コロナ禍と資本主義 見えざる鎖⑪ 消費者と労働者 連帯の絆
衣料・縫製業を営む多国籍企業は、本社のある国で賃金が上がり、労働法制が強化されると、生産を海外へ移転してきました。現地企業への資本参加もせず、自社工場も設けないため、現地の労働条件になんら責任を負いません。
生産の圧力
先進国の縫製業は空洞化し、衰退を余儀なくされました。空洞化は雇用に悪影響を及ぼし購買力が減少、衣類の低価格化が加速しました。安価な商品を大量に販売するディスカウントショップへの人気が高まり、企業間の低価格競争に拍車をかけています。在庫不足のために、販売機会を逃す「機会ロス」を防ぐためとして、バングラデシュを含む発展途上国へ大量生産の圧力を強めてきました。そのしわ寄せを受けるのが縫製労働者たちです。
こうして多国籍企業が主導する「見えざる鎖」によって労働者の非人間的搾取が強化されます。低賃金・長時間労働のために安価な商品を買わざるを得ない先進国の労働者も、劣悪な環境で働く途上国の労働者も、資本の利潤追求の仕組みに取り込まれた犠牲者なのです。
鎖から人々を解き放つ力は、どこにあるのでしょうか。
5月中旬。バングラデシュに住む3人の元女性縫製労働者が本紙のオンライン取材で訴えました。
「日本にいるあなた方に訴えたい。機会があればブランド企業や小売企業と安全な労働環境について議論してほしい。最低限生活できる賃金や安全な労働環境を保障するよう圧力をかけてほしい。これが私たちの望みです」
大手ブランド・小売企業を動かす鍵は「連帯」です。
「多国籍企業に対しともにたたかわねばなりません」「このネットワークが世界の不平等な経済を少しでも変える力になる。私はそう信じています」
バングラデシュ衣料品産業労働者組合連合(NGWF)のアミルル・バク・アミンさんは語ります。
発展途上国で服を作る労働者、その服を売る先進国の労働者、そしてその服を買う消費者の連帯を訴えました。
9割を輸入に依存する日本の衣料品市場において、国別の輸入量シェアは中国を筆頭にベトナム、バングラデシュと続きます。日本繊維輸入組合によると、2009~20年までに、中国のシェアが89・8%から61・9%へ縮小した一方、バングラデシュは0・7%から6・1%へ伸長してきました。
「世界の工場」の中国で高い経済成長に伴い労働者の賃金が上昇。低廉な労働力を求めて東南アジアヘ工場を移転する企業が増えています。日本貿易振興機構(ジェトロ)によれば、バングラデシュの製造業における作業員の月額基本給は115ドル(約1万2700円)と調査対象国の19カ国中、最低です。
格安アパレル大手H&Mの店舗=東京都渋谷区
末端は飢え
バングラデシュ最大の業界団体であるバングラデシュ衣料品製造・輸出業者協会(BGMEA)の加盟工場数は1980年代前半の12から4500へと増加。400万以上の雇用を生み、1000万人以上の暮らしを支えています。
「縫製産業を牛耳っているのは多国籍企業です」。アミンさんは強調します。
「利益のほとんどが多国籍企業の懐へ入り、末端の労働者は飢えに苦しんでいます。こんな状況は断じて受け入れられない。労働者が作った製品のおかげで企業は利益を得ている。労働者を守るのは企業の責任です」
労働者の人権を保障するため、国際供給網(グローバル・サプライチェーン)の構造そのものを変える必要があると言います。「そのために私たちは多国籍企業とたたかわねばなりません」
「衣料品を買う時、それを作った労働者の置かれている状況を知ってください。不買運動は真の解決策ではありません。衣料品の需要が減ると労働者は失業に追い込まれてしまいます。大切なのは消費者一人ひとりが企業に対しよりよい労働環境を求めて圧力をかけ続けることです」
生産者は自分たちの仕事に誇りをもっています。
一人ひとりが当事者として立ち上がることで、世界を覆う「見えざる鉄の鎖」を連帯の絆へと変えることができるのです。
(この項おわり)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年7月28日付掲載
低賃金・長時間労働のために安価な商品を買わざるを得ない先進国の労働者も、劣悪な環境で働く途上国の労働者も、資本の利潤追求の仕組みに取り込まれた犠牲者。
「不買運動は真の解決策ではない。衣料品の需要が減ると労働者は失業に追い込まれる。大切なのは消費者一人ひとりが企業に対しよりよい労働環境を求めて圧力をかけ続けること」
消費者と労働者 連帯の絆へ。
衣料・縫製業を営む多国籍企業は、本社のある国で賃金が上がり、労働法制が強化されると、生産を海外へ移転してきました。現地企業への資本参加もせず、自社工場も設けないため、現地の労働条件になんら責任を負いません。
生産の圧力
先進国の縫製業は空洞化し、衰退を余儀なくされました。空洞化は雇用に悪影響を及ぼし購買力が減少、衣類の低価格化が加速しました。安価な商品を大量に販売するディスカウントショップへの人気が高まり、企業間の低価格競争に拍車をかけています。在庫不足のために、販売機会を逃す「機会ロス」を防ぐためとして、バングラデシュを含む発展途上国へ大量生産の圧力を強めてきました。そのしわ寄せを受けるのが縫製労働者たちです。
こうして多国籍企業が主導する「見えざる鎖」によって労働者の非人間的搾取が強化されます。低賃金・長時間労働のために安価な商品を買わざるを得ない先進国の労働者も、劣悪な環境で働く途上国の労働者も、資本の利潤追求の仕組みに取り込まれた犠牲者なのです。
鎖から人々を解き放つ力は、どこにあるのでしょうか。
5月中旬。バングラデシュに住む3人の元女性縫製労働者が本紙のオンライン取材で訴えました。
「日本にいるあなた方に訴えたい。機会があればブランド企業や小売企業と安全な労働環境について議論してほしい。最低限生活できる賃金や安全な労働環境を保障するよう圧力をかけてほしい。これが私たちの望みです」
大手ブランド・小売企業を動かす鍵は「連帯」です。
「多国籍企業に対しともにたたかわねばなりません」「このネットワークが世界の不平等な経済を少しでも変える力になる。私はそう信じています」
バングラデシュ衣料品産業労働者組合連合(NGWF)のアミルル・バク・アミンさんは語ります。
発展途上国で服を作る労働者、その服を売る先進国の労働者、そしてその服を買う消費者の連帯を訴えました。
9割を輸入に依存する日本の衣料品市場において、国別の輸入量シェアは中国を筆頭にベトナム、バングラデシュと続きます。日本繊維輸入組合によると、2009~20年までに、中国のシェアが89・8%から61・9%へ縮小した一方、バングラデシュは0・7%から6・1%へ伸長してきました。
「世界の工場」の中国で高い経済成長に伴い労働者の賃金が上昇。低廉な労働力を求めて東南アジアヘ工場を移転する企業が増えています。日本貿易振興機構(ジェトロ)によれば、バングラデシュの製造業における作業員の月額基本給は115ドル(約1万2700円)と調査対象国の19カ国中、最低です。
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末端は飢え
バングラデシュ最大の業界団体であるバングラデシュ衣料品製造・輸出業者協会(BGMEA)の加盟工場数は1980年代前半の12から4500へと増加。400万以上の雇用を生み、1000万人以上の暮らしを支えています。
「縫製産業を牛耳っているのは多国籍企業です」。アミンさんは強調します。
「利益のほとんどが多国籍企業の懐へ入り、末端の労働者は飢えに苦しんでいます。こんな状況は断じて受け入れられない。労働者が作った製品のおかげで企業は利益を得ている。労働者を守るのは企業の責任です」
労働者の人権を保障するため、国際供給網(グローバル・サプライチェーン)の構造そのものを変える必要があると言います。「そのために私たちは多国籍企業とたたかわねばなりません」
「衣料品を買う時、それを作った労働者の置かれている状況を知ってください。不買運動は真の解決策ではありません。衣料品の需要が減ると労働者は失業に追い込まれてしまいます。大切なのは消費者一人ひとりが企業に対しよりよい労働環境を求めて圧力をかけ続けることです」
生産者は自分たちの仕事に誇りをもっています。
一人ひとりが当事者として立ち上がることで、世界を覆う「見えざる鉄の鎖」を連帯の絆へと変えることができるのです。
(この項おわり)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年7月28日付掲載
低賃金・長時間労働のために安価な商品を買わざるを得ない先進国の労働者も、劣悪な環境で働く途上国の労働者も、資本の利潤追求の仕組みに取り込まれた犠牲者。
「不買運動は真の解決策ではない。衣料品の需要が減ると労働者は失業に追い込まれる。大切なのは消費者一人ひとりが企業に対しよりよい労働環境を求めて圧力をかけ続けること」
消費者と労働者 連帯の絆へ。