笹ゆりも咲き終わったので、裏山の下草刈りをしようと登っていったら、山アジサイが咲いていた。
栽培種と違って色も淡くて地味で、大輪を誇ることもなく、日陰で控えめに咲いている。
こんな花は、一輪だけ切り取って、田舎家の玄関に飾れば似合いそうだ。
その近くには、白い草花と見まがうように、夏椿の花が散りばめられていた。
夏椿は、沙羅双樹という説もあるが、朝に咲いて夕べに散る儚い一日花である。
散り際の潔さと、世の無常をたとえる花として、桜とともによく語られる。
「・・・沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす・・・」は、平家物語の有名な一節である。
一心に咲きながら、人知れず一日でぽとりと落ちる花に、今の時代でも諸行無常を感じる人が多いようだ。
夕方には、バケツをひっくり返したような激しい雨が降った。
明日の朝は、一面に散りばめられた夏椿の花を見て、「ただ春の夜の夢のごとし」を実感することだろう。