性犯罪刑法改正⑤ 被害実態に即した刑法に
性暴力では、加害者が親や教師など、被害者に対する身分や地位の優位性、職場の業務上の関係などを利用して犯行に至るケースが多くあります。こうした「顔見知り」の犯行は長期間、表面化されないことも多く、被害者を苦しめています。法務省の「性犯罪に関する刑事法検討会」で大きなテーマとなっています。
顔見知り圧倒的
法務省の「性犯罪に関する施策検討に向けた実態調査ワーキンググループ取りまとめ報告書」では、18年度の一審での有罪事件172件のうち、実・養父(58件)を最多として、教師や職場の上司など何らかの「顔見知り」が65%(112件)に上りました。
臨床心理士の齋藤梓氏らの「性暴力の被害経験に関する質的調査報告」によれば、地位・関係性が利用された場合、「暴行・脅迫」を用いなくても被害者を抵抗不能とし、「同意のない性交」に至ると指摘されています。
前出の法務省の調査では、被害者が18歳未満の場合(106件)、9割超が、被害者に対して優位な立場にある「顔見知り」の犯行でした。
子どもへの性加害は、性的虐待やポルノ被害、性売買の問題にもつながり、とくに深刻な問題です。
検討会の「論点整理(案)」にはこうした地位・関係性を利用した犯罪類型の新設や、被害発生から10年とされている強制性交等罪の「公訴時効」の撤廃・延期などが盛り込まれました。
18歳未満の被害に対する論点としては、「監護者性交等罪」の「監護者」が、現在は親や養護施設職員などに狭く限定されている範囲の拡大や、13歳という性交同意年齢の引き上げなどが挙がっています。
森法相に要望書を手渡すSpringの山本潤代表理事(右から2人目)ら=3月17日、法務省内
法務省検討会の「論点整理(案)」の内容
予想超す回答数
9月以降、検討会では法改正への議論が本格化します。これに向け、性暴力被害の当事者支援を行う「SPring」(山本潤代表理事)は、改めて被害の実態を踏まえることの重要性を訴えています。検討会に提出予定の「性被害の実態調査アンケート」には、今月16日の開始からわずか14時間で回答が1000件超、16、17日の2日間で約3000件に到達しました。
Sprin9副代表の佐藤由紀子氏は次のように語ります。
「予想をはるかに超えた回答数に大変驚くと同時に、私は性暴力被害サバイバー(生き抜いた人)の1人として大きなショックを受けました。今まで埋もれていた、こんなにもたくさんの性暴力被害が浮き彫りになったからです。この回答数はまた、『性暴力被害にあった言いようのない苦しさ』、『被害後を生きる上での困難さ』、被害に遭われた方が声をあげることが『いかに困難か』ということも表しています。検討会委員には、この『性暴力被害の実際』を真摯(しんし)に受け止め、被害実態に即した刑法のあり方に向けて議論をしていただきたいです」
(おわり)(このシリーズは日隈広志が担当しました)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2020年8月27日付掲載
性犯罪刑法の改正。これでもかってぐらいに網羅的に、抜け道のないような法体系にしないといけませんね。
女性を犯したいと狙っている男性は、まさに狡猾ですから。
性暴力では、加害者が親や教師など、被害者に対する身分や地位の優位性、職場の業務上の関係などを利用して犯行に至るケースが多くあります。こうした「顔見知り」の犯行は長期間、表面化されないことも多く、被害者を苦しめています。法務省の「性犯罪に関する刑事法検討会」で大きなテーマとなっています。
顔見知り圧倒的
法務省の「性犯罪に関する施策検討に向けた実態調査ワーキンググループ取りまとめ報告書」では、18年度の一審での有罪事件172件のうち、実・養父(58件)を最多として、教師や職場の上司など何らかの「顔見知り」が65%(112件)に上りました。
臨床心理士の齋藤梓氏らの「性暴力の被害経験に関する質的調査報告」によれば、地位・関係性が利用された場合、「暴行・脅迫」を用いなくても被害者を抵抗不能とし、「同意のない性交」に至ると指摘されています。
前出の法務省の調査では、被害者が18歳未満の場合(106件)、9割超が、被害者に対して優位な立場にある「顔見知り」の犯行でした。
子どもへの性加害は、性的虐待やポルノ被害、性売買の問題にもつながり、とくに深刻な問題です。
検討会の「論点整理(案)」にはこうした地位・関係性を利用した犯罪類型の新設や、被害発生から10年とされている強制性交等罪の「公訴時効」の撤廃・延期などが盛り込まれました。
18歳未満の被害に対する論点としては、「監護者性交等罪」の「監護者」が、現在は親や養護施設職員などに狭く限定されている範囲の拡大や、13歳という性交同意年齢の引き上げなどが挙がっています。
森法相に要望書を手渡すSpringの山本潤代表理事(右から2人目)ら=3月17日、法務省内
法務省検討会の「論点整理(案)」の内容
刑事実体法について | |
1 | 現行法の運用の実情と課題(総論的事項) |
2 | 暴行・脅迫や心神喪失・抗拒不能の要件の在り方 強制性交等罪の暴行・脅迫の要件、準強制性交等罪の心神喪失・抗拒不能の要件を撤廃し、不同意の要件化 |
3 | 地位・関係性を利用した犯罪類型の在り方 「監護者」の範囲の拡大 地位・関係性などを利用に対する新たな処罰規定の導入 |
4 | いわゆる性交同意年齢の在り方13歳からの性交同意年齢の引き上げ |
5 | 強制性交等の罪の対象となる行為の範囲 |
6 | 法定刑の在り方 |
7 | 配偶者間等の性的行為に対する処罰規定の在り方 |
8 | 性的姿態の撮影行為に対する処罰規定の在り方 |
刑事手続法について | |
1 | 公訴時効の在り方 強制性交等罪の公訴時効の撤廃・延長 |
2 | 起訴状等における被害者等の氏名の取り扱いの在り方 |
3 | いわゆるレイプシールド(訴訟での性暴力被害者の保護)の在り方 |
4 | 司法面接的手法による聴取結果の証拠法上の取り扱いの在り方 |
予想超す回答数
9月以降、検討会では法改正への議論が本格化します。これに向け、性暴力被害の当事者支援を行う「SPring」(山本潤代表理事)は、改めて被害の実態を踏まえることの重要性を訴えています。検討会に提出予定の「性被害の実態調査アンケート」には、今月16日の開始からわずか14時間で回答が1000件超、16、17日の2日間で約3000件に到達しました。
Sprin9副代表の佐藤由紀子氏は次のように語ります。
「予想をはるかに超えた回答数に大変驚くと同時に、私は性暴力被害サバイバー(生き抜いた人)の1人として大きなショックを受けました。今まで埋もれていた、こんなにもたくさんの性暴力被害が浮き彫りになったからです。この回答数はまた、『性暴力被害にあった言いようのない苦しさ』、『被害後を生きる上での困難さ』、被害に遭われた方が声をあげることが『いかに困難か』ということも表しています。検討会委員には、この『性暴力被害の実際』を真摯(しんし)に受け止め、被害実態に即した刑法のあり方に向けて議論をしていただきたいです」
(おわり)(このシリーズは日隈広志が担当しました)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2020年8月27日付掲載
性犯罪刑法の改正。これでもかってぐらいに網羅的に、抜け道のないような法体系にしないといけませんね。
女性を犯したいと狙っている男性は、まさに狡猾ですから。
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