コロナ禍と資本主義 見えざる鎖⑩ ブランド企業の責任を問う
世界に衝撃を与えたラナ・プラザビル崩壊事故(2013年4月)は、企業の社会的責任を問うきっかけとなりました。
15年6月、ドイツ南部エルマウで開かれた主要7カ国首脳会議は「責任あるサプライチェーン(供給網)」を議題とし、各国政府の役割を首脳宣言に明記。ラナ・プラザ事故の教訓を基に、利害関係者の新たな取り組みを強化するとしました。
海外では法整備が加速。英国は15年に「現代奴隷法」を制定し、企業に調達先の人権リスクの調査や報告を義務付けています。その後、フランスやオーストラリアなどでも同種の法律が施行されました。日本は20年に「行動計画」を策定したものの、法制化は進んでいません。
国際NGOのオックスファム・オーストラリアは17年に報告書を公表。「ブランド企業には供給網上の低賃金に対し責任をとる義務があるし、その力もある」と断じています。
会計大手デロイト傘下のシンクタンク、デロイト・アクセス・エコノミクスの協力で、オーストラリアで販売される衣服の価格を分析。バングラデシュの縫製労働者が販売価格の平均2%しか受け取れない実態を告発しました。
再雇用と未払い賃金の支払いを求めて工場を封鎖する縫製労働者たち=2020年6月15日、ダッカ郊外の工業地帯アシュリア地区(NGWF提供)
生活賃金を
報告書は、ブランド企業に対し、順守すべき四つの原則を提起しています。
第1に、基本的人権を中心に据えることです。
▽取引先の工場一覧を公表し、随時更新する▽労働者の苦情に対応できる仕組みをつくる▽団結権を保障する▽労働組合や労働者の代表との交渉機会を設ける▽女性の力を高める―ことなどを求めています。
第2に、生活賃金を保障することです。
労働者には、人間らしい生活を送るにふさわしい生活賃金を得る権利があります。企業はこの権利を尊重し、支払いまでにかかる時間を設定しなければなりません。
第3に、生活賃金を実現するための計画をつくり、公表することです。
労働者と経営者の双方が議論に参加し、生活賃金を実現するまでの手順を決めます。「ブランド企業の取引慣行や価格設定が賃金と労働環境に影響を与えている」事実を、企業は自覚しなければなりません。
第4に、供給網上で生活賃金をしっかり払い、その動向を監視することです。
賃金状況を随時調べ、教訓をもとに計画を修正します。調査は可能な限り他のブランド企業と協力して実施。企業や労働組合、政府などあらゆる関係団体が、協力と対話を通して生活賃金の導入を目指します。
20年、新型コロナウイルス感染の世界的な拡大で、生産を担う縫製労働者の保護が喫緊の課題となりました。
「多くの多国籍ブランド企業が注文をキャンセルした。彼らは生産コストの削減を一方的に押し付け、工場は閉鎖に追い込まれた。一時、20万人以上の労働者が失業した」
バングラデシュ衣料品産業労働者組合連合(NGWF)のアミルル・バク・アミンさんは、本紙の取材にこう語りました。
団結の動き
そんな中、ブランド企業や小売業者から生産を受注するアジアのサプライヤー(製造業者など)を中心に、国境を超えて団結する動きが出ています。
昨年4月、バングラデシュ、中国、カンボジア、ミャンマー、パキスタン、ベトナムの6力国の服飾メーカーを代表する統括組織「STARネットワーク」が発足。多国籍ブランド企業や小売業者に対し共同声明を出しました。
▽労働者や小規模事業者への潜在的な影響を慎重に検討する▽契約を完全に履行する▽すでに受理されている注文をキャンセルしない▽生産や出荷を停止する際、サプライヤーへ公正な報酬を払うかサプライヤーの労働者へ直接給与を払う―など9項目を要請しました。
コロナ禍が供給網の課題を浮き彫りにする中、企業の負うべき社会的責任が改めて間われています。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年7月27日付掲載
会計大手デロイト傘下のシンクタンク、デロイト・アクセス・エコノミクスの協力で、オーストラリアで販売される衣服の価格を分析。バングラデシュの縫製労働者が販売価格の平均2%しか受け取れない実態を告発。
ブランド企業や小売業者から生産を受注するアジアのサプライヤー(製造業者など)を中心に、国境を超えて団結する動き。
労働者に生活賃金を支払えないような、あまりにも低い受注価格はやめよと。
ユニクロの半そでシャツ、1,980円なんて異常な安値ですよね。
世界に衝撃を与えたラナ・プラザビル崩壊事故(2013年4月)は、企業の社会的責任を問うきっかけとなりました。
15年6月、ドイツ南部エルマウで開かれた主要7カ国首脳会議は「責任あるサプライチェーン(供給網)」を議題とし、各国政府の役割を首脳宣言に明記。ラナ・プラザ事故の教訓を基に、利害関係者の新たな取り組みを強化するとしました。
海外では法整備が加速。英国は15年に「現代奴隷法」を制定し、企業に調達先の人権リスクの調査や報告を義務付けています。その後、フランスやオーストラリアなどでも同種の法律が施行されました。日本は20年に「行動計画」を策定したものの、法制化は進んでいません。
国際NGOのオックスファム・オーストラリアは17年に報告書を公表。「ブランド企業には供給網上の低賃金に対し責任をとる義務があるし、その力もある」と断じています。
会計大手デロイト傘下のシンクタンク、デロイト・アクセス・エコノミクスの協力で、オーストラリアで販売される衣服の価格を分析。バングラデシュの縫製労働者が販売価格の平均2%しか受け取れない実態を告発しました。
再雇用と未払い賃金の支払いを求めて工場を封鎖する縫製労働者たち=2020年6月15日、ダッカ郊外の工業地帯アシュリア地区(NGWF提供)
生活賃金を
報告書は、ブランド企業に対し、順守すべき四つの原則を提起しています。
第1に、基本的人権を中心に据えることです。
▽取引先の工場一覧を公表し、随時更新する▽労働者の苦情に対応できる仕組みをつくる▽団結権を保障する▽労働組合や労働者の代表との交渉機会を設ける▽女性の力を高める―ことなどを求めています。
第2に、生活賃金を保障することです。
労働者には、人間らしい生活を送るにふさわしい生活賃金を得る権利があります。企業はこの権利を尊重し、支払いまでにかかる時間を設定しなければなりません。
第3に、生活賃金を実現するための計画をつくり、公表することです。
労働者と経営者の双方が議論に参加し、生活賃金を実現するまでの手順を決めます。「ブランド企業の取引慣行や価格設定が賃金と労働環境に影響を与えている」事実を、企業は自覚しなければなりません。
第4に、供給網上で生活賃金をしっかり払い、その動向を監視することです。
賃金状況を随時調べ、教訓をもとに計画を修正します。調査は可能な限り他のブランド企業と協力して実施。企業や労働組合、政府などあらゆる関係団体が、協力と対話を通して生活賃金の導入を目指します。
20年、新型コロナウイルス感染の世界的な拡大で、生産を担う縫製労働者の保護が喫緊の課題となりました。
「多くの多国籍ブランド企業が注文をキャンセルした。彼らは生産コストの削減を一方的に押し付け、工場は閉鎖に追い込まれた。一時、20万人以上の労働者が失業した」
バングラデシュ衣料品産業労働者組合連合(NGWF)のアミルル・バク・アミンさんは、本紙の取材にこう語りました。
団結の動き
そんな中、ブランド企業や小売業者から生産を受注するアジアのサプライヤー(製造業者など)を中心に、国境を超えて団結する動きが出ています。
昨年4月、バングラデシュ、中国、カンボジア、ミャンマー、パキスタン、ベトナムの6力国の服飾メーカーを代表する統括組織「STARネットワーク」が発足。多国籍ブランド企業や小売業者に対し共同声明を出しました。
▽労働者や小規模事業者への潜在的な影響を慎重に検討する▽契約を完全に履行する▽すでに受理されている注文をキャンセルしない▽生産や出荷を停止する際、サプライヤーへ公正な報酬を払うかサプライヤーの労働者へ直接給与を払う―など9項目を要請しました。
コロナ禍が供給網の課題を浮き彫りにする中、企業の負うべき社会的責任が改めて間われています。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年7月27日付掲載
会計大手デロイト傘下のシンクタンク、デロイト・アクセス・エコノミクスの協力で、オーストラリアで販売される衣服の価格を分析。バングラデシュの縫製労働者が販売価格の平均2%しか受け取れない実態を告発。
ブランド企業や小売業者から生産を受注するアジアのサプライヤー(製造業者など)を中心に、国境を超えて団結する動き。
労働者に生活賃金を支払えないような、あまりにも低い受注価格はやめよと。
ユニクロの半そでシャツ、1,980円なんて異常な安値ですよね。