きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

予防の虚像 健康は自己責任か② 削減数値、「えいやっ」で決めた

2019-05-10 09:17:33 | 医療・福祉・介護問題について
予防の虚像 健康は自己責任か② 削減数値、「えいやっ」で決めた
安倍政権の予防政策には前史があります。2006年の法改定で導入された特定健診(メタボ健診)・特定保健指導です。このとき厚労省は、メタボ健診を柱とした生活習慣病対策で25年度に約2兆円の医療費が削減できると試算。病院の平均在院日数短縮とあわせて6兆円の効果があると説明しました。
当時、財務省から厚労省に出向していて削減数値の策定にかかわった村上正泰さん(現山形大学大学院教授)は、これが現在に続く予防政策の「出発点」だと振り返ります。



メタボ健診では腹囲をはかることで内臓周りの脂肪量を予測する

特定健康診査・特定保健指導
内臓脂肪型肥満などメタボリックシンドロームの症状に着目して、40~74歳の全国民を対象に実施する健診。健診の結果、生活習慣病になる恐れがあると判断されると、保健師などから生活習慣について指導を受けます。08年度から開始。


「改革」の司令塔
時は小泉政権下、「構造改革」の真っ盛り。「改革」の司令塔と呼ばれた政府の経済財政諮問会議には奥田碩トヨタ自動車会長、牛尾治朗ウシオ電機会長ら大物財界人が民間議員として並び、社会保障の給付抑制を強力に求めていました。
奥田・牛尾両氏ら民間議員は05年2月、同会議に提言を出します。「経済規模に見合った社会保障に向けて」と題した提言は、団塊世代が老後を迎える10年までに給付の伸びを管理する指標が必要だとし、「『名目GDP(国内総生産)の伸び率』が妥当」だと主張しました。
当時、日本の名目GDPの伸びは1994~04年の10年間で3%台という低さ。そのうち5年間は前年比マイナスです。これが指標になれば、社会保障制度が破綻することは明らかでした。
村上さんは、経済財政諮問会議から圧力を受けるなか、厚労省が民間議員の案に代わる指標として考え出したのが生活習慣病対策などによる削減数値だったと指摘。6兆円という数字は「えいやっ」で決めたといいます。
「小泉首相からも『なんらかの指標が必要』と指示が出されるなか、厚労省として受け入れられるのが健康づくりと平均在院日数短縮だった。厚労省は目標額を示すことに最後まで抵抗し、6兆円も『目標』ではなく『目安』として出した。結果的に、何も対策をとらなかった場合と民間議員の案の中間くらいの額になった」
村上さんはその後、医療費削減ありきに疑問を感じ、霞が関を去りました。

「動機づけ」強化
このとき、メタボ健診と一体で始まったのが健保組合の後期高齢者支援金のインセンティブ制度です。インセンティブは目標を達成するための「動機づけ」「報酬」の意味。メタボ健診の受診率などに応じて、各組合が負担する支援金の額を加算(罰則)・減算(報酬)するようにしたのです。
取り組みが弱い健保組合は負担が増加し、保険料を引き上げざるを得なくなります。痛みによって政府の望む方向へ誘導しようとしたのです。
安倍政権は、この加算率を現行の0・23%から20年度に最大10%に引き上げるとしています。国民健康保険や介護保険でもインセンティブを強化する方針です。
「健康づくりの推進はいいことですが、健康づくりで給付が抑制できる根拠はありません。健康づくりが給付抑制につながるという議論をおし進めていけば、病気になったのは健康づくりをしなかったからだという社会的ムードを生みだしかねない。生活習慣が社会的要因でつくられていることを見落とすべきではありません」(村上さん)
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2019年5月6日付掲載


内臓脂肪が増えることが生活習慣病の一因になることは指摘されています。だからといって、健診でメタボと診断されて、生活指導を受けなかったからペナルティなんてやめてほしい。
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予防の虚像 健康は自己責任か① 社会的な要因を軽視

2019-05-09 21:43:58 | 医療・福祉・介護問題について
予防の虚像 健康は自己責任か① 社会的な要因を軽視

ウオーキングに励む人、電車で認知症予防をうたうパズルに取り組む人、野菜を見比べ有機野菜を買い物かごに入れる人―。日常のいたるところに健康で豊かな人生を願う人々の姿があります。安倍政権もまた「健康寿命延伸」「予防重視」を掲げます。しかし、その裏には、国民の願いとはかけ離れた、危険な思惑が潜んでいます。

「生まれつきなのはあきらめる。しかし、飲み倒して、運動も全然しないで、糖尿病も全然無視してという人の医療費を、健康に努力しているおれが払うのかと思ったら、あほらしゅうてやってられんと言った先輩がいた。いいこと言うなと思って聞いた」
発言の主は麻生太郎財務相。昨年10月23日の閣議後、報道陣から、予防の社会保障費抑制効果が「未来投資会議」(議長・安倍晋三首相)で議論になったことについて問われ答えたものです。



健康づくりにジョギングする人たち

抑制効果の実態
政権復帰以降、安倍首相は、少子高齢化のもとでの社会保障給付の増大を「国難」と描き、団塊世代が75歳以上になる前に給付抑制の仕組みをつくらなければ日本は立ち行かなくなると主張してきました。そこで出てきたのが予防です。
厚労省は2013年、予防と後発医薬品の使用促進などで5兆円規模の抑制効果があると試算。翌年の『厚労白書』には「健康・予防元年」の言葉が躍りました。経産省も18年、約3・3兆円の効果が出るとの試算を発表しています。
こうした試算を受け、安倍首相は16年11月の未来投資会議で、医療・介護の軸足を「予防・健康管理」と「自立支援」に移すと宣言。今年3月の同会議でも予防推進の具体化を関係閣僚に指示しました。同会議は、成長戦略の司令塔と位置づけられています。
しかし、最新の研究は予防の社会保障費の抑制効果に否定的です。予防対策にも費用がかかるうえ、予防で寿命が延びればそこでも社会保障給付が発生するからです。

介入費を度外視
実際3・3兆円の効果をはじき出した経産省の試算には、予防対策にかかる費用(介入費用)は入っていません。同省担当者は「東大教授がつくったシミュレーションモデルに複数の仮定を置いて出した。前提の置き方で数字は変わってくる」といいます。
試算は、運動で糖尿病発症率が5年で30%減るという仮定を置き、そのためには「市民がよく歩くまちづくり」などの社会資本整備が必要だとしています。こうした介入費用を試算は度外視しているのです。
効果の妥当性とともに、政府の予防政策が社会的要因を軽視していることにも批判があります。
近藤克則・千葉大学教授は著書『健康格差社会への処方箋』(医学書院)で、父親の社会階層、妊娠期、小児期の生育環境などが成人後の健康に与える影響を詳述。OECD(経済協力開発機構)調査で日本の相対的貧困率が上昇していることに触れ、「臨界期(小児期)を貧困のなかで過ごし、健康によくない因子を累積している生活習慣病予備軍を放置したまま、成人になってから介入して、果たして成果は上がるのであろうか」と疑問を呈しています。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2019年5月5日付掲載


病気の予防、健康増進は結構なことですが、それに取り組むには時間的余裕とあるていどの経済的余裕が必要。
社会保障費の給付抑制を目的にした、場当たり的な予防は効果があるかと疑問…
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職場のトラブルQ&A⑫ 注文が殺到し長時間残業、違法では? 上限は100時間 でも過労死水準

2019-05-02 14:01:26 | 職場のトラブルQ&A
職場のトラブルQ&A⑫ 注文が殺到し長時間残業、違法では? 上限は100時間 でも過労死水準
今回は、残業に関する相談を取り上げます。昨年成立した働き方改革関連法で、時間外労働の上限規制が導入されましたが、過労死水準を容認するものです。

Q 中小の製造業で働いています。最近、注文が殺到し、長時問の残業が発生しています。先月は、残業時間が100時間になりました。違法ではないのですか。




A 労働基準法は、1日8時間、1週40時間を超えて労働させることを禁止しています。(同法32条)
一方、同法は条件付きで、使用者(会社など)が法定の労働時間を超えて労働者を働かせることを認めています。(同法36条、いわゆる36協定)
労働者の代表(過半数が加入する労働組合または過半数を代表する労働者)と書面による協定を結び、これを行政に届け出ることが条件です。
この36協定で定める残業時間の上限については、今回、後述の法的規制が導入されましたが、中小企業(資本金3億円以下又は従業員数300人以下など)への適用は、来年4月からとなっています。中小企業については、現在、まだ残業時間の法的な上限規制がない状態です。
したがって、あなたの会社の36協定で、繁忙期などに月100時間の延長を認める旨が規定されている場合、月100時間の残業も違法ではないことになります。
もちろん、36協定なしに、または36協定の定める限度をこえて時間外労働をさせれば罰則の対象となります。(労基法119条)また、36協定に基づき時間外労働を行う場合であっても、時間外割増賃金が支払われるのは当然です。(労基法37条)
深夜(午後10時~午前5時)・休日(週1回の法定休日)以外の時間外労働の割増率は25%以上です。
深夜業は25%以上(時間外労働と重なる場合は50%以上)、休日労働は35%以上(深夜業と重なる場合は60%以上)の割増率となっています。
時間外労働は、月45時間、1年360時間などを限度基準とし、36協定でその基準を超える延長時間を定める場合には、その超える時間について、25%を超える割増率を設定するように努めるべき旨を定めていますが(2009年告示)、法的強制力はありません。
また、労基法37条1項但し書きは、1カ月に60時間を超える時間外労働をさせた場合、その超える部分については残業代の割増率を50%以上とする旨定めています。この規定が23年4月1日から、中小企業にも適用されます。

3月17日号「知ってトクする労働相談⑥」の割増賃金に関する図表に一部不正確な部分がありました。改めてご紹介します。

割増賃金と割増率
種類支払う条件割増率
時間外法定労働時間(1日8時間・週40時間)を越えた時25%以上
時間外労働が1ケ月60時間を超えた時
※2013年4月から中小企業にも適用
50%以上
深夜22時~翌5時までの間に勤務させた時25%以上
休日法定休日(週1日)に勤務させた時35%以上
時間外+深夜50%以上
休日+深夜60%以上


昨年成立した働き方改革関連法で、時間外労働の上限は、原則月45時間、年360時閻とされました。臨時的な特別の事情がある場合でも、年720時間、単月100時間未満、複数月平均80時問が限度となりました。ただ、単月100時間、月平均80時間の残業というのは、いわゆる過労死基準であり、長時間労働の根絶には不十分なものとなっています。
今村幸次郎(弁護士)

「しんぶん赤旗」日曜版 2019年4月28日・5月5日付合併号掲載


36協定で労働時の上限を決めれば青天井で働かせ放題だったのが、法律で上限の時間を定められたのは一歩前進。
しかし、その時間が過労死基準の長時間になっている。
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職場のトラブルQ&A⑪ 契約更新たてに男性上司が「付き合え」 「セクハラ防止」は会社の義務

2019-05-01 11:23:47 | 職場のトラブルQ&A
職場のトラブルQ&A⑪ 契約更新たてに男性上司が「付き合え」 「セクハラ防止」は会社の義務
今回は、セクシュアルハラスメント(セクハラ)に関する相談を取り上げます。セクハラは人権問題であり、労働者の働く権利を侵害するものです。男女雇用機会均等法(均等法)は事業主(会社)に、その防止措置を義務付けています。しかし、セクハラ行為を禁止する規定がないことは問題で、禁止規定を明確にした法整備が必要です。

 某メーカーの営業部で契約社員として働いています。最近転勤してきた男性上司(係長)が、「まだ結婚しないの」「彼氏いるの」「スリーサイズは」などとしつこく聞いてきます。昨日は、「契約更新してほしかったら今晩付き合え」と迫ってきました。「今日は都合が悪いので」と言ってとりあえず断りましたが、とても不快で困っています。どうしたらいいでしょうか。




 これは典型的なセクハラですね。係長の発言はいずれも許されるものではありません。直接、本人に「迷惑なのでやめてください」と伝えるか、それが言いにくい場合には上司(課長等)、または社内の相談窓口に早めに相談するのがよいと思います。
均等法上、セクハラとは、①職場で行われる性的な言動に対する労働者の対応により、労働者がその労働条件について不利益を受けること(対価型セクハラ)②その性的な言動により労働者の就業環境が害されること(環境型セクハラ)―と定義されます。事業主には、セクハラを防止するために適切な措置をとることが義務付けられています。(同法11条)
防止措置の具体的な内容は、①事業主の方針の明確化、周知・啓発②相談窓口の設置など、苦情・相談に対応できる必要な体制の整備③事後の迅速かつ適切な対応④相談者等のプライバシー保護、相談や協力をしたことに対する不利益な取り扱いの禁止などです。(2006年厚労省告示615号)
近年、セクハラに対する社会の受け止めや会社の対応も徐々に厳しくなっています。
ある裁判例では、男性上司が女性派遣社員に対して、「もうそんな年になったん、結婚もせんでこんなところで何してんの、親泣くで」などの発言を繰り返したケースがありました。
この上司は出勤停止10日間の懲戒処分と管理職からの降格処分を受け、裁判で「処分は無効だ」と争いました。しかし、いずれの処分も有効と判断されています(最高裁15年2月26日判決)。
ですからセクハラの被害にあったら勇気をもって、上司や相談窓口に相談してください。セクハラ言動が「あったか無かったか」が問題となることもあります。できるだけ、録音、メール、メモなどの証拠を残しておくとよいと思います。
社内での相談などで問題が解決しない場合には、都道府県労働局による紛争解決の援助(事業主に対する指導、勧告など)や調停の制度(均等法17~27条)がありますので、利用できます。
人格権侵害(性的自由の侵害等)や職場環境整備義務違反のケースは、加害者や会社への損害賠償請求も考えられます。その場合は弁護士に相談してください。
今村幸次郎(弁護士)

「しんぶん赤旗」日曜版 2019年4月21日付掲載


セクハラ発言やセクハラ行為は、加害者本人にとってみれば軽い気持ちでやっている場合もあります。しかし、被害者の人格や尊厳を傷つける事だと自覚すべきです。
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