JAXA法を改定 宇宙の軍事利用に民間技術取り込む
岸田文雄政権は、国立研究開発法人・宇宙航空研究開発機構(JAXA)法を改定し、民間企業や大学への資金提供機能を加えました。
JAXAは、宇宙科学技術の先端的な研究開発で、企業・大学と連携しています。法改定で、先端的な研究開発を担う企業や、大学、研究機関への助成金拠出が可能となったため、そのための基金を設置しました。
10年間で1兆円
基金は内閣府主導のもと、JAXAを所管する文部科学省、宇宙関連事業を所管する経済産業省、総務省が資金を拠出。10年間で1兆円規模とされ、2023年度補正予算には計3000億円が盛り込まれました。
政府は、基金で新興企業の支援などを行い、宇宙産業の市場規模を現在の4兆円から30年早期に8兆円に倍加させる計画です。
JAXAの民間支援機能の強化の背景には、民間の宇宙技術の軍事転用を進める狙いがあります。
政府は、今年度中に策定予定の「宇宙技術戦略」で、技術開発から商業化に至るまでの国の集中支援の工程表を提示します。JAXAが同戦略の「中核機関」を担います。支援の柱には、ミサイル防衛のための「衛星コンステレーション(小型衛星群)」が位置付けられています。
JAXAの小惑星探査機「はやぶさ」(手前)などの実物大模型
米国が運用するGPS(全地球測位システム)の補完・補強が目的の測位衛星「みちびき」(イラスト=内閣府宇宙開発戦略推進事務局提供)
今年6月に策定された「宇宙安全保障構想」では、JAXA基金などを念頭に「政府が安全保障上重要な技術開発を行う企業を支援する」と指摘されていました。6月改定の「宇宙基本計画」では宇宙科学技術の「デュアルユース(軍事転用)」を踏まえた官民協力が強調されました。
JAXAの基金が政府の宇宙軍拡政策のために使われる危険があります。
経団連は「宇宙基本計画に向けた提言」(3月14日公表)で、企業の研究開発を支援するJAXAへの基金設置と併せ、安全保障分野でのJAXAの機能強化を要求しました。
政府は、24年度中に米国防総省が運用する光学センサーを搭載した衛星を打ち上げる予定です。米軍がアジアの静止軌道上での宇宙領域認識を強化することが狙いです。JAXAが開発中の新型「H3ロケット」で打ち上げるとしています。「宇宙は、今や明白な戦闘領域である」(20年6月、国防宇宙戦略)と位置づける米国の宇宙での軍事活動にJAXAが協力することになります。
歯止め規定なし
JAXA本来の役割には平和目的の宇宙開発があります。「わが国における宇宙開発及び利用の基本に関する決議」(1969年5月9日)は、宇宙開発について「平和の目的に限り」とし、JAXAの前身の宇宙開発事業団の事業目的も「平和の目的に限」ることを掲げました。このもとでJAXAは探査機「はやぶさ」シリーズによる小惑星試料の採集など宇宙の解明に貢献してきました。
しかし2012年のJAXA法改定で平和目的への限定を定めた文言が削除されました。軍事利用に対する歯止め規定が外されたもと、岸田政権は日米一体の宇宙軍拡にJAXAを組み込もうとしています。
(日隈広志)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2023年12月7日付掲載
JAXAの民間支援機能の強化の背景には、民間の宇宙技術の軍事転用を進める狙いが。支援の柱には、ミサイル防衛のための「衛星コンステレーション(小型衛星群)」が位置付け。
JAXA本来の役割には平和目的の宇宙開発が。このもとでJAXAは探査機「はやぶさ」シリーズによる小惑星試料の採集など宇宙の解明に貢献。
軍事利用に対する歯止め規定が外されたもと、岸田政権は日米一体の宇宙軍拡にJAXAを組み込もうと。
岸田文雄政権は、国立研究開発法人・宇宙航空研究開発機構(JAXA)法を改定し、民間企業や大学への資金提供機能を加えました。
JAXAは、宇宙科学技術の先端的な研究開発で、企業・大学と連携しています。法改定で、先端的な研究開発を担う企業や、大学、研究機関への助成金拠出が可能となったため、そのための基金を設置しました。
10年間で1兆円
基金は内閣府主導のもと、JAXAを所管する文部科学省、宇宙関連事業を所管する経済産業省、総務省が資金を拠出。10年間で1兆円規模とされ、2023年度補正予算には計3000億円が盛り込まれました。
政府は、基金で新興企業の支援などを行い、宇宙産業の市場規模を現在の4兆円から30年早期に8兆円に倍加させる計画です。
JAXAの民間支援機能の強化の背景には、民間の宇宙技術の軍事転用を進める狙いがあります。
政府は、今年度中に策定予定の「宇宙技術戦略」で、技術開発から商業化に至るまでの国の集中支援の工程表を提示します。JAXAが同戦略の「中核機関」を担います。支援の柱には、ミサイル防衛のための「衛星コンステレーション(小型衛星群)」が位置付けられています。
JAXAの小惑星探査機「はやぶさ」(手前)などの実物大模型
米国が運用するGPS(全地球測位システム)の補完・補強が目的の測位衛星「みちびき」(イラスト=内閣府宇宙開発戦略推進事務局提供)
今年6月に策定された「宇宙安全保障構想」では、JAXA基金などを念頭に「政府が安全保障上重要な技術開発を行う企業を支援する」と指摘されていました。6月改定の「宇宙基本計画」では宇宙科学技術の「デュアルユース(軍事転用)」を踏まえた官民協力が強調されました。
JAXAの基金が政府の宇宙軍拡政策のために使われる危険があります。
経団連は「宇宙基本計画に向けた提言」(3月14日公表)で、企業の研究開発を支援するJAXAへの基金設置と併せ、安全保障分野でのJAXAの機能強化を要求しました。
政府は、24年度中に米国防総省が運用する光学センサーを搭載した衛星を打ち上げる予定です。米軍がアジアの静止軌道上での宇宙領域認識を強化することが狙いです。JAXAが開発中の新型「H3ロケット」で打ち上げるとしています。「宇宙は、今や明白な戦闘領域である」(20年6月、国防宇宙戦略)と位置づける米国の宇宙での軍事活動にJAXAが協力することになります。
歯止め規定なし
JAXA本来の役割には平和目的の宇宙開発があります。「わが国における宇宙開発及び利用の基本に関する決議」(1969年5月9日)は、宇宙開発について「平和の目的に限り」とし、JAXAの前身の宇宙開発事業団の事業目的も「平和の目的に限」ることを掲げました。このもとでJAXAは探査機「はやぶさ」シリーズによる小惑星試料の採集など宇宙の解明に貢献してきました。
しかし2012年のJAXA法改定で平和目的への限定を定めた文言が削除されました。軍事利用に対する歯止め規定が外されたもと、岸田政権は日米一体の宇宙軍拡にJAXAを組み込もうとしています。
(日隈広志)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2023年12月7日付掲載
JAXAの民間支援機能の強化の背景には、民間の宇宙技術の軍事転用を進める狙いが。支援の柱には、ミサイル防衛のための「衛星コンステレーション(小型衛星群)」が位置付け。
JAXA本来の役割には平和目的の宇宙開発が。このもとでJAXAは探査機「はやぶさ」シリーズによる小惑星試料の採集など宇宙の解明に貢献。
軍事利用に対する歯止め規定が外されたもと、岸田政権は日米一体の宇宙軍拡にJAXAを組み込もうと。
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