きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

東日本大震災と日本経済の課題⑨・⑩

2011-04-23 23:26:23 | 震災・災害・復興・地震&災害対策など
東日本大震災と日本経済の課題⑨・⑩

4月23日の夜、NHKスペシャルで、「被災地は訴える ~復興への青写真~」と題して、大震災からまもなく1か月半。壊滅的被害から立ち直り、復興につなげるため、何をすべきなのか。自治体代表と政府の復興構想会議委員が緊急討論し、復興への青写真を探る方向性について、復興構想会議のメンバーと被災地の首長3人をオンラインで結んで生番組で討論されました。
その内容は、今回紹介する提言とかみ合うものがありました。


●復興の主体は地元の要望にそって、地元主導で行う。
●復興に際しては、ガレキ処理、仮設住宅などは、地元の雇用確保のため地元企業担ってもらう。
●被災地は有数の農業・漁業地域。この復興を国で支援していかないといけない。
●街づくりの再建も、高台に移転するなど構想は地元住民の同意を得て。
●漁港などの集約もありうると思うが、それも地元漁民の同意の上で。
●福島第一原発の事故で避難を強いられている事。東日本大震災の現在の避難民の半分以上は福島第一原発関連だという事実を知ってほしい。
●20キロ圏内といっても、場所によっては0.5マイクロシーベルト以下のところもある。具体的に汚染地図を示してほしい。
●被災者は、いわゆる「おもらい」をしたいんじゃない。
●被災業者が、事業を再開するためには、負債を負ったマイナスからじゃなく、せめてゼロからの出発が必要だ。
●財源は「復興税」などが言われているが、被災者は全国に散らばっているわけで、被災者を選んで還付する事は不可能。いわゆる付加価値税的な税金でなくって、財力のある方が自主的に拠出する方がいいと思う。
などなど・・・




大企業への臨時増税も ⑨
暮らしと経済研究室主宰 山家悠紀夫さん


 東日本大震災による物的な被害だけで、内閣府は、被害額を最大25兆円と試算しています。役所など公共建築、学校や医療機関、家屋などの生活基盤、漁業や農業、商工業、観光産業などの産業基盤、さらには、鉄道、空港、港湾などを復興していく必要があります。この復興資金を誰が負担し、どうやって調達するかという問題があります。やはりこれは、政府が主体となって負担することが必要です。

予算見直し必要
 では、どう財源を確保すればいいのでしょうか。まず、2011年度の予算を組み替えることです。
 不要の公共事業をやめるべきです。ダムや道路、港湾など大型の公共事業で、予算に計上されているものがたくさんあります。被災地復興を優先するという点から、不急の工事も先送りすべきでしょう。加えて、5兆円近くある軍事関係の予算を削るべきです。高速道路の無料化も考え直す必要があるでしょう。
 一方、歳入については、法人税減税をやめるべきです。日本経団連すら、減税措置の見直しも結構だといっています。もともと必要のないものだったのですね。また、証券優遇税制措置は延長される予定になっていますが、この措置をやめれば財源が生まれます。

復興に内部留保
 もちろん、それだけでは、復興財源は足りないでしょう。国債を発行することも必要になります。現在の金融市場の状況でいえば、新たに国債を発行しても市場で売れると思います。しかし、国債残高は巨額に達していますから、安全策として、従来の国債とは別枠で大企業を引き受け手として「震災復興国債」を発行する手法があります。そうすれば、金融市場に悪影響を与えなくて済むでしょう。
 現在、大企業の内部留保は200兆円を超えています。その多くが証券投資に回り、株式や外国債券などで運用されています。それを震災復興国債に振り替えてもらえばいいわけです。
 復興資金の調達のために発行する国債を、日銀に直接引き受けをさせればいいという考え方があります。しかし、この方法は取るべきではありません。インフレやバブルの発生など、将来に大きな禍根を残すことになります。
 震災復興国債といっても、国の借金であり、いずれ返さなければならないものです。借金だけではなく、増税も必要になると思います。負担能力のある大企業に対し、例えば5年間、臨時で法人税を10%増税することなどが考えられます。所得税についても、高額所得者の負担が軽くなっていますから、最高税率を50~60%にするといったことが考えられます。
 消費税を上げるべきだという声もありますが、これは一番避けなければならないことです。被災地だけ消費税増税をしないというわけにはいかず、被災者は耐えられません。日本全体としても、家計の所得は落ちていますから、消費税を増税すればいっそう景気が悪くなり、生活も苦しくなります。重要なことは、貧しい人々への新たな負担増はしてはいけないということです。
(聞き手 中川亮)(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2011年4月22日付


農家の経営再建全力で ⑩
愛媛大学教授 村田武さん


 東日本大震災での大津波被害に加え、原子力発電所の事故による放射能被害は、農業や漁業にきわめて深刻な打撃を与えています。津波で農業機械なども流され、農地は海水をかぶり、がれきやヘドロで汚染されています。再建するには、巨額の資金と数年の時間が必要になるでしょう。

財界からの主張
 復興について、さまざまな議論がなされています。財界からは東北全体を「復興特区」にしようという声があります。日本経団連の米倉弘昌会長は「規制緩和で大規模農地を運営する農業法人の設立などを柔軟に認められるようにすれば、国内有数の強みを持つこの地域の農業の再建が早まるはずだ」(「毎日」4月8日付)として、大胆な規制緩和や税制優遇で経済振興を図るということを主張しています。
 これは「復興」を名目に農業法人づくりと農地集積を強制するというものです。たとえ、経営を大規模化しても、効率性が追求され地元の人たち全員を雇うことなどできません。やはり、家族経営型の農業こそ、地元の人たちが望んでいるものだと思います。その希望を「復興特区」は壊してしまいます。大企業を優遇し、農地から被災農家を追い出す、まさに「現代エンクロージャー」(企業による囲い込み)です。
 被災者の力を取り戻すという点では、コミュニティー(地域社会)を再建することがとても重要な課題です。農業再建の自発的な力を引き出し、みんなで団結し、要求を実現していく基盤になります。

地元こそ仕事を
 大津波による浸水で被害を受けた農地の復旧事業についても、ゼネコンなどに回すのではなく、最優先で地元の人たちに仕事をつくるべきです。そのためには、地元の中小建設業者へ助成制度、重機のリースなどが必要です。震災で失われた農業機械・施設への再投資に対し、抜本的助成、リース制度の充実によって支援を強めることです。
 農業振興のために、米価を支える価格保証、価格とコストとの差を補てんする所得保障が必要です。たくさんつくれば収入が増える仕組みをつくることで、農家の人たちも意欲をもって作付けができます。
 不況克服のためにも、生鮮食料品の消費税を当面廃止とすべきです。復興税などといって消費税を上げるのは、景気の押し下げ要因でしかありません。財源は、使いきれないお金をため込んでいる大企業を中心に負担してもらうことで調達すべきです。
 日本の農漁業生産が大打撃を受けている一方で、環太平洋連携協定(TPP)への参加を進めようという動きもあります。例外なき関税撤廃で100%の自由貿易を進めるTPPは、農業の再建の道をふさぐもので、もってのほかです。
 政府は農家の経営再建に全力を挙げてとりかかるべきです。TPP反対の運動を全国規模に広げるのと同時に、「復興」を口実にした企業優遇・農家追い出しの「農業改革」とのたたかいが必要です。
(聞き手 中川亮)(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2011年4月23日付