北東アジア平和協力構想 実現への道を探る⑧ 歴史問題克服への努力
「北東アジア地域で、きちんとした対話の枠組みがなく、紛争の可能性が高まることを管理・抑制するチャンネルがない」
都内で3月29日に開かれた言論NPO「新しい民間外交イニシアチブ」主催のシンポジウム。米外交問題評議会(CFR)のスコット・スナイダー氏はこう述べました。
日中、日韓の政府間外交が冷え込み、緊張高まる北東アジア情勢は、もはや国際社会の懸念です。同シンポは、「東シナ海で偶発事故から軍事紛争が起こる可能性があるのに政府間外交が動かない。誰がこの状況を解決できるのか」(工藤泰志同NPO代表)との問題意識で開かれました。
なぜ対話が進まず、緊張だけが高まるのか―。
韓国・東アジア研究院の李淑鐘院長は、旧日本軍「慰安婦」問題など安倍政権の歴史認識をあげ、「歴史の書き換えが行われようとしている。ここが原因で対立がおこってきた」と指摘しました。

言論NPOが「民間外交イニシアチブ」主催のシンポジウム=3月29日、東京都内
“安倍色”を否定
昨年10月に200人を超える研究者によって「新しい日中関係を考える研究者の会」が発足しました。事務局を担当する菱田雅晴法政大教授は、「外から見ると日本がもっぱら安倍カラーでとらえられている。『そうではない』と声をあげ、緊張した日中関係を解きほぐす一歩にする。新しい研究会を発足させた経緯だ」と述べます。会員は現在270人まで増えています。
同会は、3月8日に「日中関係の源流を探る」と題してシンポジウムを開き、日中双方およびアメリカの研究者も参加して、1970年代の日中国交正常化を検証。旧ソ連との対立や経済交流の深化を背景に、米中接近と日中国交回復が進んだ経緯を議論し、その中で歴史問題の克服が進まず、いま安倍政権の歴史逆行が強まっている問題が共通して指摘されました。
笹川平和財団で日中の海上航行安全のルールづくりへ対話促進事業を進める干展(ウテン)氏も、「日中間には体制的な違いがあるが、日本と韓国は同じ民主制国家。安倍首相は価値観外交と言うが、なぜ韓国とここまで衝突するのか。北東アジアの一体性の欠如は歴史問題に起因する」と述べます。
相互理解が重要
中国、韓国の歴史学者らと共に日中韓3国共通歴史教材『未来をひらく歴史』の作成に取り組んできた都留文科大学の笠原十九司名誉教授はいいます。
「民間でも、日本側が過去の侵略戦争と植民地支配への反省をはっきりさせなければ話し合いは始まらなかった。共同研究を始めて10年以上たつが、違いを出し合い、相互に理解するという初歩的な段階。地道に長く続けることが大切です」
(山田英明、栗原千鶴)(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2014年5月10日付掲載
安倍首相の外交スタンスからすると、日本が靖国や集団的自衛権など安倍カラーで埋め尽くされているように見えますが、実際は違います。
民間レベルでは対話のチャンネルが開かれています。
「北東アジア地域で、きちんとした対話の枠組みがなく、紛争の可能性が高まることを管理・抑制するチャンネルがない」
都内で3月29日に開かれた言論NPO「新しい民間外交イニシアチブ」主催のシンポジウム。米外交問題評議会(CFR)のスコット・スナイダー氏はこう述べました。
日中、日韓の政府間外交が冷え込み、緊張高まる北東アジア情勢は、もはや国際社会の懸念です。同シンポは、「東シナ海で偶発事故から軍事紛争が起こる可能性があるのに政府間外交が動かない。誰がこの状況を解決できるのか」(工藤泰志同NPO代表)との問題意識で開かれました。
なぜ対話が進まず、緊張だけが高まるのか―。
韓国・東アジア研究院の李淑鐘院長は、旧日本軍「慰安婦」問題など安倍政権の歴史認識をあげ、「歴史の書き換えが行われようとしている。ここが原因で対立がおこってきた」と指摘しました。

言論NPOが「民間外交イニシアチブ」主催のシンポジウム=3月29日、東京都内
“安倍色”を否定
昨年10月に200人を超える研究者によって「新しい日中関係を考える研究者の会」が発足しました。事務局を担当する菱田雅晴法政大教授は、「外から見ると日本がもっぱら安倍カラーでとらえられている。『そうではない』と声をあげ、緊張した日中関係を解きほぐす一歩にする。新しい研究会を発足させた経緯だ」と述べます。会員は現在270人まで増えています。
同会は、3月8日に「日中関係の源流を探る」と題してシンポジウムを開き、日中双方およびアメリカの研究者も参加して、1970年代の日中国交正常化を検証。旧ソ連との対立や経済交流の深化を背景に、米中接近と日中国交回復が進んだ経緯を議論し、その中で歴史問題の克服が進まず、いま安倍政権の歴史逆行が強まっている問題が共通して指摘されました。
笹川平和財団で日中の海上航行安全のルールづくりへ対話促進事業を進める干展(ウテン)氏も、「日中間には体制的な違いがあるが、日本と韓国は同じ民主制国家。安倍首相は価値観外交と言うが、なぜ韓国とここまで衝突するのか。北東アジアの一体性の欠如は歴史問題に起因する」と述べます。
相互理解が重要
中国、韓国の歴史学者らと共に日中韓3国共通歴史教材『未来をひらく歴史』の作成に取り組んできた都留文科大学の笠原十九司名誉教授はいいます。
「民間でも、日本側が過去の侵略戦争と植民地支配への反省をはっきりさせなければ話し合いは始まらなかった。共同研究を始めて10年以上たつが、違いを出し合い、相互に理解するという初歩的な段階。地道に長く続けることが大切です」
(山田英明、栗原千鶴)(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2014年5月10日付掲載
安倍首相の外交スタンスからすると、日本が靖国や集団的自衛権など安倍カラーで埋め尽くされているように見えますが、実際は違います。
民間レベルでは対話のチャンネルが開かれています。