アマゾン 宅配の闇② 格差生む多重下請け
インターネット通販の利用拡大と同時に宅配ドライバーの過重労働が社会問題となっています。配達を委託するだけのネット通販企業はドライバーの人間らしい働き方を保障しようとはしません。
2021年度の宅配便取扱個数は49億5323万個と過去最多を更新しました。新型コロナウイルス禍も相まって、前年度から1億1676万個(約2・4%)増えています。
配達員の多くは労働法が適用されない個人事業主です。ネット通販企業や下請けの運送会社は個人事業主を使って残業規制の網をくぐりぬけ、増える荷量に対応してきました。
膨張を続ける荷量にドライバーの働き方は過酷の度を増し、体力と精神をすり減らす日々に多くのドライバーが去っていきます。
「7次」の例も
都内に住む健さん(25)=仮名=は8月末、個人事業主として1年2カ月所属した運送会社を辞めました。会社は、ネット通販大手・アマゾンの3次下請けです。朝5時ごろ起床し、7時半に指定の倉庫で積み込みを始めます。荷量の多寡に関係なく日当は1万5千円。過酷な勤務に加え、賃金格差への不満が日に日にたまっていきました。
「同じ仕事をしているのに何次下請けの会社に属するかで金額が変わるんです」。アマゾンから委託を受ける元請けの大手運送会社、2次下請け会社の日当はそれぞれ2万4千円と1万8千円。月に22日間働いて、健さんの月給との差額は19万8千円、6万6千円に上りました。
ネット通販企業を頂点にしたピラミッド型の多重下請け構造が賃金格差を生んでいます。元請け会社の下に何社もの下請け企業が連なり、各社が運賃の一部を中抜きする慣行が業界にはびこってきました。運送会社による中間搾取です。取材では、7次下請けまで再委託が繰り返される事例もありました。
アマゾンや大手の運送会社は表向き多重下請けを認めていません。公益社団法人全日本トラック協会は17年に出した行動計画で、「適正取引や安全義務の観点から、全ての取引について、原則、2次下請までに制限する」と明記しています。
実態は労働者
業界の慣行を横目にアマゾンが拡大しているのが、運送会社を介さず直接個人事業主に配達を委託する制度「アマゾンフレックス」です。中抜きもなく、自らの裁量で働けるとの理由から、会社に属さず一匹おおかみとして働くドライバーも少なくありません。
国交省によると、軽貨物の運送業者は20年度末に19万7千人を記録。15年度比4万3千人近く増えました。車両1台から始められる手軽さから、「コロナ禍で飲食業から転向する人も増えています」(運送会社社長)。
しかし、働く実態は労働者なのに、形式的には独立して仕事を請け負う業務委託契約で働くため最低賃金保障もなく、社会保険料も自己負担です。
アマゾンが個人事業主と結ぶ「独立請負業務委託規約」には、一切の雇用関係を認めない旨が記されています。ドライバーは、「国の失業補償または労働災害補償に基づく給付またはいかなる形の支払いも受ける権利を有さず、これらを求めることもできません」。
個人事業主を労働者として保護しようと法整備を進める世界の潮流にならい、日本も法制化を急ぐ必要があります。そうしなければ社会インフラとしての宅配を維持することはできません。(おわり)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年11月10日付掲載
「同じ仕事をしているのに何次下請けの会社に属するかで金額が変わるんです」。アマゾンから委託を受ける元請けの大手運送会社、2次下請け会社の日当はそれぞれ2万4千円と1万8千円。月に22日間働いて、健さんの月給との差額は19万8千円、6万6千円に。
ネット通販企業を頂点にしたピラミッド型の多重下請け構造が賃金格差を。
業界の慣行を横目にアマゾンが拡大しているのが、運送会社を介さず直接個人事業主に配達を委託する制度「アマゾンフレックス」。
実態は労働者なのに、形式的には独立して仕事を請け負う業務委託契約で働くため最低賃金保障もなく、社会保険料も自己負担。
インターネット通販の利用拡大と同時に宅配ドライバーの過重労働が社会問題となっています。配達を委託するだけのネット通販企業はドライバーの人間らしい働き方を保障しようとはしません。
2021年度の宅配便取扱個数は49億5323万個と過去最多を更新しました。新型コロナウイルス禍も相まって、前年度から1億1676万個(約2・4%)増えています。
配達員の多くは労働法が適用されない個人事業主です。ネット通販企業や下請けの運送会社は個人事業主を使って残業規制の網をくぐりぬけ、増える荷量に対応してきました。
膨張を続ける荷量にドライバーの働き方は過酷の度を増し、体力と精神をすり減らす日々に多くのドライバーが去っていきます。
「7次」の例も
都内に住む健さん(25)=仮名=は8月末、個人事業主として1年2カ月所属した運送会社を辞めました。会社は、ネット通販大手・アマゾンの3次下請けです。朝5時ごろ起床し、7時半に指定の倉庫で積み込みを始めます。荷量の多寡に関係なく日当は1万5千円。過酷な勤務に加え、賃金格差への不満が日に日にたまっていきました。
「同じ仕事をしているのに何次下請けの会社に属するかで金額が変わるんです」。アマゾンから委託を受ける元請けの大手運送会社、2次下請け会社の日当はそれぞれ2万4千円と1万8千円。月に22日間働いて、健さんの月給との差額は19万8千円、6万6千円に上りました。
ネット通販企業を頂点にしたピラミッド型の多重下請け構造が賃金格差を生んでいます。元請け会社の下に何社もの下請け企業が連なり、各社が運賃の一部を中抜きする慣行が業界にはびこってきました。運送会社による中間搾取です。取材では、7次下請けまで再委託が繰り返される事例もありました。
アマゾンや大手の運送会社は表向き多重下請けを認めていません。公益社団法人全日本トラック協会は17年に出した行動計画で、「適正取引や安全義務の観点から、全ての取引について、原則、2次下請までに制限する」と明記しています。
実態は労働者
業界の慣行を横目にアマゾンが拡大しているのが、運送会社を介さず直接個人事業主に配達を委託する制度「アマゾンフレックス」です。中抜きもなく、自らの裁量で働けるとの理由から、会社に属さず一匹おおかみとして働くドライバーも少なくありません。
国交省によると、軽貨物の運送業者は20年度末に19万7千人を記録。15年度比4万3千人近く増えました。車両1台から始められる手軽さから、「コロナ禍で飲食業から転向する人も増えています」(運送会社社長)。
しかし、働く実態は労働者なのに、形式的には独立して仕事を請け負う業務委託契約で働くため最低賃金保障もなく、社会保険料も自己負担です。
アマゾンが個人事業主と結ぶ「独立請負業務委託規約」には、一切の雇用関係を認めない旨が記されています。ドライバーは、「国の失業補償または労働災害補償に基づく給付またはいかなる形の支払いも受ける権利を有さず、これらを求めることもできません」。
個人事業主を労働者として保護しようと法整備を進める世界の潮流にならい、日本も法制化を急ぐ必要があります。そうしなければ社会インフラとしての宅配を維持することはできません。(おわり)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年11月10日付掲載
「同じ仕事をしているのに何次下請けの会社に属するかで金額が変わるんです」。アマゾンから委託を受ける元請けの大手運送会社、2次下請け会社の日当はそれぞれ2万4千円と1万8千円。月に22日間働いて、健さんの月給との差額は19万8千円、6万6千円に。
ネット通販企業を頂点にしたピラミッド型の多重下請け構造が賃金格差を。
業界の慣行を横目にアマゾンが拡大しているのが、運送会社を介さず直接個人事業主に配達を委託する制度「アマゾンフレックス」。
実態は労働者なのに、形式的には独立して仕事を請け負う業務委託契約で働くため最低賃金保障もなく、社会保険料も自己負担。