きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

東日本大震災と日本経済の課題①・②

2011-04-15 21:43:40 | 震災・災害・復興・地震&災害対策など
東日本大震災と日本経済の課題

東日本大震災で、日本有数の農業と漁業の地域が被災を受け、日本大手の自動車メーカーや電機メーカーの部品工場が被災を受けた。
地元住民の住宅などの生活環境、地域経済も壊滅的な被災を受けた。
その再建は国家的なプロジェクトとなる。

その再建にあたって、日本経済に問われることを識者に聞いた。
「しんぶん赤旗」の企画である。追って紹介する。



地方経済再生が要点
東京工科大学教授 工藤昌宏さん

 地震と津波は被災地に壊滅的打撃を与えました。人々の生活も生存基盤さえも破壊しました。被災者は家族を、友人を、そして隣人の生命を奪われ、職場も奪われました。家やその他の財産も失われてしまいました。農業も漁業も壊滅的打撃を受けています。
 道路、空港、鉄道、港湾などの輸送網は寸断され、自動車などの移動手段も奪われました。電気、ガス、水道、病院、学校も壊滅的打撃を受け、日常生活はもとより、医療・介護を必要とする高齢者が生活することが困難になっています。学校が破壊されたために子どもたちの教育も困難に直面しています。
 被災者の心の傷は長く残り、震災からの回復には長い時間がかかるでしょう。生活も困窮を長期に余儀なくされることは明らかです。その救済が最優先されなくてはなりません。

生活基盤復興を
 そのために、緊急的救済に総力をあげ、生活再建として防災計画の見直しに基づいた住居や職の確保をしなくてはなりません。また、壊滅的打撃を受けた生活基盤の核、とりわけ農業、漁業、製造業の復興が重要です。
 放射能被害を受けた農業の再生には多くの時間がかかるでしょう。農業、漁業の補償ならびに再建計画を早急に立ち上げ、その具体策を策定する、こういったことに国は総力をあげる必要があります。しかも、それは急いで実行されなければなりません。
被災地方の行政機能が破壊されているので、この復旧には国が前面に立たなければなりません。
 復興財源確保のためには、法人税減税や証券優遇税制の延長をまずやめるべきです。米軍への「思いやり予算」の中止も必要です。そして政党助成金の撤廃をすぐに決めることです。復興のためと称して、被災者まで容赦なく負担を強制する消費税のような大衆課税をしてはなりません。応能負担原則にもとづいて高額所得者に椙応負担を求めるべきです。

日本全体に影響
 東北地方は、日本の食料供給を支えてきました。そればかりでなく、自動車、電機など、日本の基幹産業を支える部晶、素材の供給基地となっています。これが打撃を受けたために、日本全体の生産活動を停滞させています。東北地方の経済停滞は、地方の金融機関の経営悪化をもたらし、日本経済を長期に停滞させる可能性があります。
 今回の大震災は、地域経済の停滞が地域にとどまらず、日本経済全体に打撃を与えるという構造を浮き彫りにしました。このことは逆に、地方経済の活性化が、長期の停滞に苦しむ日本経済の再生にとっていかに重要であるかを示しています。地方経済の再生こそ日本経済再生にとって不可欠だということです。大都市や大企業、富裕層を偏重する経済運営ではなく、地方経済の再生を柱にした地域循環型の経済運営こそ、政府の経済運営の柱にしなければなりません。日本経済再生の要点はそこにあります。
(聞き手 大小島美和子)(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2011年4月5日付



生きる基盤を地域で
神戸大学教授 二宮厚美さん

 今回の東日本大震災は、コミュニティーを単位に福祉国家型のライフラインをきちんと確保しておくことが、最大の防災、震災対策になるということを示しました。

誇るべき財産が
 第一は医療です。憲法による生存権保障の中でも、医療は特別の意義を持っています。今回も、被災地の第一線で生命を守るために最も緊急に必要とされた支援は、やはり医療でした。代替の利かない厳しい状況で人々の命を守る最前線に立つと同時に、人々の最後のよりどころとなっています。
 日本の医療保障制度は、国民皆保険の下、市町村を単位として公が責任を持つよう築かれてきました。世界に誇る財産です。救急救命医療や小児科、高齢者医療の施設などが地域に密着して整備されています。ところが、自民党を中心とする政権に続き、民主党政権も、効率第一の考え方に立ち、これをおろそかにしてきました。防災や先端医療技術は、広域の単位でやればいいのだとする考え方もあります。しかし、このようなやり方は、地域医療を震災・災害にもろいものにし、大規模な自然災害に対処できません。
 第二に、食料や水、燃料、ガス、医薬品など災害用の基本的な物資は、公共団体が共同で確保すべきだということです。災害用物資は各家庭で備えるよう取り組まれています。しかし、これだけでは、今回のような大震災の場合にはとても間に合いません。
今回、市町村が大きな損害を受け、対応できない事態も起きています。市町村ができないなら県が、県ができないなら国が支援する重層的備蓄・支援システムが必要です。
 第三に、復旧・復興にあたっては、憲法第25条の生存権保障の視点に立った国の責任を明確にする必要があるということです。
 住居や保育園、学校、病院などの再建は、国のナショナルミニマム(責任を負う最低基準)を明らかにし、自治体が主体的に取り組む再興プランを国が行財政両面にわたり支援することが必要です。
 とりわけ急がれるのが住宅です。居住権は基本的人権の重要な要素であり、住居は生活のよりどころです。これを政府が保障しなければなりません。阪神大震災では、復興で公的な住居は得たものの、住み慣れたまちや人々から切り離されざるをえなくなった高齢者たちがいたことを教訓にしなければなりません。「コミュニティーのなかの住まい」の再建こそが求められます。

競争至上脱却を
 1980年代後半以後の日本社会は、いかに大企業の競争力を強めるかに腐心し、競争原理が前面に出て、福祉や助け合いを縮小させてきました。しかし、今回、被災地からの部品出荷が止まって自動車や電機大手の生産が止まり、大企業がいかに地方の力に依存してきたか、日本社会がいかに分業のネットワークで支えあっているかが明らかになりました。被災者への連帯を示す義援金も全国から寄せられています。震災を機に、競争至上主義から手を差し伸べ合う社会の構築へと進まなければいけません。
(聞き手 大小島美和子)(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2011年4月6日付