核ゴミ列島 たまる一方 使用済み核燃料
たまる一方 使用済み核燃料
「トイレなきマンション」―。原子力発電所の致命的欠陥を指摘する言葉です。危険な使用済み核燃料を安全に処理する技術がいまだ確立されていないからです。地震、津波の危険のなか、列島にたまる一方の使用済み核燃料。いまどれだけあるのか―。
「しんぶん赤旗」日曜版の編集部は電力各社の公表資料をもとに各原発に貯蔵されている、“核のゴミ”、使用済み核燃料を調査しました。(下図)
使用済み核燃料は平均70~72本の核燃料棒を一つの燃料集合体に束ね、冷却用プールなどに保管されています。集合体数は全国で約5万9千体、1万3530トンも。アメリカ、カナダについで世界第3位の多さです(OECD資料)。その中には“死の灰”も含まれ、100万キロワット級の発電所なら年間で広島型原爆約千発分も。政府は青森県・六ケ所村の再処理工場で処理する方針ですが、事故続きで稼働せず、原発での貯蔵容量限界がせまっています。これからみても原発からの撤退こそ問題解決の道です。
万年単位の危険 処理技術なし
放射線防護の専門家 立命館大学名誉教授 安斎育郎さん
福島第2原発のような100万キロワット級の原発を1年間運転すると、使用済み核燃料がおよそ30トン発生します。使用済み燃料には、ウラン235の核分裂でできた死の灰と、ウラン238からできたプルトニウムなどが含まれています。
これらは放射能がきわめて強く、半減期が万年単位と長いものも含まれ、きわめて危険な物質です。人間の環境から長期間にわたって確実に隔離しなければなりません。
現在これを安全に処分する技術が未熟なために、原発は「トイレなきマンション」といわれています。原発内で長期にわたって水で冷却しながら貯蔵しているので、つねに地震と津波の危険にもさらされています。政府や電力会社は「原発は安上がり」と印象づけてきましたが、放射能の最終処分の費用をコストにほとんど反映していません。これには巨額の費用がかかります。
将来の社会で私たちの子孫が、何の価値も生まない放射能の処分に多額の費用を支出するような事態はさけるべきです。処分体制もないのに、使用済み核燃料を増やすことは無謀です。
崩壊熱を出し続ける使用済み核燃料
溶融 放射能放出の危険
使用済み核燃料の危険性―。地震、津波と、再処理の困難さという二つの角度から見てみると―。
福島第1原子力発電所の事故では、全電源喪失で、原子炉とともに、使用済み核燃料を保管している冷却用プールも重大事態に陥りました。
使用済み核燃料は、保管中も崩壊熱を出し続けます。全電源が喪失すると、使用済み燃料を冷やせなくなります。温度が上昇して、燃料棒が溶融し、水素爆発や大量の放射能放出の危険があります。福島では、プールを囲う建屋が破壊され、1、3、4号機ではプール温度が上昇しました。
とくに、4号機のプールには、使用済み燃料783体のほか、機器の交換のため炉内から取り出したばかりの燃料548体が保管されており、発熱量が突出しています。
注水を続けてもプールの温度がなかなか下がらず、最近でも84度(5月7日現在)と高いまま。安定状態にはほど遠い状況です。
さらに、4月7日午後11時すぎに宮城県沖で発生したマグニチュード(M)7.1の余震でも、東北地方の原子力施設が再び電源喪失の危機にひんしました。
この余震で東北電力の女川原発(宮城県女川町)と東通原発(青森県東通村)の両原発、日本原燃の使用済み核燃料再処理工場(同六ケ所村)でも外部電源が切れ、非常用ディーゼル発電機が起動しました。
女川原発では、燃料プールの冷却装置が停止し、約1時間後にようやく復旧しました。福島原発と同様の綱渡り状態でした。
六ケ所村の再処理工場も外部電源が途絶。非常用ディーゼル発電機で冷却を続け、地震翌日の4月8日午後3時までにようやくすべての外部電源が復旧しました。
原子力発電所の使用済み燃料の貯蔵量(2010年9月末、単位はウラン換算トン)
(注)貯蔵率は、管理容量にたいする使用済み燃料貯蔵量の割合。電気事業連合会資料より作成
再処理工場 国内外で事故
原発にたまる一方の使用済み核燃料をどう処理するのか―。歴代政府の対策の重要な柱が、青森県六ケ所村にある日本原燃の再処理工場でした。
同工場では、使用済み核燃料棒を破断して溶かし、プルトニウムとウラン、残りカスである死の灰に分けます。その工程で放射能が施設外に排出されます。2006年には使用済み燃料を用いる試験を始めましたが、放射能漏れなどの事故が続発。いまだに本格稼働できていません。
茨城県の研究用再処理工場でも、1997年3月11日に火災、爆発事故が発生。作業員37人が被ばくし、放射能が隣接の大洗町、つくば市でも検出されました。
英国の海汚染
世界でも再処理施設での事故や放射能汚染が起きています。
過去最悪の放射能による海洋汚染をおこしたのが、アイリッシュ海に面した英国セラフィールド再処理施設でした。1969年ごろから、ストロンチウムなどを垂れ流し、海底の土や海藻などの汚染が進行。1983年にも160兆ベクレルもの放射能汚染水を放出し、大問題になりました。2005年4月にも、同施設の新鋭再処理施設で、高レベル放射性溶液が漏出する重大事故が発生しました。配管の接続部が金属疲労により破損したためです。
再処理は完成した技術とは言えず、施設での重大事故がこれまでに世界で20余件も報告されているほど危険です。
再処理技術が確立されていないため、原発が廃炉になっても、使用済み核燃料は、安全に保管し続けなければなりません。これが、原発の現実です
危うさ原発以上
元原子力研究所研究員 市川富士夫さん
使用済み核燃料の再処理技術は未熟で、原発以上に危険をはらんでいます。日本の再処理工場では、使用済み核燃料の処理で、フィルターなどで除去できないガス状の放射能「クリプトン85」が全量、排気塔から環境に出てくる構造になっています。いま福島第1原発の放射能放出が大問題になっていますが、再処理工場では通常の工程で放射能が排出されているのです。
再処理はもともと米国で核兵器用プルトニウムを生産するために始まりました。危険な大事故が日本や英国やロシアなどで続発しました。
青森県の六ケ所再処理工場は1993年の着工以来、建設投資が2兆円を超えましたが、17年経過した現在も本格操業に至らず、高レベルの放射能廃液処理も中断しています。放射能を最終処分する処分候補地さえ定まっていません。いまこそ未熟なプルトニウム利用のための再処理路線を断念するときです。
原発から撤退求め署名開始 日本共産党がよびかけ
日本共産党は5月26日、「原発からの撤退を求める署名」をスタートしました。「日本政府が原発からの撤退を決断し、原発をゼロにする期限を決めたプログラムをつくることを求めます」という内容です。
志位和夫委員長は同日の記者会見で、「撤退にいたるプログラムや原子力エネルギーに対する考え方の違いがあったとしても、『原発からの撤退』の一点で一致する方々、さまざまな市民運動とおおいに協力共同関係をつくっていきたい」と表明しました。
「しんぶん赤旗」日曜版 2011年6月5日付より転載。
この特集は、宇野龍彦、鈴木誠の両記者が担当しました。
*********
日本の原発の使用済み核燃料の格納場所が5年から7年以内に一杯になるんですね。
一杯になった後も、その使用済み核燃料はつねに冷やし続けないといけません。
東日本大震災の余震でも、女川原発(宮城県女川町)や東通原発(青森県東通村)、日本原燃の再処理工場(青森県六ケ所村)で外部電源が切れていたんですね。
マスコミではあまり大きく報道していなかったので知りませんでした。
福島第一原発と同様の事態になる一歩手前でしたんですね。
浜岡原発の再稼働はもってのほかですが、他の老朽化した原発、断層上にある原発は一旦停止して点検して、すくなくとも津波対策、地震の縦揺れ対策をしないといけないと思います。
また、30年以上の老朽化の原発から順次廃炉して、原発から再生可能な自然エネルギーへ転換していかないと将来に禍根をのこすことになります。
たまる一方 使用済み核燃料
「トイレなきマンション」―。原子力発電所の致命的欠陥を指摘する言葉です。危険な使用済み核燃料を安全に処理する技術がいまだ確立されていないからです。地震、津波の危険のなか、列島にたまる一方の使用済み核燃料。いまどれだけあるのか―。
「しんぶん赤旗」日曜版の編集部は電力各社の公表資料をもとに各原発に貯蔵されている、“核のゴミ”、使用済み核燃料を調査しました。(下図)
使用済み核燃料は平均70~72本の核燃料棒を一つの燃料集合体に束ね、冷却用プールなどに保管されています。集合体数は全国で約5万9千体、1万3530トンも。アメリカ、カナダについで世界第3位の多さです(OECD資料)。その中には“死の灰”も含まれ、100万キロワット級の発電所なら年間で広島型原爆約千発分も。政府は青森県・六ケ所村の再処理工場で処理する方針ですが、事故続きで稼働せず、原発での貯蔵容量限界がせまっています。これからみても原発からの撤退こそ問題解決の道です。
万年単位の危険 処理技術なし
放射線防護の専門家 立命館大学名誉教授 安斎育郎さん
福島第2原発のような100万キロワット級の原発を1年間運転すると、使用済み核燃料がおよそ30トン発生します。使用済み燃料には、ウラン235の核分裂でできた死の灰と、ウラン238からできたプルトニウムなどが含まれています。
これらは放射能がきわめて強く、半減期が万年単位と長いものも含まれ、きわめて危険な物質です。人間の環境から長期間にわたって確実に隔離しなければなりません。
現在これを安全に処分する技術が未熟なために、原発は「トイレなきマンション」といわれています。原発内で長期にわたって水で冷却しながら貯蔵しているので、つねに地震と津波の危険にもさらされています。政府や電力会社は「原発は安上がり」と印象づけてきましたが、放射能の最終処分の費用をコストにほとんど反映していません。これには巨額の費用がかかります。
将来の社会で私たちの子孫が、何の価値も生まない放射能の処分に多額の費用を支出するような事態はさけるべきです。処分体制もないのに、使用済み核燃料を増やすことは無謀です。
崩壊熱を出し続ける使用済み核燃料
溶融 放射能放出の危険
使用済み核燃料の危険性―。地震、津波と、再処理の困難さという二つの角度から見てみると―。
福島第1原子力発電所の事故では、全電源喪失で、原子炉とともに、使用済み核燃料を保管している冷却用プールも重大事態に陥りました。
使用済み核燃料は、保管中も崩壊熱を出し続けます。全電源が喪失すると、使用済み燃料を冷やせなくなります。温度が上昇して、燃料棒が溶融し、水素爆発や大量の放射能放出の危険があります。福島では、プールを囲う建屋が破壊され、1、3、4号機ではプール温度が上昇しました。
とくに、4号機のプールには、使用済み燃料783体のほか、機器の交換のため炉内から取り出したばかりの燃料548体が保管されており、発熱量が突出しています。
注水を続けてもプールの温度がなかなか下がらず、最近でも84度(5月7日現在)と高いまま。安定状態にはほど遠い状況です。
さらに、4月7日午後11時すぎに宮城県沖で発生したマグニチュード(M)7.1の余震でも、東北地方の原子力施設が再び電源喪失の危機にひんしました。
この余震で東北電力の女川原発(宮城県女川町)と東通原発(青森県東通村)の両原発、日本原燃の使用済み核燃料再処理工場(同六ケ所村)でも外部電源が切れ、非常用ディーゼル発電機が起動しました。
女川原発では、燃料プールの冷却装置が停止し、約1時間後にようやく復旧しました。福島原発と同様の綱渡り状態でした。
六ケ所村の再処理工場も外部電源が途絶。非常用ディーゼル発電機で冷却を続け、地震翌日の4月8日午後3時までにようやくすべての外部電源が復旧しました。
原子力発電所の使用済み燃料の貯蔵量(2010年9月末、単位はウラン換算トン)
電力会社 | 発電所 | 貯蔵量 | 貯蔵率(%) |
北海道電力 | 泊 | 350 | 35 |
東北電力 | 女川 | 390 | 49 |
東通 | 60 | 26 | |
東京電力 | 福島第1 | 1820 | 87 |
福島第2 | 1130 | 83 | |
柏崎刈羽 | 2210 | 76 | |
中部電力 | 浜岡 | 1090 | 63 |
北陸電力 | 志賀 | 120 | 17 |
関西電力 | 美浜 | 360 | 53 |
高浜 | 1160 | 67 | |
大飯 | 1350 | 67 | |
中国電力 | 島根 | 370 | 62 |
四国電力 | 伊方 | 550 | 59 |
九州電力 | 玄海 | 760 | 71 |
川内 | 850 | 66 | |
日本原電 | 敦賀 | 580 | 67 |
東海第2 | 370 | 84 | |
計 | 13530 |
(注)貯蔵率は、管理容量にたいする使用済み燃料貯蔵量の割合。電気事業連合会資料より作成
再処理工場 国内外で事故
原発にたまる一方の使用済み核燃料をどう処理するのか―。歴代政府の対策の重要な柱が、青森県六ケ所村にある日本原燃の再処理工場でした。
同工場では、使用済み核燃料棒を破断して溶かし、プルトニウムとウラン、残りカスである死の灰に分けます。その工程で放射能が施設外に排出されます。2006年には使用済み燃料を用いる試験を始めましたが、放射能漏れなどの事故が続発。いまだに本格稼働できていません。
茨城県の研究用再処理工場でも、1997年3月11日に火災、爆発事故が発生。作業員37人が被ばくし、放射能が隣接の大洗町、つくば市でも検出されました。
英国の海汚染
世界でも再処理施設での事故や放射能汚染が起きています。
過去最悪の放射能による海洋汚染をおこしたのが、アイリッシュ海に面した英国セラフィールド再処理施設でした。1969年ごろから、ストロンチウムなどを垂れ流し、海底の土や海藻などの汚染が進行。1983年にも160兆ベクレルもの放射能汚染水を放出し、大問題になりました。2005年4月にも、同施設の新鋭再処理施設で、高レベル放射性溶液が漏出する重大事故が発生しました。配管の接続部が金属疲労により破損したためです。
再処理は完成した技術とは言えず、施設での重大事故がこれまでに世界で20余件も報告されているほど危険です。
再処理技術が確立されていないため、原発が廃炉になっても、使用済み核燃料は、安全に保管し続けなければなりません。これが、原発の現実です
危うさ原発以上
元原子力研究所研究員 市川富士夫さん
使用済み核燃料の再処理技術は未熟で、原発以上に危険をはらんでいます。日本の再処理工場では、使用済み核燃料の処理で、フィルターなどで除去できないガス状の放射能「クリプトン85」が全量、排気塔から環境に出てくる構造になっています。いま福島第1原発の放射能放出が大問題になっていますが、再処理工場では通常の工程で放射能が排出されているのです。
再処理はもともと米国で核兵器用プルトニウムを生産するために始まりました。危険な大事故が日本や英国やロシアなどで続発しました。
青森県の六ケ所再処理工場は1993年の着工以来、建設投資が2兆円を超えましたが、17年経過した現在も本格操業に至らず、高レベルの放射能廃液処理も中断しています。放射能を最終処分する処分候補地さえ定まっていません。いまこそ未熟なプルトニウム利用のための再処理路線を断念するときです。
原発から撤退求め署名開始 日本共産党がよびかけ
日本共産党は5月26日、「原発からの撤退を求める署名」をスタートしました。「日本政府が原発からの撤退を決断し、原発をゼロにする期限を決めたプログラムをつくることを求めます」という内容です。
志位和夫委員長は同日の記者会見で、「撤退にいたるプログラムや原子力エネルギーに対する考え方の違いがあったとしても、『原発からの撤退』の一点で一致する方々、さまざまな市民運動とおおいに協力共同関係をつくっていきたい」と表明しました。
「しんぶん赤旗」日曜版 2011年6月5日付より転載。
この特集は、宇野龍彦、鈴木誠の両記者が担当しました。
*********
日本の原発の使用済み核燃料の格納場所が5年から7年以内に一杯になるんですね。
一杯になった後も、その使用済み核燃料はつねに冷やし続けないといけません。
東日本大震災の余震でも、女川原発(宮城県女川町)や東通原発(青森県東通村)、日本原燃の再処理工場(青森県六ケ所村)で外部電源が切れていたんですね。
マスコミではあまり大きく報道していなかったので知りませんでした。
福島第一原発と同様の事態になる一歩手前でしたんですね。
浜岡原発の再稼働はもってのほかですが、他の老朽化した原発、断層上にある原発は一旦停止して点検して、すくなくとも津波対策、地震の縦揺れ対策をしないといけないと思います。
また、30年以上の老朽化の原発から順次廃炉して、原発から再生可能な自然エネルギーへ転換していかないと将来に禍根をのこすことになります。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます