あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

河出版「日本文学全集03」を読んで

2016-02-13 10:15:11 | Weblog


照る日曇る日第843回



「竹取物語」の現代語訳を森見美山彦、「伊勢物語」を川上弘美、「堤中納言物語」を中島京子、「土左日記」を堀江敏幸、「更級日記」を江國香織がそれぞれ担当している。

森見の「竹取物語」と江國の「更級日記」は比較的オーソドックスな置き換えで素直に鑑賞できる。川上弘美の「伊勢物語」は切れ味鋭い散文詩のようで見事。

30段の出てくる「逢ふことは玉の緒ばかり思ほえてつらき心の長く見ゆらむ」を「一瞬 恨みは 永遠」とやっつけるなんて他の誰に出来るだろう。

中島京子は「堤中納言物語」の和歌すべてを現代短歌にほんやくするという離れ業を見せてくれる。

例えば、「おぼつかな憂き世そむくは誰とだに知らずながらも濡るる袖かな」を「なぜかしら 出家なさるはどなたかを知らぬながらももらい泣きする」と、鮮やかにまとめてしまう。 

パチパチ! これがどれほど大変か、君も一度やってみればよく分かるだろう。

が、堀江敏幸の土佐ならぬ「土左日記」は藤原定家による外題付きの写本に拠っていて、「土佐日記」のかな文字と紀貫之になりきった堀江の仮名漢字混淆文の「土左日記」とが入り混じっているので、読みにくいばかりか何が何やらわからぬ判じ物になっている。

 堀江は、貫之の内面を想像してその空想的な文章を前段に置き、本文は定家本の字面に似た文字列を並べ、そこに貫之が適宜自注を施していくという一種の「メタフクション」を目指したとかほざいているのだが、んなこたあ誰も頼んじゃあいないぜ。

 どうして森見選手のように「原文にない事柄はできるだけ補わない」やり方で淡々と現代語訳しなかったのだろう。それがいやなら本巻とは別の書物でそういう試みをすれば良かったし、こういう勝手な振る舞いをまかり通らせている編者池澤夏樹にも問題なしとしない。


     早大の学費学館半世紀絶叫はせず黙して偲ばむ 蝶人
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Les Petits Riens ~三十六年もひと昔

2016-02-12 15:11:00 | Weblog



蝶人五風十雨録第10回「一月三十日」の巻―そんな私のここだけの話 op.225


1981年1月30日 金曜
夕方サンフランシスコ発JAL001便にて成田着。重い荷物をポーターに運ばせタクシーで鎌倉まで。やれやれと一安心。都合半月の海外旅行なりき。

1982年1月30日 土曜
土曜出勤。ルック雑誌広告。アデンダの大きなポスターをどうやってコピーしていいか分からない。

1983年1月30日 日曜 夜に雨
久しぶりに眠る。自閉症児親の会の会合をキャンセル。相模原の会員のみに電話連絡。たまには休まないと身体がもたない。息子たちと遊ぶ。

1984年1月30日 月曜 はれ
キリンビール訪問。だいたいそんなものよね。ベイヒルゴルフ企画で富士ゼロックスの小林陽太郎氏の出演許可をもらう。

1985年1月30日 水曜
朝パリEHPよりゴダールが撮影を完了したと連絡あり。アニエスbでf500買い物。夜駐在所のスタッフと会食。サル・プレイエルにてラベック姉妹のコンサート。

1986年1月30日 木曜 はれ
三陽商会長谷川氏、博報堂、関谷氏、小学館中川氏、島本氏。夜神谷氏と串花へ。

1987年1月30日 金曜 はれ あたたか
8時半日比谷スカラ座にてデ・ニーロの「ミッション」。86年のカンヌでグランプリだというがやや意外。G.I.Tにて日経矢田氏と「大コクトー展」の打ち合わせ。

1988年1月30日 土曜 はれ 
ゆっくり起きてミラノへ発つ高市氏の自宅兼事務所に電話すれど終日繋がらず。「チャネラー」取材後小峰氏と飲む。松竹第2にてベルイマンの「シークレット・オブ・ウーマン」試写。女の生を重厚に描いた傑作。光と影が美しい。

1989年1月30日 月曜 
プレス伊藤君と話す。努力家なり。IN秋冬構想会。

1990年1月30日 火曜 くもり
大阪支店にて11時から午後7時まで店長会議。山口課長と新任営業担当のお披露目。京高フェア打ち合わせ。私は「この日、この空、この私」「体と金と男」という話をしたがあんまり説経臭のする演説は良くない。夜神戸のグリーンホテル泊。

1991年1月30日 水曜 
オレンジページ田坂さん来社。パスタ・パスタで昼食。「ゼロシティ」「アンポンで何が裁かれたか」をみる。

1992年1月30日 木曜 
本日より米国出張。ボストンは古い英国の面影を残す町でJFKの生家や寄宿舎もあった。学生街のカジュアルなショップを見学。夜はウエルカムパーテーがあった。

1993年1月30日 土曜 はれ
会社休みてCD三昧。妻は味噌作りや心身の疲労困憊で臥せっている。

1994年1月30日 日曜 はれ
ボードレールの人生はわずか46年であった。次男東京造形大の1次合格。

1995年1月30日 月曜 晴
第1回の全員宣伝会議。だいぶ人が減った。文春の「マルコポーロ」がアウシュビッツにガス室はなかったという記事で廃刊決定。愚かなり。

1996年1月30日 火曜 はれ
1792年に再建されたべネツィアのラ・フェニーチエ劇場が失火のために全焼。残念なことなり。仏シラク大統領、核実験の終了を声明。

1997年1月30日 木曜 晴
去年より今年の方が仕事は楽になった。次男は自動車免許を取るための合宿に出かける。

1998年1月30日 金曜 曇
会社は出来るだけサボるようにしている。午後新橋TCCにてMIUMIUの出る映画を観た。横浜SSDにてアルゲリッチ、マイスキーのベートーヴェンのチエロソナタ集買う。ムク夜鳴きす。

1999年1月30日 土曜 晴れたり曇ったり 寒
会社休む。妻は余命2、3か月と宣告された鶴見さんに「手当て」しに行く。ムクと神社散歩。米バークシャー社から1万4千円の引き落とし請求書来る。

2000年1月30日 日曜 晴 暖4月のごとし ○
母と4人で宇田さんチ経由図書館。梅はどこかで咲いているに違いない。午後五反野マンションの広告コピーを書いているとようやくフリーになった気分が出てきて嬉しい。

2001年1月30日 火曜 晴 ○
不調。元気なし。妻やや回復すれどパソコン具合悪し。

2002年1月30日 水曜 晴 
小泉首相が田中外相と野上次官を更迭。鈴木宗男は議運委員長を辞任。在任9ヶ月、ああいう奴でもいなくなると寂しいなあ。サライを買う。果たしてこれから仕事はあるのだろうか。

2003年1月30日 木曜 はれ
妻と義母、早朝より長野の親戚の葬儀に出かける。余、ようやく床上げ。ベルトリッチの「暗殺の森」みる。ドミニク・サンダは可哀想。トランティニアン良し。

2004年1月30日 金曜 晴 はれ
文化講義3連発。学生の新宿都庁レポートを読むとなかなか面白い。しかしコンテンポラリー講座は今日で最終回となった。困って執行さんに相談すると、織田学園というのを紹介しようといってくれる。まことに有難い恩人である。

2005年1月30日 日曜 はれ 暖
3人で 熊野神社へ行く。長男は岸本歯科で痛がったので、「痛かったら先生に痛いと言いなさい」というと「もう岸本歯科は行きません。チエ先生んちへ行きます」を連発。余波で箱根行きも中止となった。

2006年1月30日 月曜 晴 
文化最後から2番目の授業。浪間先生は週3日で7コマ持っていて、今度アンコールワットへ行くそうだ。羨ましい。新橋キムラヤでグルダのベートーヴェンソナタ全集。大船ユニクロでジャケットとパンツを買う。5千円なり。

2007年1月30日 火曜 晴 
布団干す。果樹園へ行き写真を撮る。文芸社の仕事が来ないので頭にくる。

2008年1月30日 水曜 晴 暖
妻は緑の会で北条時政邸へ行った。ずっとドイツ人が保存していたのに、次に買った日本人が売りに出したという。どこからも仕事の電話なし。

2009年1月30日 金曜 雨
終日雨降る。今日も文芸社は来なかった。やむを得ず山口氏の仕事を下請けでやることにす。孫請けなり。

2010年1月30日 土曜 晴 
妻と太刀洗を散歩。お向かいのお嫁さんと会う。息子を中学校に入れるためにまた戻ってきたそうだ。疲れた顔なりき。

2011年1月30日 日曜 晴 初雪降れり
中央公民館の鎌響室内楽演奏会へ行ったが満員札止めのため帰宅し、CDを聴く。ハイドンの五度聴き終わり春の雪

2012年1月30日 月曜 晴れ
文化最終講義。これでたぶん学校は終りになるはず。

2013年1月30日 水曜 晴
妻と味噌を作る。午後ヤマダ電機、図書館。長男の携帯を解約す。安岡章太郎92歳で死す。

2014年1月30日 木曜 曇りのち小雨
ひさしぶりに栄プールで9往復す。25m×2×9=450mなり。妻は350m。

2015年1月30日 金曜 雨
関東は雪になりしが、鎌倉は降らず。

2016年1月30日 土曜 冷雨
「金目」の取り扱いを誤って辞職した甘利経済再生相の後任が、同じ「金目」発言で防災相を去った石原ジュニアとは、自民党も人材払底なり。日銀の窮余の一策「マイナス金利」導入をみても明らかにアベノミクスは破綻している。中国の景気後退と原油安で頼みの株式市況も動揺恆ならず、民草の誰ひとり景気が良くなったとは思っていないのである。内政の不安を北朝鮮のミサイルや中国の海洋攻勢を安保危機にすり替え、憲法破壊をもくろむ安倍政治に明るい未来への展望はないだろう。
ようやく冷雨が上がったようだ。
それにしても、私はいつになったら今井義行さんのような物凄い詩を書けるのだろう? いや、「今井義行さんのような」ではない。今井義行さんのように、自分らしい、自分でなければ書けない詩を、だ。

       ハスキルのピアノに抱かれる冷雨哉 蝶人

 あの病院はお前の肩を「かしわ」のように刻みやがってと祖父言えり 蝶人

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朝の歌

2016-02-10 10:56:56 | Weblog


音楽千夜一夜 第357回&バガテル―そんな私のここだけの話 op.223


「朝の歌」といえば、まずはいまNHKの朝ドラでやっている「あさが来た」の主題歌でしょうか。

 AKB48が歌う「365日の紙飛行機」は、副田高行さんのお洒落でシックなタイトルデザインとあいまって、「あたしなんざあ、もうとりたてて夢も希望もないけれど、今日もまた朝が来てしまった。でもとにかく全国的にアサー!なんやから、谷岡ヤスジみたいになんとか元気にぐあんばっていこうかなあ」という気持ちにさせてくれるようです。

 AKB48は、皆さまがよくご存知のように、けっして歌が上手とはいえないやさぐれおねえちゃん集団なのですが、そのやさぐれ風の素人っぽさが、かえって日常の中の朝という時間の到来に、びっくらぽん、自然に寄り添っているような効果をもたらしているのかも知れませんね。

 ところで「朝の歌」ということで思い出すのは、私の大好きな詩人、中原中也の大好きな詩「朝の歌」です。注1)

  天井に 朱きいろいで
    戸の隙を 洩れ入る光、
  鄙びたる 軍樂の憶ひ
    手にてなす なにごともなし。

 という4行で始まるこのソネットは、

  ひろごりて たひらかの空、
    土手づたひ きえてゆくかな
  うつくしき さまざまの夢。

 という具合に嫋々たる余韻を残しつつ消えていくのですが、この最後の第4連の3行には、冒頭の代々木練兵場の軍樂の物憂い響きではなく、詩人の心の奥底でいつも鳴り響いていたうらがなしい滅びの歌が聞こえてくるようです。注2)

 さて私事ながら、私の生家は丹波の下駄屋でしたので、町内の他の家の子供たちと比べて音楽的な環境に恵まれていたとはお世辞にもいえませんでしたが、なぜか祖父が熱心なプロテスタントであったために、小学生の時から強制的に教会に通わせられました。

 私はそれが厭で厭でたまらず、その所為で却ってキリスト教に反発を覚えるようになり、現在に至るも無信仰無宗教の哀れな人間ですが、それでも教会で歌わせられる讃美歌の歌詞やオルガンの伴奏が、当時の田舎の少年の音楽心をまったく刺激しなかったと書けば嘘になるでしょう。

 例えば讃美歌23番の「来る朝毎に朝日と共に」の出だしを聴くと、さきほどの中原中也の詩の冒頭にも似た、おごそかにして心温まる気持ちに包まれたものでした。注3)

 後に成人した私が、LPレコードでモーツアルトのピアノ協奏曲第24番の第2楽章をはじめて聴いたとき、(それは確かクララ・ハスキルというルーマニア生まれの臈長けた女流ピアニストが、65歳で急死する直前に録音した曰くつきの演奏でしたが)、はしなくも思い出したのが、この讃美歌23番の奏楽でした。注4)

 楽器もメロディも調性も異なってはいるものの、暗闇から突如一筋の光が地上に現われて、私のようにどうしようもなく愚かな人間にもかすかな希望を与えてくれる、無理に言葉にすると、天使が私を私を見つめながらゆるやかに翼をはばたかせているような、そんな有難い気持ちにしてくれた楽の音でありました。


注1)中原中也の詩「朝の歌」は講談社文芸文庫吉田 煕生編「中原中也全詩歌集上巻」より引用。

注2)中原中也の芸術の記念碑的な出発点となったこのハイドンのピアノ曲を思わせる素晴らしい詩は、前掲書吉田 煕生の解説によれば、1926年(昭和元年)に初稿、1928年に定稿が完成し、諸井三郎の作曲で同年5月4日の音楽団体「スルヤ」第2回発表会で長井維理によって歌われた。なお本作が構想された当時、詩人の友人の下宿から陸軍練兵場(現在の代々木公園)の演習の「軍樂」が聞こえたことについては大岡昇平の証言がある。

注3)讃美歌23番(あるいは27番、あるいは210番)の「来る朝毎に朝日と共に」の第1番の歌詞は「来る朝毎に朝日と共に 神の光を心に受けて 愛の御旨を新たに悟る」。作詞は英国国教会司祭のジョン・キンブル、作詞は独教会音楽家のコンラート・コッヒャーと伝えられる。

注4)クララ・ハスキル独奏、イーゴリ・マルケヴィッチ指揮コンセール・ラムルー管弦楽団(2011年まで佐渡裕が首席指揮者を務めた)のモーツアルトのピアノ協奏曲24番は、録音は1960年と古いが、昔からフィリップス(最近デッカに買収された)の名曲の名演奏盤として夙に知られている。(20番も併録)


 真黒な写真を指差してほれここにオオウナギが写っていますと叫ぶ人 蝶人
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タヴィアーニ兄弟の映画2本をみる

2016-02-09 11:14:28 | Weblog


闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.980,981


○パオロ&ヴィットリオ・タヴィアーニ監督の「父/パードレ・パドローネ」をみて

貧しくて頑固者の父親と息子の相克を描く独特の語り口をもったイタリア映画である。

モザールのフルート協奏曲の第2楽章が鳴っているラジオを頑固親父が水槽に沈めてしまうと息子がその旋律を口笛で吹くシーンが印象的だった。

いろいろあったが最後息子は功なり遂げて言語学者になるが、こういう親子鷹風の映画は昔からかなり多い。




○パオロ&ヴィットリオ・タヴィアーニ監督の「サン・ロレンツォの夜」をみて


 第2次大戦終結まぢかのイタリアの田舎で、米軍の到来を待ち望むグループとムソリーニ支持の黒シャツのファシストたちが殺し合うシーンが真に迫って物凄い。

同じ村の住民同士が偶発戦で銃で撃ち合うのだが、そのあっけない殺人とあっけない死がいかにもそうであったろうと思われるリアリテイで淡々と描かれ、それゆえに圧倒される。

NYでの新生活を夢見ながら死んでいく少女の幻影も哀切極まりない。


   愛想笑いする力さえ今日は無く仏頂面で蹲ってる 蝶人

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お正月の歌~これでも詩かよ第166番

2016-02-08 11:28:03 | Weblog


ある晴れた日に 第360回


西暦二〇一六年一月二日
鎌倉の在に親戚十七名が勢ぞろい
そのうち五人が小さな子供

うららかな光のどけきお庭の中で
臼と杵とでぺったんぺったんお餅付き
大人も子供もお餅付き

つきたてお餅をちょんぎって
あんころ餅ときな粉が出来る
黒胡麻、胡桃、大根おろしもどんどん出来る

みんなで作ったいろんなお餅を
みんなで食べる どんどん食べる
おしいいなあ 美味いなあ

あっという間に、お腹がいっぱい
今度は近所の明王院にお参りだあ
それからみんなで、独楽を回そう

大きな独楽を、ひもで回そう
でも、なかなかうまく回らない
出来ない人には若い住職さんが親切に教えてくれます

そのうちに独楽回しに飽きてしまったユウちゃんが
昔ながらの井戸とポンプに目をつけて
レンちゃんと一緒にピストンを押しはじめた

ガッタン、ガッタン、ジャア、ジャア、ジャア
ガッタン、ガッタン、ジャア、ジャア、ジャア
たちまち流れる水、水、水 水、水、水

それ気付いたカナちゃんも
それに気付いたノンちゃん、アルちゃんも
子供全員ポンプに群がり

ガッタン、ガッタン、ジャア、ジャア、ジャア
ガッタン、ガッタン、ジャア、ジャア、ジャア
たちまち流れる水、水、水 水、水、水

しばらくするとユウちゃんが
「水、水、水屋でーす。水、水、水はいらんかねえ」
即席水売りになりました

またしばらくするとレンちゃんが、
「水屋さん、もっとこっちに流してよ
もうちょっとで地面に象さんができるぞう」

ガッタン、ガッタン、ジャア、ジャア、ジャア
ガッタン、ガッタン、ジャア、ジャア、ジャア
たちまち出来たよ、お水の象さん

いつの間にやらほかの子供たちも加わって
ワアワアキャアキャア正月早々出初め式
お気の毒に住職さんも逃げ出しちゃった

これではいかん、いかん、まずい、まずい
このままでは名跡明王院が水浸し。
ここらで水入りレフリーストップ

悪童五名と現場を離脱
峠をめざして出発だあ!
太刀洗方面へ転進だあ!

意気揚々と進軍してると
あれに見ゆるは次郎じゃないか
愛犬太郎を亡くしたおばさんが、四年前から飼っている

次郎は震災地からやってきた可愛い柴犬
名付け親の私を見つけて
声にはならない声でWangWang吠えてる

私が撫でると、子供も撫でる
次郎はうっとり目を閉じる
「次郎、あったかいなあ」とユウちゃんがいう

両手をペロペロ舐められたレンちゃんは
「マコトさん、次郎がぼくの手を舐めてくれたよ」
と、うれしそう あ、うれしそう

西暦二〇一六年一月二日の午後三時
お正月の陽が、ようやく傾く
どんどん どんどん 陽が落ちる

エイ エイ オオ! 
エイ エイ オオ!
それゆけガキんちょ太刀洗

エイ エイ オオ! 
エイ エイ オオ! 
朝夷奈峠の頂上へ


  あくる日もそのあくる日も夢を見る私は夢見るシャンソン人形 蝶人
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MEMORIES盤シューリヒト指揮の「モーツアルト交響曲・協奏曲集」を聴いて

2016-02-07 11:03:17 | Weblog


音楽千夜一夜 第356回

カール・シューリヒトがウイーンフィル、シュツットゥガルト放響、ドレスデンフィル、スイスイタリア語放響を振ったモザールの交響曲とピアノ協奏曲の5枚組です。

その特徴はすべてがライヴで収録されていることで、多くの指揮者と同様スタジオよりもライヴで燃えるシューリヒトがその本領を遺憾なく発揮しているようです。

交響曲40番はイタリアのルガーノ、41番はザルツブルク音楽祭での生演奏ですが、前者のスイス・イタリア放響が後者のウイーンフィルに勝るとも劣らぬ力演を繰り広げているのは特に注目されます。どちらもうわべを全く飾らないエネルギッシュな演奏で好感が持てる。ここには「むきだしのモザール」があります。

ピアノ協奏曲は9番、17番、19番、22番、27番の4種ですが、19番は同じシュツットゥガルト放響の劇伴で有名なクララ・ハスキルとカール・シーマンという聞いたこともない名前のピアニストによる2つの独奏の聴き比べを楽しむこともできます。

やたら独奏者のご意見を拝聴したり、楽員に卑屈な態度を示すいまどきの「民主的な」指揮者と違って、交響曲と同様シューリヒトは独奏者の機嫌伺いなど一切せずに自分のテンポ、自分の緩急でどんどんオケを引っ張りますが、マエストロはそれでいいのです。

  夏に買った10匹のメダカが12月に2匹になっていた生存率2割 蝶人
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ブライアン・デ・パルマ監督の「ファントム・オブ・パラダイス」をみて

2016-02-06 10:42:32 | Weblog


闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.979


1974年アメリカ製作の素晴らしいカルトムービーずら。

確かに「オペラの怪人」などの影響を受けた“突然ミュージカル映画”ではあるが、変態的監督のメガフォンの指揮下、怪優による相次ぐ怪演が、冒頭から末尾までこの世を遠く離れたキャメラアイが、我らを異様な時空の世界、異常なロッケンロールの世界へ連れ去ってゆく。

 こういう見ごたえのある映画を、デ・パルマまた作ってくれないかな。
 

 市の花に野菊を選ぶゆかしさよ神奈川県の大和しうるわし 蝶人
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「谷崎潤一郎全集第4巻」を読んで

2016-02-05 11:35:05 | Weblog


照る日曇る日第842回

 この巻では「鬼の面」「人魚の嘆き」「異端者の悲しみ」などちょうど夏目漱石が「明暗」を書きながら斃れた時期の作品を収めていますが、当たり前のことながら、「即天去私」などと言われた最晩年のそれと比べてなんとその作風が違うことよと驚かずにはいれれません。

 「人魚の嘆き」は泉鏡花の向こうを張ったような谷崎独特の幻想譚ですが、「鬼の面」とか「異端者の悲しみ」の世界はお得意の「悪魔主義」などとは全然異なります。

 これらは日本橋の貧しい町家の暗がりで呻吟していた著者の青春時代の暗くて絶望的な生活と内面をリアルに描いた一種の暗黒社会小説ないし波乱万丈のシュトルムウントドランク自伝でして、松原岩五郎の「最暗黒の東京」と社会主義的リアリズムを足して2で割ったような、おどろおどろ陰々滅滅の私小説なのです。

 ところがまったき非政治的小説であるにもかかわらず、これに内務省警保局が再三にわたってクレームをつけているから恐ろしい。後の「源氏物語」や「細雪」弾圧事件より遥か以前の話です。

 恐らくは参議大久保利通の考えで1876年明治9年に内務省の内局として誕生したこの組織は、全国に諜報ネットワークを敷いて労働運動や反政府運動を取り締まったのですが、この時期、谷崎のどうということのない作品についても徹底的にダメを出し、現行憲法が保障する表現の自由をふみにじり、恐るべき言論弾圧を行っていたのです。

 ちなみに「異端者の悲しみ」の「はしがき」を読むと、「此の原稿の発表に先だち繁雑なる公務の余暇にわざわざ検閲の労を取られ、加ふるに精細なる評論までも書き添えて下すつた永田警保局長の好意を、予は深く深く感謝するものである」と書かれているのですが、この時代に警察権力の触手がここまで及び、当時の若手流行作家が、ここまで無抵抗にその権威と圧制に奴隷のように屈服している姿には慄然たらざるをえません。

 美女のみならず権力者の前に額ずきて膝を突きたり谷崎潤一郎 蝶人

 
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小川洋子著「琥珀のまたたき」を読んで

2016-02-04 14:15:38 | Weblog


照る日曇る日第841回


恐ろしい悪夢と珠玉のファンタジーが表裏一体になった長い散文詩のような、不気味でリアルなグリムの童話のような、これまで誰も夢見ることがなかった比類なく美しい夢のような、実際に母親と3人のきょうだいの身の上にどこかの国で起こった人知れぬ悲劇のドキュメントのような、科学と芸術が結婚した披露宴のような、1枚のページをめくって閉じるその瞬間に姿を現す小さな小さな妖精のような、あらゆる物語の優しい母親のような、この世にありそうで、なさそうで、やっぱりありそうなお伽噺のような、読むほうはたやすいけれど語り手の方はすごく大変そうな、森の中を光と風と人間と動物たちが通り過ぎる、そんな小説でした。まる。

西暦は2016年平成は28年か また1年かけて新しき年号に馴染んでゆくべし 蝶人
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アンドリュー・バーグマン監督の「あなたに降る夢」をみて

2016-02-03 10:39:49 | Weblog


闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.978


 底ぬけのお人よし警官のニコラス・ケイジが400万ドルの宝くじに当たり、ひょんなことからその半額を「約束通り」贈呈したウエイトレスのブリジット・フォンダと結ばれる愛と奇跡の夢のような実話です。

 しかしコーヒー代のチップがなかったので、たまたま持っていた宝くじがもし当たったら半分分けするという約束を、妻の反対を押し切って本当に実行する人は偉いなあ。4万円ならともかく4億円の半分の2億円だよ。

 けたくその悪い妻をロージー・ペレスがいやらしく熱演している。


 いつの日か息子の個展を見たかったさらば「かまきん」見果てぬ夢よ 蝶人
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すべての言葉は通り過ぎてゆく 第31回

2016-02-02 11:06:38 | Weblog


西暦2016年睦月蝶人狂言畸語輯&バガテル―そんな私のここだけの話 op.222



時の経つのも忘れて往年の名画を鑑賞していたら突然遠い地方の震度3の地震速報が一度といわず二度も三度も流され、もはや映画どころの騒ぎではなくなってリモコンでスイッチを切ってからもどこへも持って行き場のない腹立たしさにうち震える。12/25

どんな映画も芝居もご都合主義で作られているが、官邸が自作自演する安倍蚤糞政治ほど手前味噌のものはあるまい。12/27

此の世では「万物が流転する」のであって、「最終的かつ不可逆的」なるものは何ひとつ存在しない。

セリーヌ・ディオンが「愛の賛歌」を唄っていたが、はじめから終りまで音程が狂っていて、半音ほどずり下がっていたが、彼女って音痴なのかしら。

ローラとか森泉がテレビで喋っているのを見聴きしていると、この人たちは莫迦ではないかと思う時があるのだが、これは莫迦を装っているのか、それともやっぱりほんとの莫迦なのか、いったいどっちなのだろう?12/30

このたび北朝鮮が「水爆」を爆発させたのは、米国などから「自主権」を守るためだ、と主張している。では我が国は、なにを打ち上げてそれを獲得するのか。1/7

オムレツを作るためにはまず卵を割らなければならないとイヴ・シャンピに言われたので、岸恵子は「おとうと」の撮影が終わるや否やパリに飛んで行ったそうだが、うまく口説いたものだ。

「これは僕の蝶だ。僕のオオイチモンジだ」と田淵行雄は叫んでいます。福岡伸一

テレ朝「報ステ」の古舘伊知郎に続く、NHKの「クロ現」の国谷裕子キャスター、TBS「NEWS23」の岸井アンカー、の降板こそ、安倍蚤糞による露骨な言論弾圧に他ならない。1/8

山田美也子の案内でなかったから聴いてみたが、山田和樹指揮N響、いったいどこがいいいのかさっぱり分からん。この番組ではどの解説者も、どんな下らぬ演奏でも、いつも絶賛する。恥を知れ!1/9

NHK-FMの「リサイタル・ノヴァ」、いつもながら本田聖嗣の司会が煩い。新しい年になったから「弾き語りフォーユー」の小原孝と一緒に消えてもらいたいのだが。あ、その前に籾井、お前だよ、お前。1/10

ピエール・ブーレーズ死す90歳。実演に接したことはないが、いつも鋭いメスで患者の急所をズバズバ切開する外科医のような棒で峻厳で冷徹な音楽をやっていたが、本人はあれで楽しかったんだろうか。自作自演を聴いても私とは遂に無縁の音を奏でている「宙外の人」だった。1/11

どうしても安倍蚤糞をやっつけるんだという強い覚悟と冷静な戦略が無い限り、民主党をはじめとする野党は、夏の参院選に勝利できないだろう。1/12

鎌倉京都を新幹線で日帰りすると大人1人27160円もするんだ。びっくりぽん。高えなあ。15000円くらいかと思っていたよ。まるで浦島太郎だなあ。 1/13

現代短歌の改革は、1987年俵万智の「サラダ記念日」よりも一足早く、1969年の大橋巨泉の「みじかびの きゃぷりてぃとれば すぎちょびれ すぎかきすらの はっぱふみふみ」からはじまった。1/13

SMAPの所属事務所がどうなろうが、私の知ったことではないが、そんなことでラアラアラアラ目の色を変えて朝から晩まで騒げる人が、ある意味でじつに羨ましい。1/14

今朝の「天声人語」に敬愛する歌人奥村晃作氏の代表歌が紹介されていた。
「次々に走り過ぎ行く自動車の運転する人みな前を向く」
アメリカの画家エドワード・ホッパーの代表作「ナイト・ホークス」にも通底する現代人の孤独と沈鬱が胸をうつ。1/15

おのが仕合わせの多くは周囲の人々の有形無形、精神的肉体的な献身と犠牲によって形作られていることを思うべきである。1/18

明治生まれの人が一人でも生きているうちは、明治時代は死滅していない。1/19

民主党の岡田選手が、左右両サイドの野党に対して本当の「政治力」を発揮して反自公統一戦線を結成しないかぎり、今度の参院選で野党は勝利できないだろう。1/20

「一点突破、全面展開」はかつて私たちの行き方生の作法であったが、いまやそれは悪辣非道な安倍蚤糞にとって代わられている。全国の学友諸君、いまこそ「一点突破、全面展開」を奪還せよ!なんちゃって1/21

エットーレ・スコラ84にしてローマの病院で死す。1930年代のムソリーニの時代のファシズムの恐怖を描いた「特別な一日」を肌に粟が生じるようなゾクリとした感覚と共思い出した。きっとあれが、もうすぐこの国にやってくるのだろう。1/21

世界中で激化する富の偏在。選ばれた62人の金持ちが、36億人の貧乏人と同じ額のお金を持っている。1/22

政局が動揺して野党がいき巻いているが、なんのことはないそれは「週刊文春」といういち週刊誌のスクープのせいであって、野党の力ではさらさらないことを肝に銘じるべきだ。1/24

10年振りに日本人の相撲取りが優勝したのは、じつにめでたい。次場所は琴奨菊の大活躍をまざまざと眼に焼き付けた万年駄目大関稀勢の里の奮起に期待したい。1/25

「地球に優しく」などとほざいていた連中も、3・11以後は次第にうなだれて口をつぐむようになり、いまでは環境もエコも忘れて白痴のように唄い踊っているようだ。1/26

久しぶりに「矜持」という言葉を聞いた。ほとんどの政治家にはそれがない。1/29

虎屋の羊羹の隣に入っていた50万円は「これは何かのお間違いでは?」と糺して受け取らない、すぐ返す、のが民草の「適正な」流儀 1/30

1月27日の夜、NHKのFMで聴いたセル&クリーブランド管弦楽団のシューベルトの最後の交響曲は前代未聞の素晴らしい演奏だった。1965年アムステルダムコンセルトヘボウでのライブだったが、あの稀代の難曲をかくも見事に振りおおせるとは!切に再放送を望む。1/30

ジャック・リベット、パリに死す。87歳。最後の短編映画にはジェーン・バーキンが出演したらしいが、これでヌーヴェルヴァーグの生き残りはゴダールくらいになった。1/31


とらやのやうかんのとなりにはいつていた50まんえんはうけとらないのがてきせいなしより 蝶人

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なにゆえに第23回~西暦2016年睦月蝶人花鳥風月狂歌三昧

2016-02-01 12:38:09 | Weblog


ある晴れた日に 第359回


なにゆえに急にエアコンが停まってしまうしばらくは自分を暖めているらし

なにゆえに子供はあんなに元気に走って騒ぐまだ誰も挫折を知らない

なにゆえに老人はとぼとぼ歩いてる心ゆくまで悔ゆるため

なにゆえに「最終的に不可逆的」んなもん地上に存在しないぞ

なにゆえにおいらは詩を書きすすめることができる見えぬ定型と聴こえぬリズムに導かれて

なにゆえに朝から晩まで水爆水爆マスコミは「大事件」ならなんでも大好き

なにゆえに北朝鮮はひとりで暴れる世界中の誰もがソッポを向くから

なにゆえに延々芸能人の孫自慢を聞かされる芸能人なら芸を見せろよ

なにゆえにリーマンはいちばんおいしい時間を切り売りするあんたも資本の奴隷ゆえ

なにゆえに自公はポスターを張り巡らせる参院選で独裁政権を確立するべく

なにゆえに施設長は生産性向上を目標にするうちの息子はついていけない

なにゆえに夫婦京都往復で5万4千円もする貧乏人にはちと高すぎるよ

なにゆえにまた再びのカセット人気個体は系統発生を遡る

なにゆえに少し歩けばヨタヨタとなるそろそろ年貢の納め時かや

なにゆえに式の着物にあれこれ拘る京都の人は儀礼に煩い

なにゆえに天気予報どおりに雪が降るたまには予報士の予報が当たるので

なにゆえにお前は偉そうに答弁する自分が相当偉いと思っているから
なにゆえにいち唄うたいグループが自由に解散できないこの国では誰も独立できない

なにゆえに同じCDを何枚も買う日に日に脳味噌が腐っていくので

なにゆえに62人の金持ちが36億人の貧乏人と同じお金を持っている世の中ますます不公平なので

なにゆえに琴奨菊は豊ノ島に負けたのかまた白鵬が高笑いする

なにゆえに石井十次に言及する安倍ほど児童福祉にそぐわない男はいない

なにゆえにオオルリの仔は巣ごと盗まれたのか台湾栗鼠ならぬ人間の仕業

なにゆえに絶滅危惧種などと澄ましこんでいる追い込んだのは自分なのに

なにゆえに微かな恐怖が湧いてくるプラットフォームの先頭に立つとき

なにゆえにわが弟の額に石を投げしやたちまち鮮血滴り落ちしが

なにゆえにまつのちゃんの顔に雪つぶてを投げしや当たりしつぶてに復讐せんとて

なにゆえに耕君は生乾きのタオルから取り入れる独自の美学独自の秩序


なにゆえにベンチャーズは便々と弾いているあれよりほかにやることないので 蝶人
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