憲法から考える 日米同盟と集団的自衛権⑧ 平和的安全保障~世界の流れ 捉えてこそ
これまで見できたように、米国は日米安保条約が形作られた1950年代、「相互協力」を旨とした「バンデンバーグ決議」を背景にして、集団的自衛権の行使や軍備増強を進めることが、日米が「対等」になる条件であるとの考えを示してきました。
侵略の足場から
しかし、米国の戦略的な狙いは日米の「対等性」などではなく、54年12月のNSC(米国家安全保障会議)決定5429/2にあるように、日本をアジアヘの軍事介入のための軍事ブロック網に組み込むことでした。ただ、この構想の中核になるはずだったSEATO(東南アジア条約機構)は米国主導のベトナム戦争への参戦を拒否。その後機能不全に陥り、77年6月30日に解散しました。
米国による侵略戦争の足場にされ、殺し合いをさせられた東南アジア諸国は、ASEAN(東南アジア諸国連合)地域フォーラム、東南アジア非核条約、地帯南シナ海行動宣言、TAC(東南アジア友好協力条約)など、重層的な平和的安全保障の仕組みをつくってきました。
なかでもTACは「武力による威嚇または行使の放棄」や「紛争の平和的手段による解決」1戦争放棄を定めた日本国憲法と共通する目標を明記(第2条)。加入国間で争いが起きたら、「武力による威嚇や武力の行使を慎み、常に加入国間友好的な交渉を通じて、その紛争を解決する」と定めています(第14条)。
第7回東アジア首脳会議に出席した(左から)野田佳彦首相、オバマ米大統領、温家宝・中国首相、李明博・韓国大統領=2012年11月20日、プノンペン(面川誠撮影)
世界覆うTAC
米ソ対決が終結し、軍事同盟の解体や機能不全が進んだ90年代以降、平和的安全保障の枠組みは世界を覆っていきました。当初は東南アジア5力国だったTACの加盟国は現在、55力国に拡大。人口で47億人、世界人口の70%を覆っています。米国や日本、中国、北朝鮮なども加入しています。
国連憲章には「戦争違法化」の世界の流れが反映されています。しかし、国際紛争の解決手段として軍事力を排除していません。また米国の要求で、軍事同盟を前提にした集団的自衛権が盛り込まれました。
国連憲章より先へ進んだ日本国憲法と共鳴するTACが広がり、「紛争の平和的手段による解決」が大きな流れになる条件が生まれています。
この考えにたてば、中国や北朝鮮による“逆流”も、国際的な対話の枠組みを通じて解決することが重要です。
このような世界の流れをとらえることができず、ただ米国から「対等な同盟国」として認めてもらうために憲法の理想を捨て去ろうとする勢力は、愚かとしかいいようがありません。(おわり)
(この連載は竹下岳が担当しました)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2013年3月13日付掲載
これまで見できたように、米国は日米安保条約が形作られた1950年代、「相互協力」を旨とした「バンデンバーグ決議」を背景にして、集団的自衛権の行使や軍備増強を進めることが、日米が「対等」になる条件であるとの考えを示してきました。
侵略の足場から
しかし、米国の戦略的な狙いは日米の「対等性」などではなく、54年12月のNSC(米国家安全保障会議)決定5429/2にあるように、日本をアジアヘの軍事介入のための軍事ブロック網に組み込むことでした。ただ、この構想の中核になるはずだったSEATO(東南アジア条約機構)は米国主導のベトナム戦争への参戦を拒否。その後機能不全に陥り、77年6月30日に解散しました。
米国による侵略戦争の足場にされ、殺し合いをさせられた東南アジア諸国は、ASEAN(東南アジア諸国連合)地域フォーラム、東南アジア非核条約、地帯南シナ海行動宣言、TAC(東南アジア友好協力条約)など、重層的な平和的安全保障の仕組みをつくってきました。
なかでもTACは「武力による威嚇または行使の放棄」や「紛争の平和的手段による解決」1戦争放棄を定めた日本国憲法と共通する目標を明記(第2条)。加入国間で争いが起きたら、「武力による威嚇や武力の行使を慎み、常に加入国間友好的な交渉を通じて、その紛争を解決する」と定めています(第14条)。
第7回東アジア首脳会議に出席した(左から)野田佳彦首相、オバマ米大統領、温家宝・中国首相、李明博・韓国大統領=2012年11月20日、プノンペン(面川誠撮影)
世界覆うTAC
米ソ対決が終結し、軍事同盟の解体や機能不全が進んだ90年代以降、平和的安全保障の枠組みは世界を覆っていきました。当初は東南アジア5力国だったTACの加盟国は現在、55力国に拡大。人口で47億人、世界人口の70%を覆っています。米国や日本、中国、北朝鮮なども加入しています。
国連憲章には「戦争違法化」の世界の流れが反映されています。しかし、国際紛争の解決手段として軍事力を排除していません。また米国の要求で、軍事同盟を前提にした集団的自衛権が盛り込まれました。
国連憲章より先へ進んだ日本国憲法と共鳴するTACが広がり、「紛争の平和的手段による解決」が大きな流れになる条件が生まれています。
この考えにたてば、中国や北朝鮮による“逆流”も、国際的な対話の枠組みを通じて解決することが重要です。
このような世界の流れをとらえることができず、ただ米国から「対等な同盟国」として認めてもらうために憲法の理想を捨て去ろうとする勢力は、愚かとしかいいようがありません。(おわり)
(この連載は竹下岳が担当しました)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2013年3月13日付掲載