きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

デジタル化の行方 第3部 溶ける公教育③ 命を守る力つくのか

2022-10-21 07:10:38 | 予算・税金・消費税・社会保障など
デジタル化の行方 第3部 溶ける公教育③ 命を守る力つくのか
和光大学の制野俊弘准教授(体育科教育学)は、宮城県東松島市の中学校教師時代、水泳では「進む」こと中心ではなく、「呼吸」に中心をおいたドル平(どるひら)と呼ばれる泳法の指導に力を入れました。同県を巨大な津波が襲った2011年の東日本大震災。教え子の一人は津波で川に流されドル平で九死に一生を得ました。一方、津波で命を落としたなかに授業でドル平を教えきれなかった子どもがいました。
制野さんは「水泳の授業で自分の命を守る力を子どもたちにつけることは、公教育の最低限の使命」と胸に刻みます。

実施せず
小中学校のプールを徐々に廃止し、企業や区立の学校外プールへ移行すると決めた東京都葛飾区。これまでほぼ全学校で実施してきた水難事故を想定した着衣泳が、今年度は学校外プールを利用した12の小中学校では実施されませんでした。区の担当者は、着衣泳は学習指導要領で必修とされておらず、着衣泳を拒否した民間1施設を除き、実施しなかったのは各学校の判断だといいます。
同区の場合、学校外プールでは企業のインストラクターが指導に当たります。現場でインストラクターに教師が指示を出すと偽装請負になります。区の担当者は、教師が立てた授業計画に基づき事前に複数回打ち合わせしており、民間の専門性が生かされ教師の負担軽減にもなっているといいます。民間の専門性を活用して個別最適な教育を実現する、という政府方針にも符合しますが…。
「教育委員会に提出する書類作業などに追われ昨日も学校を出たのは夜の11時。企業と事前に打ち合わせする時間なんて教師にありません。体育主任は顔合わせくらいしているかもしれないけど」





プール送迎のために待機するバス。T字路の停止線から駐車し、2台目と3台目はT字路を挟んで駐車=6月1日、東京都葛飾区

丸投げに
民間プールへ移行した小学校のベテラン教師は、授業の実態は企業丸投げだと断言します。泳力ごとに子どもをグループ分けし、教師は泳ぎの苦手なグループの補助に入るため、得意な子のグループの様子は見られず「成績も一人ひとりの細かな評価はできない」と言います。泳ぎの指導法などインストラクターから教師が学ぶことも多いとしつつ、こう語ります。
「水泳の日は登校してすぐバス移動。子どもたちをとにかくせかす。遅刻する子やトラブルで出発が遅れたり、渋滞につかまったりもある。置き去りがないかなど、行き帰りでの子どもの確認にも神経を使う。忘れ物があってもすぐ取りにいけない。プールから帰ってから朝の会をやるので授業時間が削られるし、子どもも移動とプールで疲れるので、次の授業時間は集中する内容は組めない」
制野准教授は、水泳授業には本来、水中という異質な環境に置かれることによる体や心の変化、不安を共有することで子ども同士が協力し合うようになるなど、学級づくりのうえでも重要なカギとなる機能があるといいます。企業への丸投げでは、そうした可能性は開かれず、競泳に特化した指導で“落ちこぼれ”をつくりだす危険もあると語ります。
「教師の負担軽減の名で進む公教育の民間委託で、真っ先に標的になっているのが水泳や部活動です。教える機会が減っていけば泳げない教師も出てくるでしょう。単なる合理化で民間に受け渡すことは反対です。負担軽減というなら、教育委員会が押し付けてくる書類業務など削るべきものはほかにたくさんあります」(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年10月19日付掲載


小中学校のプールを徐々に廃止し、企業や区立の学校外プールへ移行すると決めた東京都葛飾区。これまでほぼ全学校で実施してきた水難事故を想定した着衣泳が、今年度は学校外プールを利用した12の小中学校では実施されなかった。区の担当者は、着衣泳は学習指導要領で必修とされておらず、着衣泳を拒否した民間1施設を除き、実施しなかったのは各学校の判断だと。
制野准教授は、水泳授業には本来、水中という異質な環境に置かれることによる体や心の変化、不安を共有することで子ども同士が協力し合うようになるなど、学級づくりのうえでも重要なカギとなる機能があると。企業への丸投げでは、そうした可能性は開かれず、競泳に特化した指導で“落ちこぼれ”をつくりだす危険もあると。
和光大学の制野俊弘准教授のいうドル平泳法。50年以上前、僕が小中学生だったころから推奨されてきました。

デジタル化の行方 第3部 溶ける公教育② 崩れた低コスト試算

2022-10-20 07:06:51 | 予算・税金・消費税・社会保障など
デジタル化の行方 第3部 溶ける公教育② 崩れた低コスト試算
公立小中学校にプールをつくらないと決めた東京都葛飾区―。同区は方針策定にあたり、学校にプールをつくれば建設費や維持費で1校あたり年平均770万円かかるが、民間プールを利用すれば507万円ですむと試算。NHKの番組でも紹介されました。
しかし、現実は異なります。試算で想定した400人規模の学校でも2022年度の民間プールの費用が最大約900万円になり、600人規模では1150万円に上ったのです。




問題山積
区は、単価が想定より上がったことに加え、年間5回(1回90分)で試算していた授業回数を、夏休み中の水泳教室をなくす代わりに1~2回増やしたことが影響したといいます。教育効果を上げようとすれば費用が大幅にかさみ、費用を抑えれば教育効果がしぼむという関係が浮かんできます。
校長の許可のもと、区立水元小学校の学校外プール(区立プール)を使った活動の様子を「見守り調査」した有志の会共同代表の高橋信夫さんは、問題山積だと強調します。
「学校からプールまでは借り上げバスで移動します。移動などに往復30分かかるため、当初の1回2コマでは足りず3コマ授業にしたところ、授業後の学校到着が給食の時間に間に合わない。午後からの日は昼食後の昼休みを5分に短縮してバス移動です」
高橋さんは、熱中症予防を理由にしながら、学校外プールを利用していない学校には区がなんの対策もとらないことに憤ります。バス会社もバスや運転手に余裕がなく、他区はもとより千葉県からもバスをかき集めていると指摘。バス契約の入札4件のうち3件は事実上1社入札で落札率100%と、企業の言い値になっているのではと疑惑の目を向けます。
区の担当者もバスの確保は課題だとし、今後バス会社と相談していくというものの、夏場の水泳授業のためだけに追加投資する企業が出てくるとは考えられません。



中央区立中央小学校の屋内温水プール(区提供)

使用制限
水元小が利用する区立プールで週1回、介護予防のサークルをしている浅野篤子さん(72)は、プールが授業で使われるようになったことで多くの団体が使用回数を減らされたと訴えます。「プールが使えない日は代わりに室内でストレッチしましたが、水中と違って腰やひざへの負荷がきついという声が出ました」
10年ほど前に股関節が悪くなり、つえなしで歩けなくなった浅野さん。プールに通うようになり、つえが必要なくなりました。授業で区立プールを利用する学校が増えていけば、さらに使用が制限されると懸念します。
対照的なのが東京都中央区です。区立小学校4校を屋内温水プールにし、年間通して市民に開放。市民開放は1994年からで、新型コロナ下の昨年度も約5万6千人が利用したといいます。水質などの管理は業者に委託しています。
区の担当者は、十分な土地確保が難しいという中央区の特性が校舎内への屋内プール建設の要因になっていると断ったうえで、民間プールの水泳授業での利用は移動時間などの課題が多いと判断したといいます。
「温水にすることで運営費は高くなりますが、プールへの需要は高く、区民サービスにも資する。行政コスト全体のなかでみれば費用は見合っていると考えています」
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年10月17日付掲載


校長の許可のもと、区立水元小学校の学校外プール(区立プール)を使った活動の様子を「見守り調査」した有志の会共同代表の高橋信夫さんは、問題山積だと強調。
「学校からプールまでは借り上げバスで移動します。移動などに往復30分かかるため、当初の1回2コマでは足りず3コマ授業にしたところ、授業後の学校到着が給食の時間に間に合わない。午後からの日は昼食後の昼休みを5分に短縮してバス移動です」
水元小が利用する区立プールで週1回、介護予防のサークルをしている浅野篤子さん(72)は、プールが授業で使われるようになったことで多くの団体が使用回数を減らされたと訴えます。
10年ほど前に股関節が悪くなり、つえなしで歩けなくなった浅野さん。プールに通うようになり、つえが必要なくなりました。授業で区立プールを利用する学校が増えていけば、さらに使用が制限されると懸念。

デジタル化の行方 第3部 溶ける公教育① “もうプールはつくらない”

2022-10-19 07:11:18 | 予算・税金・消費税・社会保障など
デジタル化の行方 第3部 溶ける公教育① “もうプールはつくらない”
東京都の葛飾区立西小菅小学校に8月、新しい屋外プールが完成しました。利用を待つばかりのはずのこのプールに、子どもの声が響く見通しはありません。
区が昨年、全小中学校の水泳授業を徐々に企業や区立の屋内プールに移す方針を決めたからです。
区は今後、学校のプールの新設や大規模改修はせず、授業は企業のインストラクターが担うので、プール管理や授業などの教師の負担が軽くなるといいます。今年度は校舎が改築中だった西小菅小を含む12の小中学校が民間8施設、区立2施設を使用。来年度は20校程度に拡大する計画です。



漏水点検を終えた西小菅小の新築プールの利用は宙に浮いたまま=東京都葛飾区(中村伸吾区議撮影)

店舗閉鎖
民間プールを使った授業は企業が撤退すれば教育が止まる危険と隣り合わせです。業界大手のコナミは新型コロナによる減収で2021年2月~22年3月に同社のスポーツクラブの2割にあたる26店舗を閉鎖しています。
区の教育委員会に9月半ばに電話すると、担当者は「撤退する場合は早めに言ってもらいたいと伝えている」と答えました。ところがその10日後、西小菅小など2校が利用していた民間プールが年末での閉店を発表。懸念が現実になりました。
区教委は隣の足立区の民間プールを使う方向で調整しているとし、「西小菅小の子どもは民間プールを喜んでいた。もったいないから学校のプールに戻れとは言えない」といいます。
プールが消えた小学校では、夏休みに学校が実施していた水泳教室もなくなりました。異常な長時間労働に追われる教師からは歓迎の声も聞こえます。
一方、小学校に子どもが通う30代の母親は、教員の負担軽減は必要としつつ「水泳は命を守る大事な授業。学校で泳げるようにしてほしい」と願います。
「コロナの影響でこの2年間水泳授業がなかったので今年は期待していたけど、学校にプールがないせいか授業回数が少なく、長男も次男も泳げないまま。夏休みの水泳教室は少人数で教師が丁寧に教えてくれ、私はそこで泳げるようになった。民間の水泳教室はお金が高く負担できない家庭もある」
川や海に触れる機会が多い日本は、溺れて亡くなる人の割合が世界的に高い国の一つです。過去の多くの水難事故の教訓から、水泳は小中学校の学習指導要領で必修になっています。

進む委託
水泳授業の民間委託は全国で進みます。同時に、公教育の民間委託は水泳にとどまりません。インターネットを社会課題の解決策と位置づける「ソサイエティ5・0」の実現に向け、政府が6月にまとめた「教育・人材育成に関する政策パッケージ」は、授業をはじめ学校機能の相当部分を企業などが担う未来像を示します。
第3部では、政府が描く教育の未来像の現実を追います。(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年10月16日付掲載


民間プールを使った授業は企業が撤退すれば教育が止まる危険と隣り合わせ。業界大手のコナミは新型コロナによる減収で2021年2月~22年3月に同社のスポーツクラブの2割にあたる26店舗を閉鎖。
プールが消えた小学校では、夏休みに学校が実施していた水泳教室もなくなりました。異常な長時間労働に追われる教師からは歓迎の声も聞こえます。
一方、小学校に子どもが通う30代の母親は、教員の負担軽減は必要としつつ「水泳は命を守る大事な授業。学校で泳げるようにしてほしい」と願います。
効率化で、学校のプールを無くし、民間委託すれば良いってもんじゃない。

半導体バブル 熊本に見る③ 地域環境の変化に拍車

2022-10-18 07:10:30 | 経済・産業・中小企業対策など
半導体バブル 熊本に見る③ 地域環境の変化に拍車

半導体受託製造(ファウンドリー)世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)の熊本への進出は、子育ての環境や地域の景観にも影響を与えています。進出先の菊陽町の住民らに聞きました。

子の安全不安
TSMC新工場の建設現場につながる県道は、毎朝・毎夕、大幅な渋滞に見舞われます。「今までも、付近の工業団地に通勤する車が多かった。TSMCの新工場が完成したら(さらに混雑が増すのではないか」。菊陽町内の小学校に子どもが通うAさん(49)はこう述べて顔を曇らせます。渋滞を避けようと、多くの車が住宅街の細い道を抜け道に使っています。Aさんは「子どもの通学や帰宅が不安」と言います。菊陽町に隣接する大津町と合志市でも同様の問題が発生しています。



TSMC新工場の建築現場沿いで渋滞する県道=10月5日、熊本県菊陽町

菊陽町には土地全体の8割以上での開発が制限される「市街化調整区域」があり、その大半が農地です。この農地に関連企業が工場や事務所を建てたいという相談が町に相次いでいるといいます。
同町はこれまでも、「光の森」ニュータウンなどの土地区画整理事業によって多くの農地が住宅地や商業集積地「ゆめタウン」となり、住民からは「数年で景色が一変した」との声が出ていました。
TSMCの進出で、こうした再開発と人口増加に拍車がかかる可能性があります。
子育て環境も変化しています。町北部の菊陽北小学校では校舎を増改築するなどしました。子どもが同校の卒業生というBさん(40代)は、「数年前は1クラスだったのに、今は4クラスに4倍化した」として、「先生が一人ひとりの子どもに手厚く関わってくれていたのが魅力だった。先生の多忙さも想像できる」と言います。
Bさんは「豊かな自然の中で子育てをしたくて」と菊陽町に移住。TSMCの進出による人口増やさらなる開発の影響に不安が募ります。「欲しいのは子育てがしやすい環境です。行政には子どもの立場に立って街づくりを考えてほしい」

正規雇用こそ
県担当者は、TSMCや関連企業の雇用増で「県外に転出した若者にも戻ってほしい」と期待を述べます。TSMCとソニー、デンソーの合弁会社JASMは2024年の出荷開始に向け「1700人の雇用」を掲げます。しかしその内訳は台湾からの技術者やソニーからの出向者などが多くを占め、地元採用は新卒・中途を合わせ700人。25年度以降は未定だといいます。
日本共産党の小林久美子町議は、TSMC新工場に隣接するソニーや東京エレクトロンでの雇用は多くが派遣など不安定雇用だとして、「安定した正規雇用こそ必要」だと指摘します。
前出のAさんは、少人数学級の拡充を求めて議員要請に取り組む中で小林町議と知り合いました。小林町議の議会での追及を知り「声を届けてくれてうれしかった。信頼しています」と話します。「急激な変化にみんな我慢している部分もある。『誰に声を届けたらいいの』という友人もいる。こんなときこそ、住民の声に応えて政治や行政に一緒に働きかけてくれる議員が必要だと思う」
(おわり)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年10月15日付掲載


TSMC新工場の建設現場につながる県道は、毎朝・毎夕、大幅な渋滞に見舞われます。「今までも、付近の工業団地に通勤する車が多かった。TSMCの新工場が完成したら(さらに混雑が増すのではないか」。菊陽町内の小学校に子どもが通うAさん(49)はこう述べて顔を曇らせます。
Bさんは、「豊かな自然の中で子育てをしたくて」と菊陽町に移住。TSMCの進出による人口増やさらなる開発の影響に不安が募ります。「欲しいのは子育てがしやすい環境です。行政には子どもの立場に立って街づくりを考えてほしい」
日本共産党の小林久美子町議は、TSMC新工場に隣接するソニーや東京エレクトロンでの雇用は多くが派遣など不安定雇用だとして、「安定した正規雇用こそ必要」だと指摘。
「市街化調整区域」の農地への開発許可は慎重に。その雇用の内訳も問題です。

半導体バブル 熊本に見る② 地下水資源に「危険信号」

2022-10-17 07:09:26 | 経済・産業・中小企業対策など
半導体バブル 熊本に見る② 地下水資源に「危険信号」


半導体の受託製造(ファウンドリー)世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)が進出する熊本県菊陽町周辺には、熊本市を含む一帯を潤す豊富な地下水層があります。しかしTSMC進出を受けた地域の大規模開発は、地下水資源の枯渇と汚染の危険を高めています。



1工場で数%
熊本は県全体の生活用水の約8割、工業用水の約4割を地下水でまかない、熊本市とその周辺地域では水道水源のすべてを地下水に依存しています。
阿蘇一帯の年間降雨量の3分の1(約6億4千万立方メートル)は、森林や草地、水田、耕地等から地下水層に浸透。とくにTSMCが進出する菊陽町など白川中流域には、「ざる田」と呼ばれる水田など浸透率の高い農地が、約9千万立方メートルもの地下水のかん養に大きな役割を果たしています。
一方、半導体製造の不純物の精密洗浄には大量の水が欠かせず、半導体の微細化・高集積化に伴い高い水質が求められます。TSMCが同地域を選んだ理由の一つに、そうした水資源があります。
TSMCとソニー、デンソーの合弁会社JASMによれば、新工場での1日あたりの地下水採取量は1万2千立方メートル。年換算では熊本市とその周辺地域で採取される総量の数%に上ります。
また、菊陽町周辺には半導体関連企業の工業団地が並びます。
熊本県と菊陽町など熊本地域の市町村による「熊本地域地下水総合保全管理計画」(2015年)は、熊本地域の地下水位の低下や地下水汚染の顕在化があるとして「水量、水質ともに危険信号を示している」と警告。元県地下水担当者からは、農地埋め立てなど500ヘクタールの開発で「5千万立方メートルくらいのかん養量が失われた」との指摘もあります。
企業誘致と工場建設が進めば、さらなる地下水量の減少と水質の悪化が強く懸念されます。
県の「地下水保全条例」は事業者に対し、地下水の採取量を抑制するための計画やかん養の計画の提出を求め、事業者に毎年の報告を課しています。
JASMは採取した水の7割を再利用し、「使用する地下水と同等量を地下へ戻す」と説明しています。



地下水かん養のための水田=10月5日、熊本県菊陽町

市民共通財産
日本共産覚の議員団は、条例と「管理計画」の厳格な実施が必要だと主張。県と当該自治体、企業間での「地下水保全協定」の締結の制度化をはじめ、開発による地下水かん養への影響や汚染リスクの検証と対策を求めています。
菊陽町内の小学校に子どもが通う女性(49)は、「一番の不安は地下水の汚染です」として「私たちの生活に直結している。住民にわかる形での安全の保証が必要」と言います。
熊本市は全国に先駆けて1977年、「地下水保全条例」を制定しました。日本共産党の山本のぶひろ県議は、市条例が策定されたきっかけに、75年の市東部の健軍(けんぐん)水源地への団地建設計画と、同じく戸島地区のごみ埋め立てによる地下水汚染に対する党市議団と住民の反対運動があったと指摘。「条例を通じて、地下水は市民共通の財産だという『公水』の認識が根付いてきた」として、「協定締結には公水を守ることに対する企業と行政の本気度が問われている」と語ります。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年10月14日付掲載


熊本は県全体の生活用水の約8割、工業用水の約4割を地下水でまかない、熊本市とその周辺地域では水道水源のすべてを地下水に依存しています。
阿蘇一帯の年間降雨量の3分の1(約6億4千万立方メートル)は、森林や草地、水田、耕地等から地下水層に浸透。とくにTSMCが進出する菊陽町など白川中流域には、「ざる田」と呼ばれる水田など浸透率の高い農地が、約9千万立方メートルもの地下水のかん養に大きな役割を。
一方、半導体製造の不純物の精密洗浄には大量の水が欠かせず、半導体の微細化・高集積化に伴い高い水質が求められます。TSMCが同地域を選んだ理由の一つに、そうした水資源が。
菊陽町内の小学校に子どもが通う女性(49)は、「一番の不安は地下水の汚染です」として「私たちの生活に直結している。住民にわかる形での安全の保証が必要」と。
新しい半導体工場が使う地下水は、熊本県全体が使う地下水の数%で使った後はもとに戻すと言いますが、その戻す水の水質が問題ですよね。