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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

テレビ時評 Eテレ売却論に思う

2021-01-18 06:46:10 | 赤旗記事特集
テレビ時評 Eテレ売却論に思う
城西国際大学教授 佐滝剛弘
(1983年NHK入局、主に番組制作に携わり、日放労委員長も歴任。2020年から現職)



昨秋からNHKの地上波の第二チャンネルである「Eテレ」への議論が週刊誌やそれを受けたネット上で続いている。

□■多様性を担保
きっかけは、内閣官房参与の一人が、週刊誌上で、「Eテレを売却すれば、受信料は半額に引き下げられる」と主張したことである。そのセンセーショナルな見出しが議論に火をつけ、「Eテレこそ、公共放送の存在価値だ」などの反論が噴出した。さらに昨今、NHKがテレビ設置届け出の義務化を求めたり、総務大臣が受信料の収納に対し郵便局との連携を提案するなど、受信料のあり方が取りざたされていることも市民の関心をより高めたという背景もあろう。
一部誤解もあるようだが、参与の提言はEテレの番組そのものをなくすということではなく、Eテレのコンテンツはネット配信などに移行し、空いた電波の帯域を売却したらどうかというものである。
まず、今回の反論に見られるように、Eテレには手話ニュースや数々の講座番組などハンディを持つ人に向けた番組や手軽で安価に「学習」をしたい人に向けた番組など、高い視聴率は見込めないが社会の多様性を担保したり、誰でも学習の機会が得られるような番組が編成されており、視聴率競争が激しい民放では放送しづらいという事実がある。Eテレこそ公共放送の良心だといわれる大きな理由である。
一方で、これらの番組は地上波の枠で多く放送されているニュースや情報番組のように、「ライブ」で見る必要はないものが多い。インターネットの普及と若年層のテレビ離れが進み、当のNHK自身がネット進出に積極的である以上、Eテレの番組群はこの際ネットに全面的に移行して電波を空けるということも決して現実と乖離(かいり)した話ではない。それでもこの提言にすぐには頷(うなず)けない点が二つある。
一つは、NHKが総合テレビ以外にチャンネルを持っている意義である。Eテレには、総合テレビではお目にかかりにくい、人権や差別に焦点を当てた優れた番組群もある。2020年春に放送された、「桜を見る会」を題材にした『バリバラ』のような時の権力を健全に批判する視点を持った番組もある。こうした番組は、現在の体制では、チェックが厳しい総合テレビではほとんど放送できない。Eテレのように、あまり注目を浴びない「マージナル(中心ではなく周縁)な波」を持っていることが番組の多様性につながるし、それがネットではなく、チャンネルのザッピングで目に留まる位置にあることがその多様性を担保していると考えることができる。

□■根拠にならぬ
二点目は、参与はEテレの帯域の売却で受信料は半減できるとしているが、さすがにこれは暴論であろう。受信料の最大の支出は番組の「制作費」だが、Eテレの制作費は総合テレビの10分の1以下である。またいうまでもなく、番組の出口がネットに変わっても制作費は変わらないし、人件費も半分になるには程遠い。その帯域が一時的に高く売れたとしても、それが永続的に受信料を半額にできる根拠にはならない。
とはいえ、これまで公共放送が生み出すコンテンツの価値を多面的に検証する議論はあまりされてこなかった。Eテレが旭上(そじょう)に載せることをきっかけに、単にNHKを見る見ないとか受信料が高い安いという視点とは異なった議論が湧き上がることは重要であろう。
(さたき・よしひろ)◇

「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年1月17日付掲載


Eテレは、単なる教育番組というだけでなく、視聴率は低いけど、ETV特集などは見る価値のある番組がある。
ネット配信というやり方もあるかもしれないが、地上波で提供することが大事だ。

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