きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

課税新時代② 民主主義取り戻す運動

2021-03-25 07:27:19 | 予算・税金・消費税・社会保障など
課税新時代② 民主主義取り戻す運動
国際課税研究者 津田久美子さんに聞く

―金融取引税の前身であるトービン税が初めて提案されたのは1970年代でした。
米国の経済学者ジェームズ・トービンが74年に言及し、78年の論文で提唱したのがトービン税と呼ばれる構想です。国際通貨取引に低率の税金を課すというアイデアでした。
当時はオイルショックをきっかけにして国際通貨制度が固定相場制から変動相場制に移行した時代でした。世界大恐慌の反省から金融規制が敷かれて国家の内側にとどめられていた資本は、国境を越えた自由移動へと解き放たれました。
このとき、過剰な資本移動と通貨取引が各国の自律的な財政・金融政策の阻害要因になる、と懸念を表明したのがトービンでした。対策として通貨取引に低率の税を課し、「よく油のひかれた車輪にわずかな砂をまく」政策を提唱したのです。トービン税の目的は、投機を抑制して市場の不安定化を防ぐとともに、各国の経済政策の自律性を取り戻すことにありました。



米国のニューヨーク証券取引所(ロイター)

お金の価値激変
―資本の国際移動が各国の自律的な経済政策を阻害するのはなぜでしょうか。
わかりやすいのは投機の攻撃です。92年のポンド危機ではイギリスの通貨ポンドが投機家ジョージ・ソロスによって売り浴びせられて急落しました。投機家は利ざやをとる商品として通貨を買い占めたり売り浴びせたりして荒稼ぎします。そのせいで人々が日々使うお金の価値が激変し、危機が引き起こされてしまう。通貨や経済を安定化しようとする各国の政策が無効化されてしまうわけです。
金融市場のマネーゲームに振り回されて各国の政策譲叢鋼が無効化されるのは、民主主義がないがしろにされるということでもあります。
―トービン税が注目を集めたのは90年代でした。
80年代に中南米諸国の累積債務が問題になりました。続いて92年にポンド危機、94年にメキシコの通貨ペソが暴落するメキシコ通貨危機が起こりました。新しい国際経済秩序のあり方が議論される中、94年に国連開発計画(UNDP)が報告書で開発財源としてトービン税導入を提案し、トービン税が世界的に知られるようになりました。
トービン税への関心が大爆発するきっかけは97年、タイの通貨バーツの暴落から始まったアジア通貨危機でした。アジアは新自由主義的な経済モデルに基づき、外国資本に市場を開放して開発を進めましたが、通貨と金融の荒波にのみ込まれてますます貧困になってしまったのです。
97年以降、市民運動の側からトービン税導入を求める声が強まります。その流れを決定づけたのが98年にフランスで結成された社会運動団体ATTAC(アタック)でした。トービン税の実現を掲げたATTACは経済学者や市民活動家、労働組合員、学生など、さまざまな立場の人々を結集して世界に広がりました。議員連盟も創設され、フランスのATTAC議員連盟には99年当時3万人のメンバーがいました。

議論の空間提供
―「金融業界の利益追求のせいで失われた民主主義を奪回する」が運動の合言葉になりました。
70年代から約20年間、トービン税は「総すかん」の状況でした。新自由主義思想が支配的になり、規制緩和や「金融ビッグバン」によって国際金融の「車輪」にますます多くの「油」をさすことが至上命令とされました。各国が追求したのは規制を通じた経済政策の自律性ではなく、市場の効率性を加速するための政策協調でした。
その状況を大きく変えたのが、アジア通貨危機とATTACの運動でした。新自由主義に対抗する勢力を結集した世界社会フォーラムの創設に関わるなど、ATTACには多くの功績があります。中でも有用だったと評価されているのは、教育的な空間をつくったことです。国際金融がどのような状況になっていて、いかなる問題があるかを考えて議論する空間を提供したのです。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年3月24日付掲載


新自由主義のもと、各国が追求したのは規制を通じた経済政策の自律性ではなく、市場の効率性を加速するための政策協調でした。
その状況を大きく変えたのが、アジア通貨危機とATTACの運動。
経済学者や市民活動家、労働組合員、学生など、さまざまな立場の人々を結集。国際金融がどのような状況になっていて、いかなる問題があるかを考えて議論する空間。
決めるのは企業や国家ではなく市民社会だ。
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課税新時代① 投機抑える金融取引税

2021-03-24 07:28:35 | 予算・税金・消費税・社会保障など
課税新時代① 投機抑える金融取引税
国際課税研究者 津田久美子さんに聞く
つだ・くみこ
 1986年東京都生まれ。中央大学総合政策学部卒。民間企業に勤務後、2013年から北海道大学法学研究科修士課程、15年から同研究科博士課程在籍(国際政治)。現在、北海道科学大学で非常勤講師。グローバル連帯税フォーラム理事。共著に上村雄彦編『グローバル・タックスの理論と実践』。



新型コロナウイルス危機の中、地球規模の課題に対処するために地球規模で新しい税を制度化するグローバル・タックス(国際連帯税)への関心が高まっています。その一つが金融取引税です。同税の歴史を研究する津田久美子さんに聞きました。(杉本恒如)

―金融取引税とは何でしょうか。
金融市場で取引されるあらゆる金融商品の売買に対して低率の税金を課す政策が金融取引税です。代表的な課税対象は、株式、債券、デリバティブ(金融派生商品)、為替の四つです。この中の一部、例えば株式だけに課税する構想も金融取引税と呼ばれます。

―金融取引税の目的は何でしょうか。
税制には主に二つの役割があります。一つは財源調達手段としての役割。もう一つは政策手段としての役割です。単純に税収を集めること以外に政策上の目的があるのです。歴史的に変化も見られますが、金融取引税の政策上の目的にはもともと投機的な金融取引の抑制があります。



東京証券取引所のマーケットセンター=東京都中央区

低率で多額の税
1970年代以降、グローバルな金融市場が急速に成長しました。国境を越える資本移動があまりに過剰で流動的になり、通貨危機、金融危機を頻繁に引き起こしました。「経済の金融化」とも呼ばれる現象です。
過剰な流動性の背景には投機があります。利ざやを稼ぐことのみを目的にした投機的な金融取引は短期間に何往復も売買を繰り返します。その取引一つ一つに税を課すならば、低率でも累積的に多額の税が蓄積されます。こうして投機的取引の抑制を狙うのが金融取引税です。低率なので長期的な取引にはさほど影響を与えません。むしろ市場の安定は長期的な投資に好影響をもたらすでしょう。

―金融取引の規模が大きいので財源調達手段としても優れているといわれます。
金融市場は実体経済の何倍もの大きさですから、低率であっても巨額の税収が見込まれます。当然、課税対象が広ければ広いほど税収額も増えます。
欧州連合(EU)は株式と債券に0・1%、デリバティブに0・01%の税を課す金融取引税のプランを2011年に提案しました。EU加盟国のうち11カ国がこれを実施することで13年にいったん合意しました。11カ国で見込まれる税収は300億~350億ユーロ(約3兆9000億~4兆5500億円)と試算されました。11カ国のGDPの0・4~0・5%を占めるといいます。

仏伊で単独導入
―金融取引税をめぐる議論と実践の現状はどうですか。
金融取引税導入で合意したEU有志連合は具体化の交渉を続けてきましたが、なかなか進展せず、15年にエストニアが離脱して10力国になりました。
他方でフランスとイタリアは単独での導入に踏み切り、スペインも導入予定です。フランスは時価総額10億ユーロ以上の国内株式の購入に0・2%を課税する金融取引税を12年に導入しました。その後、税率を0・3%に引き上げています。
現在EUではコロナ禍のもとで財源の議論が活発化し、一つの選択肢として金融取引税があがっています。1月にEUの議長国になったポルトガルは有志連合の中でも積極的な役割を果たしてきた国で、改めてEU全体での金融取引税導入の検討を提案しています。
日本では超党派の「国際連帯税の創設を求める議員連盟」が3月9日に総会を開き、議員立法で金融取引税などを候補とする国際連帯税の実現をめざすことを確認しました。市民団体や専門家が集まる「グローバル連帯税フォーラム」は長年、国際連帯税の実現に向け、外務省や議員連盟に働きかけてきました。それが実り、大きな一歩を踏み出したといえます。
コロナ禍で世界経済が苦しい状況なのに株価が上がって富裕層の資産が膨らんでいる現状を考えれば、金融取引税は現実的な選択肢になるはずです。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年3月23日付掲載


現在の金融取引は、この企業の成長が見込めるから株を購入して支援しようってことより、短期的な株の乱高下の中でいかに利ざやを稼ぐかの方が大きい。
ということなので、同じ会社の株を買ったり売ったりするごとに、ごくごく低率の税金を課税することに税収を得る。
金融取引をする会社にとってみれば、課税される税金は、金融取引にかかる手数料に比べれば微々たるものなので負担には感じない。
でも、それぞれの国にとってみれば、数(回数)が莫大なので、塵も積もれば山となるで、確かな税収に。
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出版文化を守りたい 商品総額表示の義務化中止求め署名を集める竹重みゆきさん(30)

2021-03-22 06:54:27 | 文化・芸術・演劇など
出版文化を守りたい 商品総額表示の義務化中止求め署名を集める竹重みゆきさん(30)
国が4月に狙う、商品の総額(消費税込み価格)表示の義務化。大阪市の竹重みゆきさん(30)=書店.出版社経営=は、中止を求めてオンラインで署名を集めています。「出版文化を守りたい」との思いからです。(青柳克郎)

経営する書店に立つ竹重みゆきさん=大阪市此花区(本人提供)

10年前から小さな書店を営んでいます。マニァックだけど面白い、少部数の同人誌や自費出版物などを約2000タイトル(2万冊)置いています。
「シカク出版」という小さな出版社の代表もしており、年1~2冊、新刊を出しています。3年前に出した、各地の団地の給水塔を紹介する本は全国の書店やネット通販で徐々に売れており、増刷も視野に入っています。

全て付け替え
総額表示が義務化されれば、全ての在庫の価格表示を付け替えなくてはならず、大変な手間と経費がかかります。コロナ禍のもと、負担に耐え切れず貴重な本が絶版になったり、存続が危ぶまれる出版事業者が続出したりするのではないかと心配です。また影響は小売
店や飲食店など、広範な業種に及びます。
小さな事業者でも存続できる経営環境を守ってほしい―そう思い、3カ月ほど前から同業者と署名を呼びかけ始めました。昨年、「森友問題」で自殺した元財務省職員の妻が再調査を求める署名を集めているのを目にし、「意見を言うのに、署名という手段があるんだ」と知りました。
現在、集まっているのは7000人分ほど。SNS上で協力が広がり、芸能人や他業種の業界団体からも賛同が寄せられています。

国会に届ける
2月にいったん、署名を日本共産党と立憲民主党に届けました。共産党の清水忠史衆院議員、大門実紀史参院議員は真剣に話を聞いてくれ、「義務化中止へ力を合わせましょう」と激励してくれました。市民の声を、SNSで広げるとともに、署名にして国会に届ける
ことが大事だと感じました。
私にとって、本はつらい時期を救ってくれた存在です。
母は漫画家で、家にはたくさんの絵本や漫画、小説がありました。子どものころ病弱で入退院を繰り返し、家にいることが多かった私は、それらを片端から読みました。おかげで寂しいと思ったことがありません。
デザインの専門学校に通っていたころ、高度経済成長期に建てられた大阪のビルを紹介するミニコミ誌に触れ「こんなユニークな本があったのか」と驚きました。一時、漫画家の夢を追った私は「今度は、面白い本を出す人たちの力になりたい」と、いまの仕事を始めました。
最近はコロナ禍で生じた空き時間を生かし、英語を勉強しています。アメリカのビル専門誌とか面白そうじゃないですか?日本と外国の同人誌など、深くて面白い世界を紹介し合いたい。そのためにも声をあげ続けます。

「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年3月17日付掲載


消費税の表示。5%→8%→10%と目まぐるしく変わる税率に、税別表示と税込み表示の併記が認められてきました。
しかし、今年の4月からは税込み表示に統一。
商品の店頭表示は、値札を変えるだけで済みますが、書籍の場合は商品一つひとつの値札を変えないといけない。

非常にコストがかかります。
いまからでも総額表示の中止を。
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どうみるデジタル関連法案② 自己決定権の確立こそ

2021-03-21 07:26:01 | 経済・産業・中小企業対策など
どうみるデジタル関連法案② 自己決定権の確立こそ
龍谷大学 本多滝夫教授に聞く

自治への介入

―デジタル関連法案によって住民の個人情報を守る自治体独自の条例を国が後退させるのは自治への介入ではありませんか。
関連法案の一つである、整備法案の中にある個人情報保護法改正案108条では「…この節の規定に反しない限り、条例で必要な規定を定めることを妨げるものではない」とあり、これだけでは自治体独自の条例制定を妨げないように見えます。
しかしここで許されている追加規定は、個人情報の開示・訂正・利用停止の手続き、審査請求の手続きに関する事項に限定され、個人情報の「目的外利用」とか「オンライン結合」を規制するために法律より厳しい内容の条例制定はできないと国が主張する可能性があります。注意が必要です。
同改定案の112条はさらに、企業が自治体に個人情報を匿名化して提供するよう提案する権利を認めています。
提案が基準に適合する場合には、提案企業には匿名加工情報を利用する契約を締結する権利があると定めているため、自治体が条例で「企業への匿名加工情報の提案の募集はしません」と書くと違法になる恐れがあります。
また、自治体の長は個人情報保護に関する条例を定めたとき、国の個人情報保護委員会に届け出なければなりません(同改正案167条)。同委員会が、各自治体の条例が「法の円滑な運用を妨げると判断した場合」に「指導・助言・勧告」ができます。今後出されるガイドラインにそった運用でなければ自治体に対し「直せ」と言うのです。これは非常におかしな話です。
個人情報保護が不十分だから第三者機関である個人情報保護委員会が「きちんとしなさい」というなら分かりますが、「オンライン結合の制限はけしからん」と指導・助言や勧告が入る可能性もあります。
同委員会の「指導・助言・勧告」には法的拘束力はありません。
関連法案の基になった個人情報保護制度の見直しに関するタスクフォースの報告書では、「国は、地方自治法等に基づき…是正の要求を行うこと等ができる」と付言していますが、これは許されないと解すべきでしょう。

法案は廃案に
―法案にどう対抗したらよいでしょうか。
拙速に社会のデジタル化を進める法案を廃案にすることが一番です。
個人情報の利活用とプライバシーの侵害とが裏腹にあることを理解することが重要です。
また、デジタル庁の新設にともない民間企業からIT人材を非常勤の公務員として雇うといいます。「天上がり」による新たな官民癒着を生む危険性があります。
デジタル化そのものは否定するものではありませんが、したくもないデジタル機器の使用を事実上強いられたり、自分たちの個人情報が勝手に利用され一握りの企業が利益を得たりする仕組みに対しては、批判意識を持たなければなりません。憲法13条にもとついて、自己決定権やプライバシー権・自己情報コントロール権こそ確立しなければなりません。(おわり)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年3月19日付掲載


自治体が営利企業に個人情報を提供。非常に危険な方向です。
デジタル化そのものは否定するものではありませんが、したくもないデジタル機器の使用を事実上強いられたり、自分たちの個人情報が勝手に利用され一握りの企業が利益を得たりする仕組みに対しては、批判意識を持たなければならない。
ネット上にアップされた個人情報を削除させる「忘れられる権利」が必要です。
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どうみるデジタル関連法案① 標準化システム押し付け

2021-03-20 07:19:40 | 経済・産業・中小企業対策など
どうみるデジタル関連法案① 標準化システム押し付け
国会で審議が始まったデジタル関連法案。国や企業が個人情報保護などをないがしろにしたまま、行政の保有する巨大な個人データの利活用を広げる内容です。行政法が専門の龍谷大学の本多滝夫教授に聞きました。(土屋知紀)

龍谷大学 本多滝夫教授に聞く


ほんだ・たきお 1958年生まれ。龍谷大学法学部教授。現在、同大学法学部長。専門は行政法。共著に『地方自治法と住民判例と政策』『「公共私」「広域」の連携と自治の課題』。

自治権を侵害
―関連法案の柱となる「デジタル社会形成基本法案」は、国と自治体の情報システムの共同化・集約を進めるとしています。
自治体の業務に利用する情報システムを標準化、統一しょうとするものです。「地方公共団体情報システム標準化法案」もかかわってきます。法案が成立すれば国民健康保険など対象17業務(別項)のシステムは、国の定める標準化基準に適合するものにしなければならなくなります。


標準化17業務 児童手当、住民基本台帳、選挙人名簿管理、固定資産税、個人住民税、法人住民税、軽自動車税、就学、国民健康保険、国民年金、障害者福祉、後期高齢者医療、介護保険、生活保護、健康管理、児童扶養手当、子ども・子育て支援

政府は、これまで各自治体が住民福祉の増進のために改修を進めてきた独自の業務システムではなく、国が立ち上げる全国規模のクラウド上に展開する標準化された情報システムを自治体に使わせようとしています。クラウドとはインターネットなどを利用して情報やサービスを共有する仕組みです。
すでに複数の自治体とクラウドシステムを利用しているある町では、「3人目の子どもの国保税免除を」との要望に対し、町長が町独自にシステムを仕様変更できないと答弁しました。全国でこのような事が懸念されます。
法案の7条3項には、標準化基準を定める際に一応、自治体の意見を反映させる必要な措置を講じるとあるので、自治体の意見を聞き入れる制度をどうするかが問われます。
自治体が標準化基準に適合しないシステムを採用する場合には、新設されるデジタル庁の大臣である内閣総理大臣が、地方自治法245条5項に基づいて「是正の要求」という形で標準化システムを押し付ける可能性も否定できません。
これまで内閣総理大臣が自治体の事務に直接関与する場合は、かなり限られていましたが、今回の関連法案で、国が地方自治に介入する手がかりを与えることになるのです。
結局、国の「標準化システム」を押し付けることにより、自治体が持つ自主立法権などの団体自治が失われ、それに応じて住民が物事を自ら決める住民自治のプロセスが欠けていきます。自治体の自治権への侵害です。

仕組みなくす
―関連法案には国と自治体の個人情報保護体制を統合していく内容も盛り込まれています。
狙いは企業が個人情報を利活用しやすくすることです。
行政がもつ個人情報を匿名化(個人を識別できないように加工した情報)し、民間企業に提供することをオープンデータ化と言います。現在、全国の自治体のうち匿名化条項を持っているのはわずか11自治体にとどまります。
企業が住民情報を利活用してスーパーシティやスマートシティをつくろうとしても、自治体は情報を提供できません。
自治体が持つ住民の個人情報を企業が自由に使うためには、常に情報連携(オンライン結合)できることが必要です。現行の自治体の個人情報保護条例は多くの場合「オンライン結合」を制限しているため、オンライン結合するためには各自治体の個人情報保護審議会などに諮問しなければなりません。これでは企業にとっては時間もかかるし面倒なため、この仕組みをなくすというのです。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年3月18日付掲載


「デジタル社会形成基本法案」は、国と自治体の情報システムの共同化・集約を進めると。
効率が良くなるように見えますが、自治体が持つ自主立法権などの団体自治が失われ、それに応じて住民が物事を自ら決める住民自治のプロセスが欠けていきます。
つまり、自治体独自の医療費無料化とか学費無料化などの施策が制限されることになります。
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