(第14話からの続き)
私が巻き込まれた駅ナカ通り魔事件の被害者は全員、IT関連企業の社員もしくはその家族だった。そしてそれらはすべて国内企業。通り魔は、通り魔などではなく、計画的に殺人を行ったということだ。
国産プラットフォーマー”ヘヴン”を開発し、海外の巨大プラットフォーマーに対して、巻き返しを図ろうとしていることに対して、海外プラットフォーマーは刺客を放った。未遂には終わったが、それは警告だったのかもしれない。
海外の巨大プラットフォーマーがヘヴンに対してそれほどの脅威を感じていたというのは驚きではあるが、この国の技術力を侮っては最後の大戦以降の二の舞となってしまう。脅威は芽のうちに摘んでしまうに限る。
この先、どのような戦いが繰り広げられていくのだろうか。
現代社会では、目の前で起こっていることよりも、目の前のスクリーンに映っていることの方が真実となる。大雨が降っていても、降水確率ゼロ、といわれたらのこのこ出て行ってしまう人がいてもおかしくない。何を信じて何を疑っていいか、個人レベルでの判断は難しくなってきている。個人間で情報交換をしていたとしても、そのコミュニティが閉鎖的であったり、全員の情報レベルが貧弱であったりしたらそれだけでもコントロールは難しくなる。さらには、それまで信頼できると思っていたニュースソースが、誤ったニュースソースを摑まされていたら、そのガセネタで社会は混乱に陥る。
商売にしてみても、情報の価値は計り知れない。10万人程度の規模の人間の購買活動を把握し、その80%程度をコントロールできたら相当な収益を上げることができる。国内であれば、1日に、一人1000円を使わせたら、それだけで8億だ。年間3000億近くになる。これをアジア圏で行ったら、数兆円が動く。
プラットフォーマーたちは、少しでも多くの個人情報を手に入れ、購買力を分析し、売り込む。通り魔事件に巻き込まれそうになった私は、ただ単にヘヴン守られなくてはいけない顧客の一人だったのだ。
今、街中で起こっている事件の裏には、プラットフォーマーたちの単なる小競り合いがあるのかもしれない。
FIN