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改定60年素顔の安保① 岸首相も「憲法・国連の枠内」と言っていたのに 変質した条約続けるのか

2020-01-19 08:19:35 | 平和・憲法・歴史問題について
改定60年素顔の安保① 岸首相も「憲法・国連の枠内」と言っていたのに 変質した条約続けるのか
軍事ジャーナリスト 前田哲男さん
まえだ・てつお=1938年福岡県生まれ。長崎放送記者を経て、フリージャーナリスト。元東京国際大学教授。近著に『イージス・アショアの争点』(緑風出版、共著)



1月19日で現行の日米安保条約が調印されてから60年です。同条約のもと日本はどうなっているのか。軍事ジャーナリストの前田哲男さんに聞きました。田中一郎記者

【安保条約とは】
旧条約は1951年に結ばれました。米国が占領中につくりあげた基地をまるごと米軍に提供するものでした。60年に現行の条約に改定されました。米軍と共同してたたかう共同作戦条項などを新たに盛り込み、日本を米国の戦争に巻き込む対米従属の軍事同盟に改悪・強化するものでした。

【安保条約の関連年表】
1945年 アジア・太平洋戦争が終わり、米軍占領始まる
1947年 日本国憲法施行
1951年 サンフランシスコ平和条約、日米安保条約調印
1952年 両条約発効。沖縄では米軍占領続く
1960年 改定安保条約、地位協定調印
1972年 沖縄が粗国復帰
2001年 インド洋に自衛隊派兵
2003年 イラクに自衛隊派兵
2014年 集団的自衛権行使容認を閣議決定
2015年 安保法制(戦争法)の国会成立
2019年 自衛隊の中東派兵を閣議決定


米いいなり 閣議決定だけで中東派兵
世論調査でみると、安保条約を肯定的に評価する人は約8割です(内閣府調査、2018年)。しかし、オスプレイの配備や米軍機の低空飛行、辺野古の米軍新基地建設などへの国民の批判は強いものがあります。
米軍機による低空飛行が野放しなのは、日米地位協定に基づく特例法により日本の航空法の米軍適用が除外されているからです。こうした米軍の特権を定めた地位協定は、日米安保の「素顔」ともいうべきものです。全国知事会は、その改定を求めています。安保条約の素顔に国民の支持があるわけではありません。

米軍と自衛隊の一体化進む
作戦体制は地球規模

60年前に現行安保条約を調印した岸信介首相は当時、この条約には「二つの大きな前提がある」として①「日本国憲法の枠内ですべてのことが律せられる」②「国連憲章の枠内において結ばれておる」―などと説明していました。(60年2月26日の衆院安保特別委員会)
「憲法の枠内」という点でいえば、このとき岸首相は「(自衛隊は)いかなる場合においても、領土外に出て実力を行使することはあり得ないという建前を厳守すべきことは、日本の憲法の特質だ」と述べました。
しかし、2001年の同時多発テロ後、「ショー・ザ・フラッグ」(日本の国旗を見せろ)、「ブーツ・オン・ザ・グラウンド」(地上部隊派兵)という米国の要求を受け、小泉政権は自衛隊をインド洋・イラクに派兵(01~10年)。安倍政権になってからは14年の閣議決定で集団的自衛権行使を容認、15年の安保法制成立で、米軍と自衛隊の一体化が進み、地球規模で作戦できる体制がつくられました。
そして今度は海上自衛隊の中東派兵です。
インド洋・イラク派兵のとき政府は特措法をつくって対応しました。今回はそれすらなく、閣議決定だけです。その無法ぶりはきわめて危険です。米国の要求に応えるため、ここまで締まりのない、けじめのない姿勢をとるにいたっています。
中東派兵で想起するのは1937年の盧溝橋事件です。当時、北京近郊に駐屯していた日本軍は偶発的な発砲を契機に中国軍と衝突し、それが日中全面戦争、太平洋戦争へと拡大しました。
今回の中東派兵でも、偶発的事件がきっかけに戦乱が拡大する危険はないのか。実力部隊を送り込むにもかかわらず、そうした検討が政府内で真剣になされているように見えない。安保改定60年を経て、ここまで政治が退廃しています。

イラク戦争で在日米軍出撃
国連憲章違反問わず

「国連憲章の枠内」という点でも、日本政府は国連憲章違反のイラク戦争(2003年開戦)を支持し、在日米軍によるイラク出撃も問題視しませんでした。安保条約は5条で、日本防衛の際に日米両軍が共同対処することを定めています。6条では、米軍の駐留目的を「極東における国際の平和及び安全の維持」としています。
しかし在日米軍は、日本防衛も極東の範囲も超え、イラク戦争にも出撃する。安保条約の運用実態は、当初の政府説明とは似ても似つかぬものになっています。かくも変質した条約を維持し続ける意味は、もはや見いだしがたい。

米兵器爆買い、経費負担増
歴代日本政治の失策

トランプ政権が最近、在日米軍駐留経費の日本側負担を現状の約4倍にするよう求めたと報じられています。
安保条約と同時に結ばれた地位協定は“基地の提供をのぞき、費用は米側負担”と定めています。しかし協定に反して78年度から「思いやり予算」が始まりました。本来なら協定改定がスジでしょう。それをしないのは、改定論議が始まれば、協定が定める米軍の特権も問題になることを米側が恐れているからでしょう。
日本側も米国の要求に従うだけです。独立国として毅然(きぜん)と対応せず、改定を持ち出さなかった。「憲法の枠内」「国連憲章の枠内」といった約束から逸脱し、地位協定も守らない。そうしたことを許している日本政府の歴史の積み重ねが、米側をつけあがらせているのです。
トランプ政権は超高額な米国製兵器の購入も迫っています。陸上配備型迎撃システム「イージス・アショア」導入は、その一つです。日本政府は、秋田と山ロへの配備を決めると、辺野古での米軍新基地建設の手法と同様、強硬に地元に受け入れを迫ってきました。
しかし政府の思惑通りに進んでいません。秋田では参院選でイージス・アショア配備反対を掲げる野党統一候補が勝利しました。政府内には「秋田配備見直し」論が浮上していると報じられています。
野党統一候補が勝利したのは、秋田県民が「イージス・アショアは安全ではなく危険を押し付けるものだ」と見破ったからです。沖縄県民も新基地の危険を共有しています。こうした安保条約の素顔、実態を今後も引き継いでいくのか。「安保の素顔」が伝われば、国民の意識は大きく変化していくかもしれません。

安保条約改定から60年。同条約は日本国民にどんな害悪をもたらしてきたのか。「改定60年素顔の安保」と題し、シリーズで考えていきます。

「しんぶん赤旗」日曜版 2020年1月19日付掲載


世論調査では「安保条約」の肯定が8割。圧倒的世論です。
しかし、実際の弊害で見てみると、オスプレイの配備や米軍機の低空飛行、辺野古の米軍新基地建設などへの国民の批判は強い。
2001年の同時多発テロ後、「ショー・ザ・フラッグ」(日本の国旗を見せろ)、「ブーツ・オン・ザ・グラウンド」(地上部隊派兵)で自衛隊に課せられた役割は質的に変化しています。

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