この映画は、実はかなり映画になりにくい作品だ。
藩の主命により、友人を撃たねばならない非情。
さらに、相手の妻は自分の妹。
打てば必ず返り討ちに来るに違いない。
もうほぼ、結末のわかった映画で、最後まで持たせねばならない。
その間、派手な戦いがあるでなし、
最後の打ち合いとて、友人だから、非道の、それも滅法剣の強い相手でもない。
妹に色恋はあるが、それとて、この時代の不倫。表ざたではない。
舞台は、山形庄内地方、まあ日本らしい風景といえばそうだが、
さりとて、特に美しいわけでもない。
ことほど左様に難しい映画をよくぞ作品にしたものだ。
地味な映画だけに、感動を呼ぶわけでもないが
江戸時代の、主命という生き方に、真面目に生きる人々の姿が、丁寧に描かれ
表情と姿で、その苦労をにじませる演技は、大したものだと思う。