病理診断科の部屋で仕事をしていたら、癌の予後についての話になった。病理医が癌の話をすることは珍しいことでは無い、というか癌の病理診断をしながら話しているので、なんだかおかしな言い方だが、この話題を考えるきっかけになったので、どんな状況でこんなことになったかを覚えておきたいので書いておく。
で、その時、30代の若い先生が、「膵癌のように好発年齢が比較的若くて予後の悪い癌はつらいですね。」と言った。膵癌は皮膚癌のような高齢者に多い癌にくらべ若い人に多く、まだまだ働き盛りの50代で発見されることが少なくない。さらに、発見時は進行していることが多く、予後は悪い。
そもそも癌という病気はほとんどが50歳過ぎで生じる。子宮頸癌や一部の胃がんのようにもっと若い年齢で発症する癌もあるけど、多くの癌は加齢にしたがって発症率が上がる。子供に大腸癌や肺癌が生じることはほとんどない。発症率が高くなるという印象を私が持つのが50歳を過ぎてからだ。寿命が短かった頃、というのをどの程度と考えるかはいろいろあるけど、わかりやすいのは織田信長が残したとされる”人生50年”という言葉。織田信長はたった50年で、(ほぼ)天下布武を成し遂げたのだからすごい。それはさておき、人間にはもともと50年程度の命しか与えられていなくて、そのあとは、細胞があちこち変調をきたして癌が生じるようになっているように思う。そうであれば、その50年を過ぎたらあとの命は神様から与えられたおまけの様なものだ。
(明日に続く)
命は大事に