山本幸久の「床屋さんへちょっと」読んだ。この人の作品は何冊も読んでいて好きな作家だ。2007年から2008年にかけて小説すばるに掲載された作品。主人公は宍倉勲。家族は妻の睦子と一人娘の香。勲は父親が経営していたお菓子メーカーをひ引き継いで二代目社長を務めるが、昭和40年代のオイルショックで倒産。幸いにも財産は失ったが家族離散にはならなかった。倒産後、繊維会社に就職。成長した娘は零細会社を経営・・・。娘の離婚問題、親から引き継いだ会社の経営、倒産のエピソード、睦子との結構に至るまでのエピソードが短編ストーリー調で構成された作品。時代が交錯し、短編小説風に仕上がっているが、時系列で進行させ、長編作に仕上げた方が読みやすかったかも。小説すばるに掲載された時は一話完結だったんだろうね。
勲は昭和一桁世代だから、ウチの親父と同世代、娘の香は昭和40年頃の生まれのはずだから、僕と同世代。お菓子メーカーのTVヒーローのカードをつける売り上げアップ作戦。子供の頃、カルビーのプロ野球カード集めていたし、共感できる部分が結構あった。吉田拓郎のヒット曲「結婚しようよ」も絡んで昭和感、満載。テクノカットの話、ちょっと笑えて懐かしかった。たぁたぁたぁたったらた~のメロディーはイエローマジックオーケストラ!
タイトルの床屋さんは、勲が潰した会社の工場の近くにある床屋さんのエピソードから由来。
283ページの単行本。