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絵本の話を中心に、好きなもの、想うことなど。

角野栄子さん・続

2007-05-11 11:11:55 | 好きなもの・おでかけ

 せっかく角野栄子さんの講演を聴いたのですから、そのお話の中味も記しておこうと思います。

 講演会は、5月3日から5日まで行われていた「
上野の森 親子フェスタ」のHPで知って、
申し込んでみたのですが、当日会場に行ってみると、
大きな着ぐるみアッチも来ていたし、
壇上のテーブルには全6巻パペット付きの本が用意されているし、案内パンフレットをよく見ると、
ポプラ社協賛と書いてあるので‥あ、本の宣伝??と思ったのでした。

 ちょっとひきぎみの気持ちでしたが、本物の角野栄子さんが壇上に現われ、お話が始まると、
もやっと感よりも、その喋り方が、叔母に似ているほうが気になって(笑)、そしてしだいに、
お話に引き込まれていきました。

 「ちいさなどうわたち 全6巻」を刊行するにあたって、ぜひこのお話は入れてもらいたい、
という強い思いがあったことや、どうやってそのお話が誕生したかについて語られたのですが、
全集の中の物語をひとつも読んだことがないゆえ、「共有」することができず、すこし残念でした。



 1時間余りのお話の中で、最もおもしろかった部分は、角野さんが25歳の時にブラジルへ移民として渡り、
そこでブラジル語をどのように習得していったかというくだりでした。

 ブラジルで生きていくためには、働かなければならず、働くためには、言葉がわからなければならず。
必要に迫られ、同じアパートに住んでいた15歳の少年に頼みこんで、「先生」になってもらったそうです。     
なぜ、その少年を「先生」に選んだかといえば、それは、「子供だったらお金を払わなくていいでしょ?」と角野さん。
まるで、ついこの間のことのように笑いながら言いました。

    彼のおうちは、お父さんが大道芸人で、お母さんが歌手なの。
   だからその子もね、全身リズムの固まりみたいな子でね、始終何かを叩いているし、
   喋る時は体をゆすっているし。ブラジルの子だから、サッカーもすごく上手で、
   玉ねぎでもじゃがいもでも、なんでも蹴っちゃうのよ。それでね、絶対下に落とさないの。

 赤ちゃんがいろんなものを吸収し、覚えていく時と同じように、ブラジル語に対して「赤ちゃん」だった自分に、
その少年の教えてくれた言葉は、リズムとともに入ってきて。そうやって覚えたことは、いつまでもいつまでも
忘れないものだと、おっしゃっていました。
 5歳の時にお母さんを亡くした自分に、お父さんが語ってくれた様々なお話が、成長しても、いつまでも心に
残っているのと同じようなものだとも。

 
 そうそう、そのブラジルの少年のお母さんが、日本人と知り合いになったのだからと、日本のことを歌って、
レコードにしたいと言ったのだそうです。そして角野さんも、その方と一緒に、バンドのメンバーを集めたり、
八百屋さんの奥にある、マイク1本が立っているきりの録音スタジオに行き、録音に立ち会ったりしたのだそうです…。
 遠い遠い昔のブラジルの話なのに 『ブエナビスタソシアルクラブ』の映画のシーンが、いつの間にか、
私の頭の中ではだぶっていました。

 角野栄子さんが、お若い時に、ブラジルに住んで居たことは知っていたけれど、音楽とはちっとも結びついて
いなかったので、その意外性がなんとも楽しく、また、角野さんにとても親密な気持ちをいつしか感じていました。

 そのブラジル録音の曲には後日談があって。 
 長い長い間忘れていたのに、ある時、小室等さんと対談する機会があり、そこでもレコードの話をしたそうなのです。
どんな歌なの?歌ってみてよ、と言われても、ちっとも思い出せないからだめと答えていたのに、小室さんが「こんな感じ?」と
ギターを弾いてくれたら、なんとすらすらと歌詞が出てきて、1番だけなら、すべてが歌えたそうなんです。

    「それからね、毎日毎日、その歌を歌っているんです。
   貰ったレコードだって、とっくの昔にどこかへ行っちゃったし。
   毎日歌ってないと、忘れちゃうでしょ?」と、角野さん。

 その歌、どんな感じなんでしょう。ワンフレーズでいいから歌って欲しかったなあと、今も思っています。
  
 

 

コメント (6)
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