大阪市の学校“3密”(上) 緊急事態下で統廃合工事
新型コロナウイルス感染症で3密(密集・密接・密閉)の回避が課題になるなか、これまで国が進めてきた学校統廃合も見直しが必要になっています。ところが、橋下徹、吉村洋文、松井一郎と3代続けて大阪維新の会の人物が市長を務める大阪市では、緊急事態宣言中から統廃合を上から押し付ける動きを加速しています。同市生野区の現場を歩きました。
住民に隠し推進
「市が突然工事に着手したのは、感染がピークに達していた4月20日。地域や保護者にも知らせず、当初は施工業者などを記した標識もなし。法律違反だと指摘され慌てて掲示しましたが、住民に隠して進める意図は明らかです」
「生野区の学校統廃合を考える会」(連合振興町会長4氏が共同代表)の室谷雄二事務局長は、西生野小学校の工事現場を前に憤ります。工事は、同小と隣接する生野中学校と敷地を一体化して校舎を増設し、さらに近隣の3小学校を統合するためのものです。
着工の2日前には市内の新型コロナの新規陽性者が58人を記録。この数はいまも同市の最大値です。市民に外出自粛や休業を呼び掛ける裏で、ひそかに重機を搬入し工事を強行していたのです。
源流は2012年にさかのぼります。当時の橋下市長が、市教育委員会に市内約300の小学校のうち3分の1を統廃合する計画を作成するように指示。なかでも小規模校が多い生野区が標的とされ、16年には区内西地域を四つの中学校区に分け5中12小を4中4小に再編する計画が発表されました。
生野中学校区の林寺小学校(全学年1学級)の場合、現在11~23人の学級規模が統廃合後は3年生と5年生では40人、他の学年も29~31人に膨らみます(19年度で試算)。室谷さんは、緊急事態宣言直後も分散登校せずにすんだ小規模校の良さが失われると語ります。
大阪市は緊急事態宣言中に学校統廃合に向けた工事を強行。西生野小学校脇の非常に狭い道をときには10トントラックが通過する。
移動は500メートル以上
さらに田島中学校区では、同中の校庭を斜めに分断し地上21メートル5階建て(屋上プール)の校舎を新築し、同中と近隣2小学校を統合する計画です。校庭が狭くいびつになるため、市教委は廃止する田島小の校庭を併用するといいます。しかし、同小までは信号を渡って500メートル以上あり、短い休憩時間に移動できるのか、移動中の安全を確保できるのかなど懸念が尽きません。
田島小学校PTA有志と同OB会有志は、計画の変更・延期を求める要望書を市に提出。密接、密集を増やす計画では「子どもの『学びの保障』ができる環境にはありません」と訴えます。
子どもも教師も疲弊
「授業参観に行っても自分の子どもの姿は見えないし、子どもたちも教師の目が行き届かないと分かっているので、あちこちで私語を始め、授業が成り立たなくなっていく」
勝山小学校に子どもが通う女性2人は、昨年の小学4年生の参観の様子をそう語ります。大阪市は2年生までは35人以下、3年生以降は40人以下で学級編成します。子どもが荒れだしたのは、2年生まで2学級各20人程度だったクラスが、3年生で1学級40人になってからだといいます。
日本共産党の西田さえ子生野区市政対策委員長(正面)と話す、勝山小学校に子どもが通う女性たち
「暴れる子を教師がむりやり連れていったり、他のクラスの教師からたびたび『うるさい』と怒られたり。それがまた子どものストレスになる。教師も疲弊していた」
2人は今年2月、2学級にすることを求める署名に取り組み、多くの保護者から賛同を得ました。緊急事態宣言解除後、3密対策で学級が一時的に二つに分けられると、子どもの様子が激変したと語ります。
「いつも怒られていた子が落ち着いて授業を受けるようになって、授業後もみんなと一緒に学校で宿題をしてから帰るようになった。子どものストレスが全然違う」
市は、小規模校では競争心が育たないといいます。2人は「競争はいらない。親同士の顔が見え、徒歩で通える学校でゆったり育ってほしい」と強調。市がコロナ対策で全児童・生徒にフェイスガードを配ったことにも、「それじゃない」とあきれます。
「フェイスガードより、教室に子どもたちを詰め込むのをやめてほしい。少子化で教室は空いている。少人数学級はやる気があればできると思う」
通学圏が広がることで、車や自転車が大量に通る道が通学路になることにも不安の声があがります。舎利寺(しゃりじ)小学校に子どもが通う田中昭博さんは、再編先の生野中学校が母校。中学生のとき通学中に熱中症になったことがあるといいます。
「中学生でも生野中は遠かった。重いランドセルをしょって低学年の子が本当に通えるのか」
大阪市学校園教職員組合の宮城登委員長は、通学圏が広がると放課後の遊び時間が減り、遠い地域の子とは遊べなくなるとし「子どもの生活が制約されることになる」と語ります。
(つづく)
日本共産党の緊急提言
日本共産党は6月2日発表の緊急提言で、新型コロナによる休校で生じた学習遅れや教育格差を解消するうえでも、感染予防で身体的距離を確保するうえでも、教員10万人増など教育条件の抜本的整備が必要だと主張。教員10万人増を少人数学級移行のステップにすることを呼び掛けています。
「しんぶん赤旗」日刊紙 2020年6月27日付掲載
小学校が統廃合されると、クラスの人数が20人だったものが40人になるなど、必然的に増えていく。
また、長距離通学などのリスクもでてくる。
新型コロナウイルス感染症で3密(密集・密接・密閉)の回避が課題になるなか、これまで国が進めてきた学校統廃合も見直しが必要になっています。ところが、橋下徹、吉村洋文、松井一郎と3代続けて大阪維新の会の人物が市長を務める大阪市では、緊急事態宣言中から統廃合を上から押し付ける動きを加速しています。同市生野区の現場を歩きました。
住民に隠し推進
「市が突然工事に着手したのは、感染がピークに達していた4月20日。地域や保護者にも知らせず、当初は施工業者などを記した標識もなし。法律違反だと指摘され慌てて掲示しましたが、住民に隠して進める意図は明らかです」
「生野区の学校統廃合を考える会」(連合振興町会長4氏が共同代表)の室谷雄二事務局長は、西生野小学校の工事現場を前に憤ります。工事は、同小と隣接する生野中学校と敷地を一体化して校舎を増設し、さらに近隣の3小学校を統合するためのものです。
着工の2日前には市内の新型コロナの新規陽性者が58人を記録。この数はいまも同市の最大値です。市民に外出自粛や休業を呼び掛ける裏で、ひそかに重機を搬入し工事を強行していたのです。
源流は2012年にさかのぼります。当時の橋下市長が、市教育委員会に市内約300の小学校のうち3分の1を統廃合する計画を作成するように指示。なかでも小規模校が多い生野区が標的とされ、16年には区内西地域を四つの中学校区に分け5中12小を4中4小に再編する計画が発表されました。
生野中学校区の林寺小学校(全学年1学級)の場合、現在11~23人の学級規模が統廃合後は3年生と5年生では40人、他の学年も29~31人に膨らみます(19年度で試算)。室谷さんは、緊急事態宣言直後も分散登校せずにすんだ小規模校の良さが失われると語ります。
大阪市は緊急事態宣言中に学校統廃合に向けた工事を強行。西生野小学校脇の非常に狭い道をときには10トントラックが通過する。
移動は500メートル以上
さらに田島中学校区では、同中の校庭を斜めに分断し地上21メートル5階建て(屋上プール)の校舎を新築し、同中と近隣2小学校を統合する計画です。校庭が狭くいびつになるため、市教委は廃止する田島小の校庭を併用するといいます。しかし、同小までは信号を渡って500メートル以上あり、短い休憩時間に移動できるのか、移動中の安全を確保できるのかなど懸念が尽きません。
田島小学校PTA有志と同OB会有志は、計画の変更・延期を求める要望書を市に提出。密接、密集を増やす計画では「子どもの『学びの保障』ができる環境にはありません」と訴えます。
子どもも教師も疲弊
「授業参観に行っても自分の子どもの姿は見えないし、子どもたちも教師の目が行き届かないと分かっているので、あちこちで私語を始め、授業が成り立たなくなっていく」
勝山小学校に子どもが通う女性2人は、昨年の小学4年生の参観の様子をそう語ります。大阪市は2年生までは35人以下、3年生以降は40人以下で学級編成します。子どもが荒れだしたのは、2年生まで2学級各20人程度だったクラスが、3年生で1学級40人になってからだといいます。
日本共産党の西田さえ子生野区市政対策委員長(正面)と話す、勝山小学校に子どもが通う女性たち
「暴れる子を教師がむりやり連れていったり、他のクラスの教師からたびたび『うるさい』と怒られたり。それがまた子どものストレスになる。教師も疲弊していた」
2人は今年2月、2学級にすることを求める署名に取り組み、多くの保護者から賛同を得ました。緊急事態宣言解除後、3密対策で学級が一時的に二つに分けられると、子どもの様子が激変したと語ります。
「いつも怒られていた子が落ち着いて授業を受けるようになって、授業後もみんなと一緒に学校で宿題をしてから帰るようになった。子どものストレスが全然違う」
市は、小規模校では競争心が育たないといいます。2人は「競争はいらない。親同士の顔が見え、徒歩で通える学校でゆったり育ってほしい」と強調。市がコロナ対策で全児童・生徒にフェイスガードを配ったことにも、「それじゃない」とあきれます。
「フェイスガードより、教室に子どもたちを詰め込むのをやめてほしい。少子化で教室は空いている。少人数学級はやる気があればできると思う」
通学圏が広がることで、車や自転車が大量に通る道が通学路になることにも不安の声があがります。舎利寺(しゃりじ)小学校に子どもが通う田中昭博さんは、再編先の生野中学校が母校。中学生のとき通学中に熱中症になったことがあるといいます。
「中学生でも生野中は遠かった。重いランドセルをしょって低学年の子が本当に通えるのか」
大阪市学校園教職員組合の宮城登委員長は、通学圏が広がると放課後の遊び時間が減り、遠い地域の子とは遊べなくなるとし「子どもの生活が制約されることになる」と語ります。
(つづく)
日本共産党の緊急提言
日本共産党は6月2日発表の緊急提言で、新型コロナによる休校で生じた学習遅れや教育格差を解消するうえでも、感染予防で身体的距離を確保するうえでも、教員10万人増など教育条件の抜本的整備が必要だと主張。教員10万人増を少人数学級移行のステップにすることを呼び掛けています。
「しんぶん赤旗」日刊紙 2020年6月27日付掲載
小学校が統廃合されると、クラスの人数が20人だったものが40人になるなど、必然的に増えていく。
また、長距離通学などのリスクもでてくる。
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