食料輸入がもし止まると 命の危険に直面 軍事以前の大問題
食料危機という「自由貿易が機能しなくなる事態」に直面し、市場原理主義の誤りは白日の下にさらされました。
「今だけ金だけ自分だけ」(3だけ主義)の短絡的な規制撤廃、自由貿易推進(食料の輸入依存)政策は、命を守る安全保障のコストを度外視しています。関税撤廃を含む規制緩和で農家がつぶれ、一部企業が農業でもうける一方で食料自給率が低下し、不測の事態に国民の命が守れなくなっています。
日本の食料を輸入依存病にしたのは米国です。
よく言われる誤解があります。「日本の農地は限られているのに、食生活の変化に伴う食料需要が増大したため対応できなくなった。食生活の変化だから食料自給率が低下したのは仕方がない」と。
では、なぜ食生活が変化したのでしょうか。
これには米国の占領政策が大きく影響しました。戦後、米国は日本を「余剰農産物の最終処分場」とし、小麦、大豆、トウモロコシの実質的関税撤廃をはじめ執ように貿易自由化を迫りました。加えて、日本人の食生活を米食からパン食に改変し、肉食化する大キャンペーンが米国の予算で仕組まれました。これによって米国からの輸入が増え、日本人は米国農産物の輸入依存症にされたのです。
日本の食料自給率は38%で先進国最低水準です。本当はもっと低い。それは、飼料以外の生産資材の自給率が考慮されていないからです。
飼料代高騰などで酪農経営はピンチ。牛乳の自給率が10%台に低下する予測も=茨城県内の酪農家
種について見てみます。野菜の自給率は80%とされていますが、その種は90%が海外の畑で種採りをしてもらいます。コロナ・ショックで物流が止まり、種の入手に不安が広がりました。本当に止まったら、野菜の自給率は80%でなく8%になってしまいます。
化学肥料の深刻な実態も明らかになりました。実は、日本の化学肥料原料のリン、カリウムは100%、尿素は96%が輸入に頼っています。日本がリンと尿素の多くを依存している中国が、国内需要を優先して輸出を抑制し始めた矢先に、ウクライナ戦争で、カリウムの多くを依存してきたロシアとベラルーシが日本には輸出しないという事態になりました。
米ラトガース大学の研究者らの推計によると、局地的な核戦争の勃発による「核の冬」で食料生産の減少と物流停止が起きた場合、2年後の餓死者は、食料自給率の低い日本に集中します。世界の餓死者2・55億人のうち日本の餓死者が約3割、7千万人余を占めるというのです。
今こそ、自給率を上げなければ国民の命は守れません。ところが、肥料も飼料も2倍になり、燃料も3割高となっているにもかかわらず、農産物の販売価格は低いままで、農家の倒産が激増しています。
岸田政権による30兆円規模の補正予算の中には、抜本的な食料安全保障確立予算が入っていません。命を守るコストを考慮したとき、防衛費増額の前にお金をかけて守るべきは国産食料です。
鈴木宣弘(すずき・のぶひろ 東京大学教授)
「しんぶん赤旗」日曜版 2022年11月27日付掲載
11月27日放送のNHKスペシャル 軌を一にして、混迷の世紀「第4回 世界フードショック~揺らぐ『食』の秩序~」を報道。
お金で食料を買うという時代は終わったと。
命のための経済を選択する時は来た。
食をみずからまかなう。
食料を「健康と文化の営み」として位置付ける。
「生きる土台の食」
日本の食料を輸入依存病にしたのは米国。
よく言われる誤解があります。「日本の農地は限られているのに、食生活の変化に伴う食料需要が増大したため対応できなくなった。食生活の変化だから食料自給率が低下したのは仕方がない」と。
米ラトガース大学の研究者らの推計によると、局地的な核戦争の勃発による「核の冬」で食料生産の減少と物流停止が起きた場合、2年後の餓死者は、食料自給率の低い日本に集中。世界の餓死者2・55億人のうち日本の餓死者が約3割、7千万人余を占めるという。
このことは、核戦争ではありませんがNHKの番組でも指摘されていました。
今こそ、自給率を上げなければ国民の命は守れません。岸田政権による30兆円規模の補正予算の中には、抜本的な食料安全保障確立予算が入っていません。命を守るコストを考慮したとき、防衛費増額の前にお金をかけて守るべきは国産食料。
食料危機という「自由貿易が機能しなくなる事態」に直面し、市場原理主義の誤りは白日の下にさらされました。
「今だけ金だけ自分だけ」(3だけ主義)の短絡的な規制撤廃、自由貿易推進(食料の輸入依存)政策は、命を守る安全保障のコストを度外視しています。関税撤廃を含む規制緩和で農家がつぶれ、一部企業が農業でもうける一方で食料自給率が低下し、不測の事態に国民の命が守れなくなっています。
日本の食料を輸入依存病にしたのは米国です。
よく言われる誤解があります。「日本の農地は限られているのに、食生活の変化に伴う食料需要が増大したため対応できなくなった。食生活の変化だから食料自給率が低下したのは仕方がない」と。
では、なぜ食生活が変化したのでしょうか。
これには米国の占領政策が大きく影響しました。戦後、米国は日本を「余剰農産物の最終処分場」とし、小麦、大豆、トウモロコシの実質的関税撤廃をはじめ執ように貿易自由化を迫りました。加えて、日本人の食生活を米食からパン食に改変し、肉食化する大キャンペーンが米国の予算で仕組まれました。これによって米国からの輸入が増え、日本人は米国農産物の輸入依存症にされたのです。
日本の食料自給率は38%で先進国最低水準です。本当はもっと低い。それは、飼料以外の生産資材の自給率が考慮されていないからです。
飼料代高騰などで酪農経営はピンチ。牛乳の自給率が10%台に低下する予測も=茨城県内の酪農家
種について見てみます。野菜の自給率は80%とされていますが、その種は90%が海外の畑で種採りをしてもらいます。コロナ・ショックで物流が止まり、種の入手に不安が広がりました。本当に止まったら、野菜の自給率は80%でなく8%になってしまいます。
化学肥料の深刻な実態も明らかになりました。実は、日本の化学肥料原料のリン、カリウムは100%、尿素は96%が輸入に頼っています。日本がリンと尿素の多くを依存している中国が、国内需要を優先して輸出を抑制し始めた矢先に、ウクライナ戦争で、カリウムの多くを依存してきたロシアとベラルーシが日本には輸出しないという事態になりました。
米ラトガース大学の研究者らの推計によると、局地的な核戦争の勃発による「核の冬」で食料生産の減少と物流停止が起きた場合、2年後の餓死者は、食料自給率の低い日本に集中します。世界の餓死者2・55億人のうち日本の餓死者が約3割、7千万人余を占めるというのです。
今こそ、自給率を上げなければ国民の命は守れません。ところが、肥料も飼料も2倍になり、燃料も3割高となっているにもかかわらず、農産物の販売価格は低いままで、農家の倒産が激増しています。
岸田政権による30兆円規模の補正予算の中には、抜本的な食料安全保障確立予算が入っていません。命を守るコストを考慮したとき、防衛費増額の前にお金をかけて守るべきは国産食料です。
鈴木宣弘(すずき・のぶひろ 東京大学教授)
「しんぶん赤旗」日曜版 2022年11月27日付掲載
11月27日放送のNHKスペシャル 軌を一にして、混迷の世紀「第4回 世界フードショック~揺らぐ『食』の秩序~」を報道。
お金で食料を買うという時代は終わったと。
命のための経済を選択する時は来た。
食をみずからまかなう。
食料を「健康と文化の営み」として位置付ける。
「生きる土台の食」
日本の食料を輸入依存病にしたのは米国。
よく言われる誤解があります。「日本の農地は限られているのに、食生活の変化に伴う食料需要が増大したため対応できなくなった。食生活の変化だから食料自給率が低下したのは仕方がない」と。
米ラトガース大学の研究者らの推計によると、局地的な核戦争の勃発による「核の冬」で食料生産の減少と物流停止が起きた場合、2年後の餓死者は、食料自給率の低い日本に集中。世界の餓死者2・55億人のうち日本の餓死者が約3割、7千万人余を占めるという。
このことは、核戦争ではありませんがNHKの番組でも指摘されていました。
今こそ、自給率を上げなければ国民の命は守れません。岸田政権による30兆円規模の補正予算の中には、抜本的な食料安全保障確立予算が入っていません。命を守るコストを考慮したとき、防衛費増額の前にお金をかけて守るべきは国産食料。