労働講座 きほんのき⑧ 最低賃金 生計費遠く 地域格差大
経営者が労働者を雇うさい、これ以下の賃金で雇ってはならないという最低額が最低賃金法にもとついて定められています。
毎年秋、都道府県ごとに時給を決める地域別最低賃金制をとっています。現在の時給額は平均823円で、最高が東京都の932円、最低が宮崎県と沖縄県の714円です。これに違反すると50万円以下の罰金です。
この最低賃金について根本的な欠陥が明らかになっています。
まず、まともに働いても人たるに値する生活を保障する水準になっていないことです。
現在の平均時給823円は、1日8時間、月22日のフルタイムで働いても月約14万4800円、年収で約174万円にしかなりません。懸命に働いているのに貧困から抜け出せない、年収200万円以下のワーキングプアが1000万人を超えて増えている原因がここにあります。
最賃が低水準にとどまっているのは、労働者の生計費などとともに、「事業の賃金支払い能力」を最賃を決める考慮要素にしていることです。(最低賃金法9条2項)
大手企業は利益
最低賃金は、まともに働けば人間らしい最低限の生活を保障する金額でなければなりません。どの国でも、経営者の支払い能力に関係なく労働者の生計費だけを考慮要素にしています。日本でも生計費だけにしぼって最賃を決定する仕組みに改めるべきです。
財界は、最賃を上げると中小企業が苦しくなると主張します。しかし、どの国でも支援策と一体で引き上げを行っています。
しかも、最低賃金に張りついた低い時給で大量のパート、アルバイトを雇って利益をあげているのはセブン&アイ、イオンなどサービス業をはじめ大手企業です。現行制度は、大企業のための賃上げ抑制の役割を果たしているのが実態です。
主要国の最低賃金制度
注:金額は時給。円換算は、2016年平均の為替レート(三菱UFJリサーチ&コンサルティング)。1ドル=107.8円、1ユー口=118.8円、1ポンド=143.7円
全国格差は218円
現行の最賃決定方式は、地域間格差が広がり破たんしています。
現在、最高の東京都と最低の沖縄県などとの時給格差は218円です。月22日働いて3万8368円もの差があります。最低賃金がいまの時給方式になった2001年は、最高が東京都の708円、最低が青森県などの604円で、その差は104円でした。
最高額に対する最低額の比率は、2001年は85・3%でしたが、いまは76・4%。地方の最低時給が東京の7割台では、若者が都市に流出し過疎化が深刻になるだけです。
これは中央最低賃金審議会が最低賃金額を検討するさい、47都道府県をABCDの4ランクに分けて、ランクごとに引き上げの「目安」額を決める方式をとっているためです。昨年の「目安」額は、はっきりした根拠がないまま東京などのAランクが25円、最低のDランクが21円に差別されました。この方式を続ければ限りなく地域間格差が広がります。
この4ランク方式を見直して、直ちにどこでも時給1000円を実現し、1500円をめざすこと。世界で当たり前になっている生計費をベースにした全国一律最低賃金制を実現すべきです。全労連は、その世論形成のために「雇用アクションプラン」をつくり、運動を強めています。
最低賃金をめぐっては、1975年に当時の労働4団体が全国一律最低賃金制を柱とする統一要求をまとめ、これを受けて日本共産党を含む4野党が共同法案を提出しました。実現はできなかったものの、大きな運動が展開されました。
たたかいに押されて民主党政権下の2010年に「20年までに全国平均1000円をめざす」という方針が出され、安倍政権も「1000円をめざす」といわざるをえなくなっています。
(随時掲載)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2017年6月1日付掲載
東京は地方に比べると家賃が高いので最低賃金が高いのは分かるのですが、それでも932円。とても生計費をまかなえる額ではありません。
最低でも時給1000円、早期に1500円をめざしましょう。
経営者が労働者を雇うさい、これ以下の賃金で雇ってはならないという最低額が最低賃金法にもとついて定められています。
毎年秋、都道府県ごとに時給を決める地域別最低賃金制をとっています。現在の時給額は平均823円で、最高が東京都の932円、最低が宮崎県と沖縄県の714円です。これに違反すると50万円以下の罰金です。
この最低賃金について根本的な欠陥が明らかになっています。
まず、まともに働いても人たるに値する生活を保障する水準になっていないことです。
現在の平均時給823円は、1日8時間、月22日のフルタイムで働いても月約14万4800円、年収で約174万円にしかなりません。懸命に働いているのに貧困から抜け出せない、年収200万円以下のワーキングプアが1000万人を超えて増えている原因がここにあります。
最賃が低水準にとどまっているのは、労働者の生計費などとともに、「事業の賃金支払い能力」を最賃を決める考慮要素にしていることです。(最低賃金法9条2項)
大手企業は利益
最低賃金は、まともに働けば人間らしい最低限の生活を保障する金額でなければなりません。どの国でも、経営者の支払い能力に関係なく労働者の生計費だけを考慮要素にしています。日本でも生計費だけにしぼって最賃を決定する仕組みに改めるべきです。
財界は、最賃を上げると中小企業が苦しくなると主張します。しかし、どの国でも支援策と一体で引き上げを行っています。
しかも、最低賃金に張りついた低い時給で大量のパート、アルバイトを雇って利益をあげているのはセブン&アイ、イオンなどサービス業をはじめ大手企業です。現行制度は、大企業のための賃上げ抑制の役割を果たしているのが実態です。
主要国の最低賃金制度
日本 | アメリカ | イギリス | ドイツ | フランス | |
設定方式 | ・地域別(都道府県) ・特定(産業別) | ・全国一律 ・州内一律 | 全国一律 | 全国一律 | 全国一律 |
最低賃金額 | 平均823円 | ・全国 7.25ドル(782円) ・ニューヨーク州など2018年までに15ドル(1617円) | 25歳以上7.50ポンド(1078円) | 8.84ユー口(1050円) | 9.76ユー口(1159円) |
全国格差は218円
現行の最賃決定方式は、地域間格差が広がり破たんしています。
現在、最高の東京都と最低の沖縄県などとの時給格差は218円です。月22日働いて3万8368円もの差があります。最低賃金がいまの時給方式になった2001年は、最高が東京都の708円、最低が青森県などの604円で、その差は104円でした。
最高額に対する最低額の比率は、2001年は85・3%でしたが、いまは76・4%。地方の最低時給が東京の7割台では、若者が都市に流出し過疎化が深刻になるだけです。
これは中央最低賃金審議会が最低賃金額を検討するさい、47都道府県をABCDの4ランクに分けて、ランクごとに引き上げの「目安」額を決める方式をとっているためです。昨年の「目安」額は、はっきりした根拠がないまま東京などのAランクが25円、最低のDランクが21円に差別されました。この方式を続ければ限りなく地域間格差が広がります。
この4ランク方式を見直して、直ちにどこでも時給1000円を実現し、1500円をめざすこと。世界で当たり前になっている生計費をベースにした全国一律最低賃金制を実現すべきです。全労連は、その世論形成のために「雇用アクションプラン」をつくり、運動を強めています。
最低賃金をめぐっては、1975年に当時の労働4団体が全国一律最低賃金制を柱とする統一要求をまとめ、これを受けて日本共産党を含む4野党が共同法案を提出しました。実現はできなかったものの、大きな運動が展開されました。
たたかいに押されて民主党政権下の2010年に「20年までに全国平均1000円をめざす」という方針が出され、安倍政権も「1000円をめざす」といわざるをえなくなっています。
(随時掲載)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2017年6月1日付掲載
東京は地方に比べると家賃が高いので最低賃金が高いのは分かるのですが、それでも932円。とても生計費をまかなえる額ではありません。
最低でも時給1000円、早期に1500円をめざしましょう。