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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

東日本大震災と日本経済の課題⑦・⑧

2011-04-21 22:25:16 | 震災・災害・復興・地震&災害対策など
東日本大震災と日本経済の課題⑦・⑧

引き続き、東日本大震災において、日本経済に求められることを識者が語っています。
「しんぶん赤旗」からの転載です。


東日本大震災と日本経済の課題⑦
間われる市場原理任せ
駒沢大学教授 吉田敬一さん


 東日本大震災では、市場原理主義の経済システムの矛盾が露呈しました。
 震災後、ガソリン・灯油が欠乏し、救済・支援に大きな支障をきたしました。背景に石油業法の廃止などエネルギー関連の規制緩和があります。石油業法には石油供給計画の策定義務などがあり、これを通じて政府は石油の生産・備蓄や安定供給に責任をもつことができました。ところが、2002年に小泉政権がこれを廃止し、石油流通は民間企業間の取引として政府が関与しないものとされました。
 水や食料、燃料、医療など国民の命を守る基盤の分野まで市場原理まかせにしていいのかが問われます。

資源節約型へ
 資源・エネルギー浪費型の産業構造を転換する必要性も明らかになりました。
 日本は戦後、機械・電気工業を中心に経済成長を追求してきました。その結果、輸送・電気・一般機械の3業種だけで鉱工業生産の50%近くを占めるまでになっています。これらは大企業が中心となり、資源・エネルギーを大量に使う産業です。これが原子力発電を推進する要因にもなったのです。一方、資源・エネルギーの“少消費型”である衣料やファッション、食料晶、住宅などの産業は衰退の道をたどりました。
 21世紀には、資源・エネルギーの持続可能な経済発展を追求しなければなりません。そのために日本では、産業支援を重・機械工業偏重から、衣・食・住関連の産業重視に転換し、産業のバランスを回復することが絶対に必要です。
 もちろん消費者も資源浪費型のライフスタイルの見直しが必要でしょう。膨大な数の自動販売機や24時間営業のコンビニエンスストア、オール電化住宅などは、欧州には見られない光景です。
 発電においても原発に依存しないエネルギー政策に転換しなくてはなりません。
 地方の小さな自治体でも、太陽光や風力、小水力など自然を使って、エネルギーの地域内循環をめざすところがあります。合わせてCO2削減のために森林を利用し、林業を活発にすることにも取り組んでいます。これらにより中小企業に仕事が生まれ、地域経済を地域循環型で活性化しようという機運も高まっています。

チェーンの弱点
 今回の震災では、大手スーパーやコンビニなどチェーン店中心の物流・商業の脆弱(ぜいじゃく)性も明らかになりました。
 チェーン店方式は、在庫をできるだけ持たずに経費を減らそうとするシステムです。政府が規制緩和策で普及を推進してきました。
 震災によるオンラインシステムと長距離トラック輸送の中断もあって、品物の補給ができないまま、被災地域は食料確保の困難が続きました。
 もし、以前のように中小商店が元気で多数あれば、一部の商店がダメージを受けても、残った商店で食料などはもう少しの期間持ちこたえていたでしょう。米穀店などは、自分で精米するためコメの在庫も持っています。
 日常生活物資から命にかかわる食までをチェーン店に委ねる大型店中心の商業・まちづくりでいいのかが問われます。
(聞き手 大小島美和子)(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2011年4月19日付



東日本大震災と日本経済の課題⑧
ものづくり支える復興
桜美林大学教 授藤田実さん



 東日本大震災は日本の「ものづくり力」の強さと弱さの両面を浮き彫りにしました。
 震災の影響で、米ゼネラル・モーターズなどの工場が一時、生産停止に追い込まれました。日本の大手自動車メーカーや部品メーカーも工場停止に見舞われています。

代替先ない構造
 日本の中小企業の「ものづくり」が世界中の「ものづくり」を支えていたということです。今、世界中の「ものづくり」企業が日本の生産がどうなるか、固唾をのんで見守っているのです。
 他方、トヨタ自動車を代表とする在庫を持たない生産方式(ジャストインタイム方式)がさまざまな産業に取り入れられた結果、部品調達がうまくいかないという状況を招きました。これだけ被災地が広範に及ぶと、一地域の復旧では対応できません。何重もの下請け工場を抱える自動車産業はなおさらです。
 一つ一つの部品がその下請け工場でしかつくれない、代替できない構造になっています。こうした重層構造の一角が崩れると、産業全体、日本経済全体に悪影響が及ぶことが浮き彫りになりました。
 世界の「ものづくり」を支えてきた被災地の中小企業は、震災で壊滅的打撃を受け、自力での復興は難しい状態です。私は日本の「ものづくり」が衰退する危機だと感じています。
 取引先大企業は、代替先を確保しようと動きだすでしょう。しかし、今ほど大企業が下請け企業を支えることが求められているときはありません。
 代替先を求め、海外へ拠点を移そうとする大企業を国内にとどめるためにも、政治が「ものづくり」企業を支え、早急に生産が回復できるようにしないといけません。「日本の中小企業は生産できる」という姿勢をアピールしないといけません。
 そのために、地域の産業をいついつまでに復興させるという見通し、工程表をまず示さなければなりません。
 中小企業への打撃は、地域雇用への強烈な打撃でもあります。地域の経済基盤がすべてゼロに近い状態にまで陥っています。
 これを機に、営業をやめるという経営者も出てくるかもしれません。復興の過程で、従来の地場産業を復興することは何よりも大切ですが、それだけでは雇用は吸収しきれません。

地域資源を活用
 地域の資源を生かした新しい産業をおこすことも必要になってきます。ここでも「大丈夫、住み続けられます。仕事もつくります」という見通しを、早急に示すことが、被災された方に安心を与えることになるでしょう。
 東北地方はかつて、エレクトロニクス産業など大企業誘致型の産業政策に頼り、結局、こうした企業が海外に生産拠点を移し、空洞化が進んだという苦い経験をもっています。今後の復興では、大企業誘致型の復興に頼らない発想も大事になってきます。地元の資源を活用し、日本の「ものづくり」が評価される、そういう産業をどうつくっていくかがカギです。
 こうした復興、街づくりはまさしく一大プロジェクト、大掛かりな仕事になります。オールジャパンで、すべての英知を結集し、ヒト、モノ、カネを投入する必要があります。
 新しい地域、新しい産業をつくるという取り組みが求められています。
(聞き手 山田英明)(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2011年4月20日付



これを機会に、ジャストインタイムとかチェーン店などの流通システムの見直しが必要かもしれませんね。
コンビニなどは多品種を少量だけ置いて顧客のニーズに応えるって点では良いのですが、以前、棚に品切れになっている品物に店員に聞くと「棚にないものはありません」とそっけない返事。
基本的に在庫を置かない主義なんですね。
これでは災害などで流通が遮断されてしまった時はたちまち品切れになってしまいます。

16年前の阪神淡路大震災でも経験したことです。被災に遭わなかった神戸市北区のコンビニでも品切れの状態が続きました。



今回の震災で、日本の大企業がいかに中小企業のネットワークに支えられているかをまざまざと感じさせたことはありませんでした。
この際、「安易に海外生産に移行しよう」という事のないように、国内生産を立て直すことを支援していくことが大事だと思います。

たとえばパソコン業界。Core iの新チップセットに不具合は発生した時、国内生産にこだわっていた富士通は他社に先立って生産再開を果たしています。
世界に名だたる技術を継承していくためにも被災した東日本の中小企業を、国と民間から支援していく必要があると思いました。