飛騨北部の天気予報は、低気圧が去って今日一日は安定すると伝えていた。
この時期、好天に恵まれるチャンスは余り無いので、用意してあった装備を担いで雪山に出かけることにした。
朝7時に家を出る時の外気温は-14℃を指していたが、雲ひとつ無く晴れ上がっていた。
岩井町から「青少年交流の家」までの県道は、昨日積もった雪もきれいに除雪されて走り易かった。
日影峠から御岳展望台、カブト山を越えて飛騨高山スキー場へ下るコースをたどる予定で登り始めたが、雪が軟らかくてスノーシューを付けていても膝までもぐる状態だった。
峠までの道は、シラカバ、ナラ、モミなどの変化に富んだ樹林帯で、深いラッセルの苦労を忘れさせるほど美しい。
時折風が吹くと、木の枝や地表から巻き上がる雪で視界が遮られる。
途中のビュースポットから見た穂高連峰は、稜線に雲が湧き、天気の悪化の兆しが見え始めた。
日影峠に着いた時は、西の方から灰色の雪雲が次々と流れてきて、前方の丸黒山は激しく降る雪で霞んでいた。
休憩もそこそこに、カラマツ林の中を御岳展望台を目指した。
このあたりでコースを外して歩くと、笹や小枝の上に積もった雪を踏み抜いて腰まで落ち込み、脱出するのにえらく苦労した。
いつもは真正面にどっしりと御岳が聳えているが、雲に隠れて見えないし、小雪も舞い始めたのでここでUターンすることにした。
膝まで沈むラッセルは、体力、根性ともにもう無理であることを知っただけでも、価値のあるトレッキングだったと、自らを慰める一日となってしまった。