまでに太った人間は嫌いだ。


  太るのは自己抑制が効かないでおのれが豚豚になることを許すから 蝶人
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丸谷才一著「丸谷才一全集第11巻」を読んで

2014-10-13 09:34:40 | Weblog


照る日曇る日第734回


 英文学者としての著者が全精力を傾けたジェームズ・ジョイス論を中心に、プルースト、エリオット、ヘミングウエイ、ナボコフ、ボルヘスなどの海外文学論がずらずら並んでいる。

 みなそれぞれに面白いからお読みくださいな、としかいえないが、いちばんおもしろいのは「小説は女性に限る」と説く著者による女性作家論で、ジョイス嫌いであったはずのヴァージニア・ウルフが、ジョイスの「ユリシーズ」の影響のもとで「オーランドー」を書いたという説は、初耳ながらおおいに説得力がありました。

 また著者は、急進的革命家ゴドウインの娘でロマン派の詩人シェリーの妻であったメアリー・シェリーの「フランケンシュタイン」を、「彼女は「神は死んだ」というニーチエの宣告をその64年前に予知して、この世界文学史初のSF小説を書いた」と高く評価しているので、これはいつか読んでみたいナと思った次第です。


       蟷螂が発条晒して死んでいる 蝶人
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山崎方代著「もしもし山崎方代ですが」を読んで

2014-10-12 10:27:20 | Weblog

照る日曇る日第733回

しみじみと三月の空ははれあがりもしもし山崎方代ですが
ことことと雨戸を叩く春の音鍵をはずして入れてやりたり
朝めしをかるくすませて面映ゆく世間をよそに横になりたり
幸はねて待つものと六十を過ぎし今でも信じています

 山崎方代は大正3年に山梨県八代郡右左口村に生まれ、昭和18年にB29の爆撃を受け右目の視力を失い、昭和47年からは鎌倉の手広の山際のプレハブに棲み、酒と歌の日々を送りながら、昭和60年に71歳で死んだ自由と放浪と風雅の野人である。

いりうみのはずれに小さな村がありいつでもぬくくみまもられてる
朝比奈の隠し砦のあとどころほたるぶくろは花吊しおる
かりそめにこの世を渡りおる吾のまなこにしみるかたくりの花
小屋のなかにこもっているとたえまなくさくらの花が舞い込んで来る

 残念ながら私が鎌倉に住んだときには、すでに肺がんで没していたために、その面影と痕跡を訪ねるためには、彼が愛した瑞泉寺とか八幡様の前の中華料理屋に足を運ぶことでしか叶わなかったが、幸いなことにその赤子のごとく天真爛漫な性格を吐露した天衣無縫の幾多の短歌が残されている。

としつきの差はさりながらさはあれどおしたい申しており候よ
湘南のくまがい草も咲き移り短く寒く夏はゆくなり
夕方の酒屋の前にて焼酎に生の卵を落としている
わたくしの六十年の年月にさはってみたが何もなかった

 まだまだ秀作はたくさんあるが、作品の上下よりも、どんな歌もきばらず、粋がらず、まるで野生動物が呼吸するように自然に詠まれていく、素朴で伸びやかで融通無碍な人歌一体のありように限りなく惹かれる。

 私はどんな高名な歌人先生よりも、こういう野良のアンリ・ルソーのような歌人が好きだ。

       右翼紙への投歌を廃す神無月 蝶人
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ラップの歌~「これでも詩かよ」第103番

2014-10-11 10:32:02 | Weblog


ある晴れた日に 第261回


包む包む、ラップで包む
トウモロコシをラップで包んで
チンをする

包む包む、ラップで包む
お餅をラップで包んで
チンをする

包む包む、ラップで包む
盲導犬を刺した奴をラップで包んで
チンをする

包む包む、ラップで包む
絶叫する通販男をラップで包んで
チンをする

包む包む、ラップで包む
自称右翼の軍国主義者をラップで包んで
チンをする

包む包む、ラップで包む
黄昏の日本列島をラップで包んで
チンをする

包む包む、ラップで包む
世界中で人殺しに狂奔する人間どもをラップで包んで
チンをする

包む包む、ラップで包む
宇宙の暗黒物質をラップで包んで
チンをする


   絶叫する通販男に対抗するには気力体力忍耐力がひつえう 蝶人
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ジェームズ・マンゴールド監督の「アイデンティティ」をみて

2014-10-10 16:44:41 | Weblog


bowyow cine-archives vol.711

 いわゆる多重人格者が次々にその人格を変えていくが、その人格の中に悪い奴がおって、その悪い奴が次々に殺人事件を起こした場合、その悪い奴は多重人格者の一部ではあるが全部ではなく、ましてその多重人格者の人格は一枚岩ではないので法的責任を追及することはおろか、大量殺人事件を起こした張本人として死刑に処すことも出来ないとゆう弁護士の意見がまかりとおって、死刑執行の寸前に釈放されるのだが、そのとき遅く、かの時早く、悪い奴の姿になった多重人格者はとつぜん牙をむき出して理解ある、ありすぎた弁護士をぶぶっ殺してしまうのだった。

 もうええわ、わたしおとうちゃんとこいきたいわというて母みまかりき 蝶人
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アッテンボロー監督「あの日の指輪を待つ君へ」&クレイマー監督の「西部悪人伝」をみて

2014-10-09 14:15:51 | Weblog




リチャード・アッテンボロー監督の「あの日の指輪を待つ君へ」

bowyow cine-archives vol.709

今年79歳になるシャーリー・マクレーンが出ているというだけで価値がある映画なり。

戦争花嫁になってしまったヒロインが、その愛を終生貫きとおすという感動のドラマであるが、ヒロインの彼氏がはめていた金の結婚指輪がアイルランドの山中から発掘され、それが折しも内戦状態になっていたベルファスト紛争の話とからんでゆく。


フランク・クレイマー監督の「西部悪人伝」をみて

bowyow cine-archives vol.710


「サバタ」という、蝶人、じゃなかった超絶的ガンマンに扮するのが、お馴染みリー・ヴァン・クリーフで、その役名のサバタがこの映画の原題であるが、邦題が「西部悪人伝」とはおそれ入谷の鬼子母神。

実際はそれほど悪い奴ではないのだが、この映画でいちばん凄いのはその内容ではなくこの邦題であることは間違いなし。


  お前さんが攻めてくるならこちとらだって黙ってはいないぜ全世界中で気分はもう戦争 蝶人
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丸谷才一著「丸谷才一全集第6巻」を読んで

2014-10-08 12:50:09 | Weblog


照る日曇る日第732回

 本巻では「輝く日の宮」をはじめ「持ち重りする薔薇の花」「茶色い戦争ありました」「ゆがんだ太陽」など全6篇を収めていますが、まず読むべきは「輝く日の宮」でしょう。

 これは若く美しく知的な女主人公をめぐる恋愛や学界のスキャンダルを主題とした波乱万丈の社交風俗小説といえるでしょう。

 しかし、いきなりヒロインが少女時代に書いた泉鏡花風の短編小説が巻頭を飾るという奇抜な趣向が施され、全体としては彼女のビルドウングスロマンでもあり、時空を超えた巨大な謎解き小説の様相をも呈している。

 さらにその長編小説の内部には、彼女が研究している国文学の興味深い問題、「芭蕉はなぜ奥の細道へ旅立ったのか?」、あるいは「源氏物語の巻頭の「桐壺」の後には「輝く日の宮」という幻の巻があったのではないか?」という仮説についてのあっと驚くエキサイティングな考察がこれでもか、これでもかとパーカッションのように乱れ打たれています。
 
 かてて加えて、その書法の基調は通常の小説体でありながら、突如演劇体に変わったり、シンポジュウムの記録や論文風になったりして、文芸形式の変則形態に挑みつづけ、最後は紫式部に成り変わった著者が、なんとその幻の「輝く日の宮」の巻に筆を染めるという主客一体、空前絶後の驚くべき試みに出たところで、この素晴らしい物語は突如幕を閉じるのです。

 本作は著者最高の作品であるのみならず、まぎれもなく本邦の戦後小説の最高峰のひとつに鎮座する名作といえましょう。


   青空にひつじ雲が浮かんでる今日は死ぬにはかなりよい日だ 蝶人
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ブレイク・エドワーズ監督の「グレートレース」をみて

2014-10-07 13:35:54 | Weblog


bowyow cine-archives vol.708


サザエさん「どうだった? 面白かった?」

カツオ「これって喜劇映画なんでしょ? だとしたら全然面白くない。大失敗作だと思う。だって面白かったのはケーキ投げのシーンだけなんだもの」

マスオさん「せっかくジャック・レモンが出ているのに、全然レモンらしくないしね。ともかくただただ長いだけの映画。

ワカメ「レモンじゃなくてザボン」

サザエさん「NYから始まっ.た自動車レースの間に、下らないなんちゃらかんちゃらが続いて、やっとこさっとこパリに着いたと思ったら、またやり直すんだとかいって、またパリからレースがはじまんだって」

カツオ「いつまでもやってろ、って言いたくなるね」

イクラ「バブーン」


   キャンパスに高らかに響く蝉の声生涯最後の授業終えけり 蝶人
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市川昆監督の「犬神家の一族」をみて

2014-10-06 10:54:50 | Weblog


bowyow cine-archives vol.707


ドラえもん「ああ、つかれた。なんだかよく分からないえいがだったなあ」

のび太「いったい誰が悪者で、どういう目的でどんどん人を殺していくのか、さっぱり分からなかったなあ」

ドラえもん「けっきょくあの大きな顔をした、たかみねみえこさんが悪者なんでしょ。でもぼくのタケコプターより不自然なせっていだったなあ」

のび太「あんなみょうちきりんな原作の、あんなみょうちきりんな映画なのに、どうしてあんなにおおぜいの人たちが、映画館に押し掛けたのかしら」

しずかちゃん「きっといまより世の中がのどかだったからよ」

ドラえもん&のび太「そうかなあ」


 世の中はあれからどんどん悪くなり「よきこときく」ひと少なくなれり 蝶人
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クリント・イーストウッド監督の「ガントレット」をみて

2014-10-05 10:52:58 | Weblog


bowyow cine-archives vol.706


サザエさん「悪い上司の陰謀にひっかかってあやうく殺されそうになった警官のイーストウッド選手が、護送を命じられた大卒の売春婦と恋に落ち、権力の武装装置との対決に打ち克って、見事の上司に復讐を遂げる大活劇メロドラマだわね」

マスオさん「冒頭の暗い情景がなにやら不穏さを漂わせていて期待をいだかせるが、その期待を上回る猛烈な銃撃戦が次々に展開されて、最後まで引っ張り回されるね」

磯野波平「1977年の監督主演作だけど、じつによく出来た娯楽サスペンス映画。イーストウッドが妙に力まないで作っているのがいいね」

サザエさん「それにしてもあの可愛らしいソンドラ・ロックちゃんを2度までも妊娠中絶させるとは、酷い奴。いくらいい映画を作っていても女性として、人間としてそれだけは許せないわ!」

ワカメ「よくわかんなんいけど、大賛成!」


   さる宮のさる皇女けふ嫁ぐらし与り知らぬ遠き世界で 蝶人
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内田吐夢監督の「真剣勝負」をみて

2014-10-04 11:00:15 | Weblog


bowyow cine-archives vol.705


 内田吐夢が描く中村錦之介の宮本武蔵の番外編にして遺作だが、きわめて異色の内容になっている。

このたびは鎖鎌の名人宍戸梅軒(三国連太郎)と対決するのだが、愛児を抱えた梅軒の妻(沖山秀子)も鎖鎌の達人であり、武蔵は夫婦連合軍を相手に苦戦を強いられる。

 そこで絶体絶命の危機に陥った武蔵は、そこでなんと彼らの愛児を奪って、これを人質にして一発逆転を図るというなりゆきになるのだが、丸谷才一は彼の「輝く日の宮」の挿話の中でこの映画のこのくだりを引用している。

 すなわち登場人物の知り合いのさる外国人に、「西洋の英雄はおのれの名誉を慮って女子供の人質をとってまで己の命を救おうとはしないが、恥も外聞もなくそこまでやってしまう武蔵は偉い」と褒めちぎらせているのだが、これってつまりは褒め殺しではないだろうか。

 巌流島の決闘をみても分かるように、この男は剣聖でも武士の鑑でもなく、勝つためにはどんな卑怯もやらかす殺人鬼なのである。


    雨空に一筋の光差し込めば一斉に鳴き始める蝉たち 蝶人
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アンジェイ・ワイダ監督の「カティンの森」をみて

2014-10-03 11:34:41 | Weblog


bowyow cine-archives vol.704

父親をカティンの森で赤軍に惨殺された男の怒りと悲しみと怨念が籠った1作なり。

1939年、世にも不思議な独ソ平和条約を締結した東西の鬼が、哀れな兎を頭と尻尾からそれぞれ食いちぎる。

第2次大戦で激突した独ソのどちらが悪いかといえば、それを全体主義対民主主義の教科書的価値観から眺めれば、当然異民族虐殺とファシズム、世界侵略に狂奔したナチス・ドイツが悪魔のように悪いということになるだろう。

ところがどっこい、ソ連だって悪行蛮行では負けてはいない。人民と正義の味方を自称したソ連が、武器を捨てて投降したポーランドの将校たちを皆殺しにし、それを天敵ヒトラーのせいにして居直り、あまつさえその大嘘を衛星国に従えたポーランドにも押しつけるとは、もうそれだけで思想的にも人間的にも国家的にもアウトである。

だからと言うてナチス・ドイツのアウシュビッツにおける天人ともに許されざる罪業がいささかでも軽減されることはないにしても、この時代に角突き合わせて相争っていた日米を含めた国家という存在は、己自分でももはや制御不可能な巨大な暴力装置、人間以下、動物以下の糞のようなリバイアサンになり果てていたのだろう。

そして大戦がいちおう終わっても、そのようなリバイアサンどもの角逐は表層の姿形だけを変えて延々とつづき、いまなお全世界を鼻息荒く闊歩しているのだ。


とある日とある街でさりげなくそれは起きるだろうあらゆる戦さがそうであったように 蝶人

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芋粥

2014-10-02 10:50:21 | Weblog


家族の肖像 その3~「これでも詩かよ」第102番

ある晴れた日に 第260回


寒い寒い冬の朝、
大きなお釜の中には、芋と粥がドッサリ。

まず母の愛子さんが、
祖父の小太郎さんの芋と粥とを掬い取る。

次に長男の私と次男と妹の芋粥の芋と粥を、
母の愛子さんが掬い取る。

次に愛子さんが、
父精三郎さんの芋と粥を掬い取る。

今度は祖母の静子さんが、
自分の芋と粥を掬い取る。

それから母の愛子さんが、
自分の芋と粥を掬い取る。

最後に住み込みの女中のお良さんが、
残り少ない芋とお焦げの粥を掬い取る。

寒い寒い冬の朝、
大きなお釜の中は、スッカラカン。


桜の樹のどこいらで鳴いているのか油蝉昔よくオシッコをひっかけられたが 蝶人

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