こうの史代の連載マンガ『この世界の片隅に』が完結します。
週刊マンガ雑誌「漫画アクション」連載。
「しんぶん赤旗日曜版」2008年2月15日付の『ひと』欄に紹介されています。
こうの史代 戦争のある暮らし想像して
2007年に映画化された漫画『夕凪(ゆうなぎ)の街桜の国』(04年)で、原爆のつめ跡を今につながる話として描いた、こうのさん。今度は2年がかりで戦時下の物語の連載を終えました。
前作では伝えきれなかった思いがあふれ、続いて取り組んだのが、昭和19~20年の庶民の日常を描いた『この世界の片隅に』です。
舞台は、広島県呉市。主人公すずは昭和19年、19歳で嫁ぎ、主婦業にいそしみます。
配給、隣組、闇市、そして度重なる空襲…。
すずの愛する人やものも次第に奪われてゆき-。
「広島出身の私ですが、原爆以外の戦災がどんなものであったのかを知りたくて。それで描こうと思いました」
呉市の現地はもちろん、国会図書館に通い、当時の生活を丹念にたどりました。
「歴史ものを描ける自信はなかったんですが、やれば何とかなるもんだ」と笑います。
「すずの日常を通しうて“戦争がある暮らし”はどんなものか、私たちのお父さん、お母さん、おじいさんやおばあさんがどんなふうにこの時代を過ごしたのかを少しでも想像してもらえれば…」
各巻末に「間違っていたら教えて下さい 今のうちに」と記しています。
これを読みながら体験者にも話をしてもらえたら、心の中にあるものを私たちと共有できれば、との願いを込めました。
漫画を描き始めたのは中学生のとき。「漫画を買っていると、お小遣いが足りなくなる。で、自分で描けば、自分で読めて、しかも自分の好きな話に描ける」と。
高校時代は美術部で油絵に熱中しました。
そのときの先生の言葉、「細部を丁寧に描け」「足で歩いて描きたいものを探せ」を今も指針にしています。
どの作品でも、普通の人々、普通の生活にこだわってきました。
「頭が良くて美人で、しかも一世一代の恋をして…みたいな話は感情移入しづらい。そんな人は周りにいないし、もちろん自分もそうではない(笑い)」
実は、何度も漫画家をやめようと思っていました。重いテーマの取材にも疲れました。
今回の連載を終えた今-。「描くことは、どんなにつらくても、息をして、ご飯を食べて、寝て、と同じでやめられないと気付きました。こうなったら、この先何があっても描き続けるのだろうな、と思います」
君塚陽子記者
撮影:野間あきら記者
【上巻表紙】
【中巻表紙】
【番外編 冬の記憶(昭和9年1月)より】
こうの・ふみよ=1968年広島市生まれ。1995年に『街角花だより』でデビュー。『夕凪の街桜の国』で第8何文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞、第9回手塚治虫文化賞新生賞を受賞。同作品は、韓国語や英語など10力国語に翻訳され、海外でも出版・ほかの著作に『長い道』『ぴっぴら帳(全2巻)』『こっこさん』など。『この世界の片隅に』上・中巻は発売中。下巻は4月28日発売予定
週刊マンガ雑誌「漫画アクション」連載。
「しんぶん赤旗日曜版」2008年2月15日付の『ひと』欄に紹介されています。
こうの史代 戦争のある暮らし想像して
2007年に映画化された漫画『夕凪(ゆうなぎ)の街桜の国』(04年)で、原爆のつめ跡を今につながる話として描いた、こうのさん。今度は2年がかりで戦時下の物語の連載を終えました。
前作では伝えきれなかった思いがあふれ、続いて取り組んだのが、昭和19~20年の庶民の日常を描いた『この世界の片隅に』です。
舞台は、広島県呉市。主人公すずは昭和19年、19歳で嫁ぎ、主婦業にいそしみます。
配給、隣組、闇市、そして度重なる空襲…。
すずの愛する人やものも次第に奪われてゆき-。
「広島出身の私ですが、原爆以外の戦災がどんなものであったのかを知りたくて。それで描こうと思いました」
呉市の現地はもちろん、国会図書館に通い、当時の生活を丹念にたどりました。
「歴史ものを描ける自信はなかったんですが、やれば何とかなるもんだ」と笑います。
「すずの日常を通しうて“戦争がある暮らし”はどんなものか、私たちのお父さん、お母さん、おじいさんやおばあさんがどんなふうにこの時代を過ごしたのかを少しでも想像してもらえれば…」
各巻末に「間違っていたら教えて下さい 今のうちに」と記しています。
これを読みながら体験者にも話をしてもらえたら、心の中にあるものを私たちと共有できれば、との願いを込めました。
漫画を描き始めたのは中学生のとき。「漫画を買っていると、お小遣いが足りなくなる。で、自分で描けば、自分で読めて、しかも自分の好きな話に描ける」と。
高校時代は美術部で油絵に熱中しました。
そのときの先生の言葉、「細部を丁寧に描け」「足で歩いて描きたいものを探せ」を今も指針にしています。
どの作品でも、普通の人々、普通の生活にこだわってきました。
「頭が良くて美人で、しかも一世一代の恋をして…みたいな話は感情移入しづらい。そんな人は周りにいないし、もちろん自分もそうではない(笑い)」
実は、何度も漫画家をやめようと思っていました。重いテーマの取材にも疲れました。
今回の連載を終えた今-。「描くことは、どんなにつらくても、息をして、ご飯を食べて、寝て、と同じでやめられないと気付きました。こうなったら、この先何があっても描き続けるのだろうな、と思います」
君塚陽子記者
撮影:野間あきら記者
【上巻表紙】
【中巻表紙】
【番外編 冬の記憶(昭和9年1月)より】
こうの・ふみよ=1968年広島市生まれ。1995年に『街角花だより』でデビュー。『夕凪の街桜の国』で第8何文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞、第9回手塚治虫文化賞新生賞を受賞。同作品は、韓国語や英語など10力国語に翻訳され、海外でも出版・ほかの著作に『長い道』『ぴっぴら帳(全2巻)』『こっこさん』など。『この世界の片隅に』上・中巻は発売中。下巻は4月28日発売予定