暴力被害者を支援する女性たち ドイツ② 行政に女性権利課
ドイツ南西部のフライブルク市(人口23万人)は温暖化対策をはじめ市民参加の街づくりで有名です。暴力から女性を守る取り組みも注目されています。
「夜の女性タクシー」が3年前にスタートしました。女性がタクシーを利用する場合、夜10時から朝6時まで市内のどこまで乗っても料金は7ユーロ(約910円)。差額は市が負担します。
夜道を一人で歩いていた女性が性暴行被害にあう事件が相次いだことから、女性の安全な帰宅を保障するために始めました。市が年間約3100万円の予算を投じています。
「夜の女性タクシー」を宣伝するスデッカー(フライブルク市提供)
市長直属の部署
市は35年前から「女性の権利向上担当課」を設けている先駆者です。市の属するバーデン・ビュルテンベルク州は2016年から人口5万人以上の自治体に、基本法(憲法に相当)に定められた男女平等をもとにジェンダー問題を担当する職員の設置を義務付けています。
市の「女性の権利向上担当課」職員シモーネ・トマスさん(54)は、19年にドイツ国内で報告されたDV件数、14万1792件について、「衝撃的な数字だ。ただでさえ閉じこもってしまいがちなDV被害者の支援は、コロナ禍でさらに困難に直面している」と語ります。
同課は市長直属の部署。2人の女性職員が年2万5000ユーロ(約325万円)の広報関連予算を使い、女性の地位向上をめざします。家庭内や公共の場での暴刀根絶のための対策も担い、男女の権利平等をめざします。
同市にはNPO団体「FRIG」が中心となり、DV被害者の支援網が作られています。ここには医療専門家、市、警察や裁判所が加わります。「あらゆる関係者が定期的に意見交換や信報共有をする場はとても大切。切れ目のない被害者支援を実現できる」とトマスさん。
「家にいても安全ではない?」とDV被害者や被害を知った人に連絡を呼びかけるポスターのそばに立つシモーネ・トマスさん=2021年7月、フライブルク市役所(桑野白馬撮影)
加害者の更生も
市は、3年前から犯罪防止課と協力して、加害者の更生に向けたカウンセリングを始めました。
「感信をうまく抑制できない人もいる。加害者への支援も必要な場合がある」。男性被害者の支援体制の確立も課題だと言います。
トマスさんは、女性への暴力を根絶するために、幼少期からジェンダー平等を議論する教育が必要だと話します。「3~4歳から、家庭で見聞きしたことが『男と女はこうあるべきだ』との考えを形作っていく」。将来、学校で男女の役割といったステレオタイプを打破するための科目を盛り込みたいと意気込みます。「算数や英語に加えて、『ジェンダー平等』の科目ができたらすてきだ。男の子も女の子も平等の権利を持つのだと伝えることが大切だ」
(フライブルク=桑野白馬)(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年8月15日付掲載
「夜の女性タクシー」が3年前にスタート。女性がタクシーを利用する場合、夜10時から朝6時まで市内のどこまで乗っても料金は7ユーロ(約910円)。差額は市が負担。女性の安全な帰宅を保障するため。これは良いですねえ。
市は、3年前から犯罪防止課と協力して、加害者の更生に向けたカウンセリングを開始。「感信をうまく抑制できない人もいる。加害者への支援も必要な場合がある」
ドイツ南西部のフライブルク市(人口23万人)は温暖化対策をはじめ市民参加の街づくりで有名です。暴力から女性を守る取り組みも注目されています。
「夜の女性タクシー」が3年前にスタートしました。女性がタクシーを利用する場合、夜10時から朝6時まで市内のどこまで乗っても料金は7ユーロ(約910円)。差額は市が負担します。
夜道を一人で歩いていた女性が性暴行被害にあう事件が相次いだことから、女性の安全な帰宅を保障するために始めました。市が年間約3100万円の予算を投じています。
「夜の女性タクシー」を宣伝するスデッカー(フライブルク市提供)
市長直属の部署
市は35年前から「女性の権利向上担当課」を設けている先駆者です。市の属するバーデン・ビュルテンベルク州は2016年から人口5万人以上の自治体に、基本法(憲法に相当)に定められた男女平等をもとにジェンダー問題を担当する職員の設置を義務付けています。
市の「女性の権利向上担当課」職員シモーネ・トマスさん(54)は、19年にドイツ国内で報告されたDV件数、14万1792件について、「衝撃的な数字だ。ただでさえ閉じこもってしまいがちなDV被害者の支援は、コロナ禍でさらに困難に直面している」と語ります。
同課は市長直属の部署。2人の女性職員が年2万5000ユーロ(約325万円)の広報関連予算を使い、女性の地位向上をめざします。家庭内や公共の場での暴刀根絶のための対策も担い、男女の権利平等をめざします。
同市にはNPO団体「FRIG」が中心となり、DV被害者の支援網が作られています。ここには医療専門家、市、警察や裁判所が加わります。「あらゆる関係者が定期的に意見交換や信報共有をする場はとても大切。切れ目のない被害者支援を実現できる」とトマスさん。
「家にいても安全ではない?」とDV被害者や被害を知った人に連絡を呼びかけるポスターのそばに立つシモーネ・トマスさん=2021年7月、フライブルク市役所(桑野白馬撮影)
加害者の更生も
市は、3年前から犯罪防止課と協力して、加害者の更生に向けたカウンセリングを始めました。
「感信をうまく抑制できない人もいる。加害者への支援も必要な場合がある」。男性被害者の支援体制の確立も課題だと言います。
トマスさんは、女性への暴力を根絶するために、幼少期からジェンダー平等を議論する教育が必要だと話します。「3~4歳から、家庭で見聞きしたことが『男と女はこうあるべきだ』との考えを形作っていく」。将来、学校で男女の役割といったステレオタイプを打破するための科目を盛り込みたいと意気込みます。「算数や英語に加えて、『ジェンダー平等』の科目ができたらすてきだ。男の子も女の子も平等の権利を持つのだと伝えることが大切だ」
(フライブルク=桑野白馬)(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年8月15日付掲載
「夜の女性タクシー」が3年前にスタート。女性がタクシーを利用する場合、夜10時から朝6時まで市内のどこまで乗っても料金は7ユーロ(約910円)。差額は市が負担。女性の安全な帰宅を保障するため。これは良いですねえ。
市は、3年前から犯罪防止課と協力して、加害者の更生に向けたカウンセリングを開始。「感信をうまく抑制できない人もいる。加害者への支援も必要な場合がある」