雲の上には宇宙(そら)

 雪国越後にて、30年ぶりに天体写真に再チャレンジ!

ならぬことはならぬもの(撮影機材の能力)

2013年02月05日 | 天体写真よろず話
(おことわり) 記事タイトルの ” ならぬことはならぬもの ” は、
NHK大河ドラマ 『八重の桜』 に出てくる会津藩の子供たちの什(じゅう)の集まりの最後に唱和する
『 駄目なことは駄目だ 』 という教えの意味とはちがっています。


天体写真を撮り始めてしばらくたった頃、
天候以外にも地上で撮影する以上避けられない画像の劣化や、高額で優秀な機材であっても光学性能の限界があるのではと考えるようになりました。

1/31の前回記事  では、地上から天体を撮影するにあたって最大の障害物 大気 の話でしたが、
今回はその障害に立ち向かう人の使う機材の能力について。

まず最初は
2.光学機材の分解能力
 望遠鏡のカタログに出ている対物レンズの分解能は,普通「ドーズの限界」と言う経験則を使っています。
 口径(Dmm)に対して,115.8″/Dで計算される数字が,望遠鏡の分解能のカタログ値の正体です。
 これとは別のアプローチで,光学理論に基づき,人間の目が最も感度の高い500nmぐらいの波長の光の回折による像の乱れを計算し,そこから導き出された125.8″/Dと言う「回折理論値」による分解能の表示もあります。
 回折理論値よりもドーズの限界のほうが良い数字なので,ほとんどすべてのカタログが,ドーズの限界を採用しています。
 ほんとでしょうか?
 わたしの持っている主力機材は Vixen(ビクセン)R200SS反射鏡筒です。
 口径200mmですので、計算すると
・・・・ドーズの限界=115.8/200=約 0.58
・・・・・回析理論値=125.8/200=約 0.63
 先ほど、Vixenのホームページを見たところ
  分解能・極限等級 0.58秒・13.3等級

カタログ値は別として、前回記事から「本州での平均的なシーングは 2″~3″」だそうです。
これを逆算すると、
 口径60mmもあれば、シーングに相当する「回析理論値」は達成できる事になりますが・・・
実際には理論的性能まで発揮できる製品は無く、各種残存収差や製造上の精度の問題から劣化した分解能を、より大きな口径で補うしかありません。

ところで 2″~3″っていわれても、ピントこないですね。・・・(角度の1°の1/60の1/60が 1″なのはわかるけど)
31日、かに星雲のあと片手間に撮った木星です。


3.画像記録の分解能力
 画像の記録をデジタルカメラで行う場合、光学系が決まればその分解能力は画素のサイズに規定されることになります。
 わたしが5年前から使っているデジタル一眼カメラでは
■ Canon EOS Kiss Digital X
  CCD サイズ: 22.2 × 14.8 mm  CCD 画素数: 3888×2592 (約1010万画素)
   1画素 サイズ: 5.7 μm  
  R200SSでの1画素あたりの画角を計算すると⇒(これでいいのかな?)
1画素 画角: 1.47″ となり、分解能は2画素の間隔とすると 約 3″ となりました。

これは、つまり
  反射鏡筒R200SSの光学的分解能(理論値)は0.63″だが、シーイングによる劣化で平均2″~3″とダウンして、デジタルカメラEOS KissDXに記録される時点では画素サイズから、3″程度の分解能が最良となる。

4.実測結果
 Vixen R200SS に EOS Kiss DXの撮影結果
   (1).120Sec 1枚画像で2星が分離認識できたのはBestで3~4画素間隔(4.5″~6″間隔)
   (2).複数枚コンポジット画像(加算平均)では、S/N・極限等級は上がるものの分解能はやや下がる。


( 参考 )
 人間の目
 人間の肉眼のF値は瞳孔がもっとも開いたときで約2.1である。
 その(網膜上の)解像力は約 1μm である。これは人間の眼球にある視細胞の間隔によるものである。

 大気の擾乱
  地球大気は、屈折率が時間的・空間的に不規則に変動しており、これを擾乱(turbulence)と呼ぶ。
  屈折率が場所ごとに異なると、天体からの光の波面が乱されて星像がゆらぐ原因となる。
  大気の屈折率は温度に大きく依存するため、擾乱は主として大気中の温度分布が一様でないために生じる。
  太陽から与えられる熱量は地上の場所ごとに異なるので、大気中の1 mから1km といった大きなスケールの温度分布、すなわち屈折率分布を生じさせる、これが風の流れや対流によって次第に細かく砕かれていき、最終的には屈折率が一定の1~2 mmから数10 cmのスケールのかたまりに分かれる。
 多くのこのようなかたまりが時間的・空間的に不規則に動きまわって擾乱を引き起こす。
 これが天体から伝搬する光波面の変動を引き起こし、天体望遠鏡の角分解能を低下させる原因となる。
 天体観測の場合には、擾乱の少ない大気に対してこのかたまりのスケールは約10 cm、継続時間が10-3 ~1 秒というのが大雑把な見積もりである。

 エアリーデスク

エアリーディスク(Airy disc)は光学現象である。
光には波の性質があるので、円形開口を通過した光は回折して開口部から遠く離れた観察平面上に同心円状の明暗のパターンをつくる。
均一光源から出て円形開口を通過した光は観察面上に回折パターンを生じるが、この中心には『エアリーディスク』とよばれる明るい領域があり、その周りを『エアリーパターン』と呼ばれる複数の同心円環がとりまく。
ディスクと各円環は暗い同心円環に隔てられる。
いずれもジョージ・ビドル・エアリーにちなんで名づけられた。
このディスクの直径は光源が出す光の波長と円形開口の大きさによって異なる。
レンズを通過した光線の焦点像は厳密には点にならず、回折によって エアリーディスクの大きさの円盤になる。無収差レンズを使った場合でも、このレンズがつくる焦点像の分解能には限界があり、回折による限界により光学系の分解能はきまるといってよい。
2つの点光源の間隔を次第に狭めながら(2つの点光源とカメラがつくる角度は次第に小さくなる)カメラで撮影すると、2つの点光源によるエアリーディスクはある時点から重なりはじめ、やがて画像上では2つの回折像が互いに重なってぼやけ始め、はっきりと分離できなくなる第1の回折像の光源のエアリーパターンの中心(最輝部)が第2の回折像のエアリーパターンの第1暗環に重なった状態を 『最大分解』 という。
上で述べた2つの点光源の分離角の限界(レンズの分解能)は次の式で与えられる。

 sinθ =1.22 ×λ/d

 ここでθは十分小さいので、次の近似値を与えることができる。

 x/f =1.22 ×λ/d

ここで x はフィルム上の点光源像の間隔である。f のレンズとフィルムの距離は、レンズの焦点距離として計算する。

 x=1.22×λf/d =1.22λF *回折による限界値はF値に比例して悪くなる!

ここで f/d はレンズの F値である。

このλの値は任意だがここでは仮に可視光域の約450ナノメートルとしてみると、昼間一般撮影での絞りF16では、x は約0.01mmを与えられる。
デジタルカメラの一般撮影では受光体のピクセルをこれ(10μ)より小さくしても実際の解像力は向上しない。
ちなみにR200SSの場合 F = 4.0 であることから
  x =1.22λF=1.22 × 0.45μm × 4.0 = 2.2μ
となり、Kiss DX のピクセルサイズ 5.7μは回折による限界値より大きく、もっと小さいサイズでも有効である事がわかった。





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以前にネットで調べたもので、取材源は忘れてしまいました。
とても読み返す気力はないので、誤記・脱字があったらごめんなさい。
「天体アルバム2012」フォトチャンネルに登録しました。
(左サイドバーから入れます。)

雲上くもがみ

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