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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

米国と新自由主義① 規制撤廃の資本主義

2022-06-04 06:22:47 | 経済・産業・中小企業対策など
米国と新自由主義① 規制撤廃の資本主義
新自由主義を世界に広めた米国で新自由主義からの脱却をめざす動きが活発化しています。萩原伸次郎横浜国立大学名誉教授に聞きました。
(杉本恒如)

横浜国立大学名誉教授 萩原伸次郎さん

―新自由主義を推進してきたのはどんな勢力でしょうか。
新自由主義は英国のマーガレット・サッチャー政権、米国のロナルド・レーガン政権、日本の中曽根康弘政権が実施した政策によって始まりました。1970年代末から80年代のことです。第2次世界大戦後の「規制された資本主義」から「規制撤廃の資本主義」への転換がめざされました。主導したのは米国の金融勢力です。

投機を自由化
戦後の「IMF(国際通貨基金)・GATT(関税貿易一般協定)体制」は、各国政府間で為替レートを固定する固定相場制を基軸に成り立っていました。為替椙場のかく乱要因となる国際的資本取引、とりわけ投機的取引は厳しく規制されました。為替椙場を安定させることで、国際貿易を活発化し、各国の金融政策の自立性を保つシステムでした。
国内の金融システムにも金利規制や業態規制が課せられました。金融機関の自由な経営や利益追求には制限がありました。
しかし企業・金融機関の多国籍化が進むにつれ、国際資本取引の自由化が企業側の要求となりました。73年以降、世界の為替システムは変動相場制に移行し、投機的取引も含めた国際資本取引の自由化が進みました。70年代末から80年代にかけて米国は国内の金融システム規制も撤廃する方向にかじを切ります。多国籍企業・金融機関の主導で世界経済システムの規制が撤廃されていきました。



米ニューヨーク証券取引所で働くトレーダー=5月13日(ロイター)

社会主義の力
―新自由主義以前の「規制された資本主義」はなぜ出現したのですか。
英国の著名な経済学者ケインズが主張した経済政策が指導理論となったためです。ケインズ主義と呼ばれます。1929年に始まる世界大恐慌で、資本主義社会には失業者が満ちあふれました。この経済危機を産業企業活動の活発化によって脱出する処方箋を書いたのがケインズでした。
ケインズは金融投機の横行が大恐慌を深刻にしたことを重視し、金融の規制、とりわけ投機活動の抑え込みを強く主張しました。財政政策を軸とする実体経済重視の政策を政府が積極的に採用すべきだと説いたのです。
第2次世界大戦から戦後の時期に世界経済をリードした米国では、石油、自動車、電機などの新興産業が勃興していました。実体経済重視のケインズ政策は米国の輸出産業の利害と合致しました。
さらに米国では30年代のローズベルト民主党政権の民主的政策によって労働組合運動が活発になりました。巨大産業企業の経営者と労働組合が生産者階級として連携する階級連合が経済政策の基軸を形成します。この階級連合は「ケインズ連合」と呼ばれました。
株主配当は低く抑えられ、巨大産業労働者の高賃金と巨大産業の高利潤が実現されました。株価が上昇せずに経済成長が持続する、実体経済を軸とした経済が出現しました。
労働者階級に一定の譲歩をし、自由放任主義を転換して危機を脱出するというケインズの処方箋が受容された背景に、社会主義運動の圧力がありました。資本主義諸国が大恐慌に見舞われた当時、計画経済を進めたソビエト連邦では経済成長が続き、失業のない経済が実現していました。ソ連が募集した熟練労働者6千人の求人に米国から10万人の応募者が殺到するという事態が起こりました。残念ながらスターリンらの誤りによってソ連の内実は社会主義と無縁の人間抑圧社会に変質し始めていましたが、世界各国で「生産者が主役」の社会主義をめざす運動が高揚しました。このままでは社会主義に負ける、という危機意識が資本主義諸国を覆ったのです。
他方で米国のケインズ主義は、政府の財政支出で巨大な軍需産業へ巨額な有効需要を注入し、高成長を実現させるという色彩を濃く帯びました。ケインズの弟子の一人、英国の経済学者ジョーン・ロビンソンは、批判的にそれを「軍事ケインズ主義」と呼びました。
(つづく)(5回連載です)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年5月31日付掲載


新自由主義は英国のマーガレット・サッチャー政権、米国のロナルド・レーガン政権、日本の中曽根康弘政権が実施した政策によって始まりました。1970年代末から80年代のこと。
一方、ケインズは金融投機の横行が大恐慌を深刻にしたことを重視し、金融の規制、とりわけ投機活動の抑え込みを強く主張。財政政策を軸とする実体経済重視の政策を政府が積極的に採用すべきだと説いた。
第2次世界大戦から戦後の時期に世界経済をリードした米国では、石油、自動車、電機などの新興産業が勃興していました。実体経済重視のケインズ政策は米国の輸出産業の利害と合致。
労働者階級に一定の譲歩をし、自由放任主義を転換して危機を脱出するというケインズの処方箋が受容された背景に、社会主義運動の圧力。資本主義諸国が大恐慌に見舞われた当時、計画経済を進めたソビエト連邦では経済成長が続き、失業のない経済が実現。
実体経済重視の政策から、新自由主義になってから、金融投資・架空経済がメインに…。

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