私の勤務先の大学病院は初期研修医を多く受け入れている。多ければいいというわけではないが、若い人が多いというのは悪いことではない。プログラムの中には病理診断科へのローテートも含まれている。私なんぞでも、未だに苦しんでいる病理診断のことを短期間で学ぶことは難しいのだが、CPCレポートという病理解剖についての報告書をまとめてもらうことを通じて、病理学のこと、医学のことを学んで欲しいと思う。
そんなある日、助教(以前の助手、30代前半)の先生が病理診断科の部屋の中をウロウロしている。どうしたのかと聞いたら、集合時間になったのに研修医が現れないという。5分ほど遅れて、研修医が現れた。反省するそぶりなど全くなくて、助教の先生を探そうともせず、部屋の中で突っ立っている。
「うーん、ここで注意していいものか・・・」
コロ健、実際の生活でもこのブログに書いてあるような四角四面のことを人に言ってきたが、この職場に来てまだ半年。自分ではそんなこと思っていないけど、強面の体育会系に見えるらしい。声も大きいので、女性医師はビビるかもしれない。でも彼らはもうすでに医者だし、何より学生と違って給料をもらっている立場でもある。
「先生たち、集合時間はもうとっくに過ぎているみたいだけど、それじゃあダメでしょ。それとも、病理は患者がいないから少々遅れてもいいと思っているの?病理だからって、舐めるんじゃないよ。」
あー、言い始めてしまった。せめて、追い詰めないようにしないといけない。
「先生たちの、この先のずーっとある人生の中で、時間を守るっていうことはすごく大事だよ。患者さんがいるとかいないとか、そういうこととは関係なく、時間にはpunchtual(時間を守る)でなくてはダメだよ。」
色々細かいこと、というか時間を守らなくてはいけないことの理由を言いたかったのだけど、頭に血が上ってしまって上手く話せない。中途半端だとは思ったけど、話を切り上げることにして、「じゃあ、あとは、よろしく。」と助教の先生を呼んで引き継いだ。
私が彼らに伝えたかったことは、時間を守ることは、他人から信用されるには最も大事なことであり、時間を守るべき相手は患者さんはもちろん、看護師とか検査技師、薬剤師などコメディカルの人も同様だということ。むしろ、自分がその中心であって欲しいとすら思う。将来、人を束ねる立場になった時、自分が時間に対してルーズであったら、下の人たちもルーズになる。少しずつの無駄が、大きな無駄に繋がってしまうことを理解しておくべきだ。時間の重みに職種の違いはない。他職種間の会議があるとき、医者だから遅刻していいという話はない。
そんなこと言っても、わかってくれないだろうとは思っていたが、ここ数日は根を詰めて頑張っているらしい。集合時間前にはちゃんと集まっているらしく、別のスタッフドクターが驚いていた。時間に対してルーズであったことに気がついて、注意されたことを悔しかったとでも思ってくれたら、いい医者を育てる手伝いができたと思えて私は嬉しい。
今日のCPCレポートでのプレゼンはまずまず。病理は難しいけれど、君たちが診る病気を目で見える形にしているものだから頑張ってよく勉強してください。
”仕事”をしているということを忘れずに
時間を守るは基本のきです。
よくぞ言って下さった❢❢❣
今日が病理研修の最終日でしたが、どちらも初日よりはずいぶん良くなっていました。